2018/04/05

試験研究費を計上して節税

研究開発税制について

法人が試験研究費を支出した場合には、その試験研究費の支出額をもとに算出した一定の金額を、法人税の額から控除することができます。これは、企業の試験研究活動を促進し、科学技術の向上その他開発力の強化を援助するとういう政策的な見地から設けられている制度です。

研究開発税制は、「1. 試験研究費の総額に係る税額控除制度」、「2. 特別試験研究に係る税額控除制度」、「3. 中小企業技術基盤強化税制」及び「4. 試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度」の4 つの制度によって構成されています。

試験研究費の額とは?

この制度の対象となる試験研究費の額とは、製品の製造又は技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する原材料費、人件費及び経費のほか、他の者に試験研究を委託するために支払う費用などの額をいいます。
ただし、試験研究に充てるために他の者から支払を受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額が試験研究費の額となります。

1. 試験研究費の総額に係る税額控除制度

この制度は、青色申告法人のその事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、その試験研究費の額の一定割合の金額をその事業年度の法人税額から控除することを認めるものです。

(1)税額控除限度額
この制度による税額控除限度額は、その事業年度の損金の額に算入される試験研究費の額に、次の税額控除割合を乗じて計算した金額です。

(2)税額控除割合
税額控除割合は、10%です。
ただし、試験研究費割合が10%未満である場合は(試験研究費割合× 0.2)+ 8%

試験研究費割合 = その事業年度の損金の額に算入される試験研究費の額÷ その事業年度及びその事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度の平均売上金額

税額控除限度額がその事業年度の法人税額の 20%相当額を超える場合は、20%相当額を限度とします。

「3. 中小企業技術基盤強化税制」との重複適用は認められませんが、「4. 試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度」との重複適用は認められます。

2. 特別試験研究に係る税額控除制度

大学、公的研究機関等との共同試験研究等に係る試験研究費(特別試験研究費)について、「1. 試験研究費の総額に係る税額控除」に上乗せして特別控除が受けられます。

「3. 中小企業技術基盤強化税制」との重複適用は認められませんが、「4. 試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度」との重複適用は認められます。

(1)特別試験研究費の額等
この制度の対象となる特別試験研究費の額とは、試験研究費の額のうち、国の試験研究機関又は大学と共同して行う試験研究、国の試験研究機関又は大学に委託する試験研究、その用途に係る対象者が少数である医薬品に関する試験研究などに係る試験研究費の額をいいます。

(2)特別研究税額控除限度額
この制度による特別研究税額控除限度額は、その事業年度の損金の額に算入される特別試験研究費の額に特別研究税額控除割合(12% -試験研究費の総額に係る税額控除割合)を乗じて計算した金額です。

ただし、特別研究税額控除限度額が、その事業年度の法人税額の 20%相当額から試験研究費の総額に係る税額控除制度により控除された金額を控除した残額を超える場合は、その残額を限度とします。

3. 中小企業技術基盤強化税制

この制度は、中小企業者等である青色申告法人のその事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、「1. 試験研究費の総額に係る税額控除制度」又は「2. 特別試験研究に係る税額控除制度」との選択適用で、その試験研究費の額の一定割合の金額をその事業年度の法人税額から控除することを認めるものです。

「4. 試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度」との重複適用は認められます。

(1)中小企業者等税額控除限度額
この制度による中小企業者等税額控除限度額は、その事業年度の損金の額に算入される試験研究費の額に12% を乗じて計算した金額です。

ただし、税額控除限度額がその事業年度の法人税額の20%相当額を超える場合は、20%相当額を限度とします。

4. 試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度

この制度は、青色申告法人の平成20年4月1日から平成22年3月31日までの間に開始する各事業年度(注)において損金の額に算入される試験研究費の額がある場合で、次のいずれかに該当するときに、その試験研究費の一定割合の金額をその事業年度の法人税額から控除することを認めるものです。

試験研究費の額が、比較試験研究費の額※ 1 を超え、かつ、基準試験研究費の額※ 2 を超える場合

試験研究費の額が、その事業年度の平均売上金額※ 3 の10%相当額を超える場合

※ 1 比較試験研究費の額とは、その事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額を平均した額をいいます。

※ 2 基準試験研究費の額とは、その事業年度開始の日前2年以内に開始した各事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額のうち最も多い額をいいます。

※ 3 平均売上金額とは、その事業年度及びその事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度の売上金額(営業外の収益の額とされるべきものを除きます。)を平均した額をいいます。
(注)平成22年税制改正でこの制度は2年間延長されました。

税額控除限度額

この制度による税額控除限度額は、上記条件に該当する場合に、それぞれ計算した金額です。なお、いずれにも該当する場合はいずれか一方を選択適用します。

ただし、この制度による税額控除限度額がその事業年度の法人税額の10%相当額を超える場合には、その10%相当額を限度とします。

控除限度超過額の繰越

「4. 試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度」を除いて、控除限度超過額の繰越制度が設けられています。また、それらの平成21年、22年の税額控除限度額は法人税額の20%から30%へ引き上げられています。

<参考>
試験研究費に含まれる人件費の対象となる費用について人件費の計算においては、試験研究プロジェクトの担当業務に係る賃金・給与、諸手当、賞与、退職金、法定福利費(健康保険法、雇用保険法等による事業主負担額)、厚生福利費(医務、衛生、保険その他の従業員の厚生福利に係る費用)等が含まれます(但し、教育訓練費や従業員募集費等従業員を雇用するに当たって支出することとなる間接的な費用は含まれません)。

なお、法人の所得金額の計算上、損金の額に算入されることが前提となります。また、例えば役員が試験研究プロジェクトに従事するような場合では、その役員が、試験研究担当業務としての職務を有し、前述の条件(「専門的知識をもって当該試験研究の業務に専ら従事する者」)を満たすものである限り、その役員に対する報酬についても、適用対象となり得ると考えられます。

但し、その場合、当該役員の研究業務の実態や社内の他の研究者に対する人件費等から鑑みて、当該報酬が研究者の職務に対するものとして相応のものでなければならないと考えるべきです。(中小企業庁HP)