2018/03/09

不良債権を処理して節税

企業にとって債権回収は最重要項目のひとつですが、状況によっては債権回収が困難となることがあります。このような場合、債権回収の努力をするのは当然ですが、やむを得ず回収不能になった場合には貸倒処理をすることになります。

しかし貸倒の処理には恣意性が介入しやすく事実認定が難しいため、税務上は 貸倒損失を計上するための条件を下記のように区分し定めています。

(1)法律的に金銭債権が消滅した場合
(2)事実上の貸倒
(3)形式上の貸倒

法律上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-1)

債権の全部又は一部が、次に掲げるような事実に基づいて切り捨てられる場合には、貸倒損失として当期の費用に計上できます。

①会社更生法・民事再生法・会社法などの認可の決定により、切り捨てられることとなった部分の金額

②債権者集会の協議の決定や公正な第三者(行政機関・金融機関等)の斡旋によって合理的な基準によるものであれば、その切り捨てられることとなった部分の金額

③債務者の債務超過の状態が「相当期間」継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合にその債務者に対し書面により債務免除の通知をした金額

「相当期間」について解説書などには3 ~ 5 年程度とありますが、債務者の経営状態をみて回収不能と判断するための見極めの期間であり、個別の事例ごとに異なる事情を考慮しなければなりません。

事実上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-2)

法律上は存在しているが、債権の全部が債務者の資産状況、支払能力等をみて経済的に無価値となり回収不能となった場合には、貸倒損失として当期の費用に計上できます。

① 一部でも回収できる見込みがあれば、貸倒損失を計上することはできません。

② 担保物がある場合、担保物を処分したあとの残りの金額を貸倒れとすることになります。

形式上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-3)

売掛債権に限り、次に掲げるような事実が発生し、債務者との取引を停止して 1 年以上経過し場合等には、貸倒損失として当期の費用に計上できます。

① 継続的に取引を行っていた債務者の資産状況、支払能力等が悪化したため、その後の取引を停止した場合において、その停止した日と最後の弁済の時のこれらのうち最も遅い時から 1 年以上経過した場合(その売掛債権について担保物がある場合は除かれます)。

② 同一地域の債務者について有する売掛債権の総額が、その取立てのために旅費その他費用に満たない場合において、その債務者に対して支払を督促したにもかかわらず弁済がない場合

この場合、備忘価額(1 円以上)を残して、残額(売掛債権金額 - 備忘価額)を貸倒損失として損金算入することになります。

<アドバイス>
①相手先が資力を喪失していることがわかる書類(決算報告書・確定申告書など)や、状況証拠、取引状況やそれに関する資料等の整理をしておきましょう。

②完全に取れない債権である場合は、相手先に対し、「債権放棄通知書」を作成し、内容証明か配達証明で郵送しておくことも有効です。

なお、「法律上の貸倒れ」は法人の経理の方法を問わず損金の額に算入されますが、「事実上の貸倒れ」と「形式上の貸倒れ」については、法人が貸倒損失として損金経理をしたときに限り損金の額に算入されることとなっています。

余談ですが、消費税法では、課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権につき、一定の事実が生じたため、その全部又は一部の領収をすることができなくなったときは、その領収ができないこととなった日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額からその領収をすることができなくなった対価の額に係る消費税額の合計額を控除することとしています。
消費税の控除も忘れないようにしましょう。

もちろん消費税の控除対象となるのは、売掛金など課税売上に係る債権のみで、課税対象外取引である貸付金の貸倒などについては対象となりません。