2018/01/10

節税の基本4項目

節税の基本4項目

そろそろ、「節税の基本スタンス」である「基本4項目」を解説いたします。

節税の基本とは、

(1)経費として計上できるものをすべてきっちり計上する。
(2)有利な選択・届出をきっちり⾏う
(青色届け等の基本的な税務手続きを全て⾏っている)。
(3)所得分散をきっちり⾏う(社長の給料は適正額を取っている)。
(4)政策で認められている税制優遇制度をきっちり活用する。

まずは、これらがしっかりできていることです。事項で順に解説していきます。

経費として計上できるものをすべてきっちり計上する。

本来は経費になるのに、経費に⼊れていないものはありませんか?
たとえば、読書好きな社長さんなら、書籍代。書籍代でも本業に関連するものはもちろん、⾃⼰啓発本など「売上に貢献するための書籍」であればきっちり経費になります。

取引先や従業員との飲⾷代もそうです。全部、自分のおこづかい(ポケットマネー)から出している、なんてしてないですか? 得意先や従業員とちょっと喫茶店で打合せ…。こんなのも立派な経費です!

社長が払った(立て替えた)経費は、領収書などの整理・保管がメンドクサイという理由で、⼀切、経費計上していないなんて方もいらっしゃいました。

また、中には経理担当者に精算をお願いするのを躊躇される⽅もいます。スナックやバーの領収書を⾒られたくない、社長が無駄使いをしていると思われたくない…などの理由で。

お気持ちは分かりますが、それが売上に貢献する経費であることをきちんと経理担当者に説明すれば分かってくれるはずです。はっきり⾔って「きちんと説明するのがメンドクサイ」というスタンスの社長さんが多く、もったいないことになっているケースが多いのです。

また、支払いが決算日をまたぐような経費についても⼗分気をつけてください。お金を払う=経費というわけではありません。

決算日時点では支払がまだでも、既に納品があった、もしくはサービスを受けたのであれば、経費として計上できます(買掛金や未払金のことです)。
それに見合った売上がたっていない、また納品があってもまだ事業に使っていないのなら「在庫」として計上しないといけないので当期の経費にはなりませんが、消費税は在庫になったものでも控除できます(節税になります)。

また、資産計上したものの中に、経費で落とせるものが含まれていませんか?例えば、クルマの場合は重量税や納車費⽤などの付随費⽤は、全額経費に落とせます。

ひとも⾃社の経理をもう⼀度⾒直して下さい。節税の宝庫となっている可能性もありますね!

有利な選択・届出をきっちり⾏う

税務署などのお役所に「提出しておくだけで節税になる」という書類(届出・申請書)があります。

例えば「青色申告承認申請届」「青色専従者給与の届け」、状況に応じて「減価償却⽅法選定の届け」や「簡易課税選択届け」などがあります。

また地方⾃治体には創業促進目的のものなど、時限的な減税制度を設けているところもあります。

⼀般的に、税理士が関与している場合でしたら、これらの書類の提出失念ということは考えづらいですが、事前に期限までに⼿続きしておく必要があるため、決算(申告)前になってはじめて税理士に顧問をお願いするということでは間に合わない、というケースも多いのです。

所得分散をきっちり行う(社長の給料は適正額を取っている)

⽇本の税制は累進課税制度を採用しており、⼀つの母体(法⼈または個⼈)に利益が集まるほど、段階的に税率が高くなる、という特性があります。

特に個人の税率は、所得税と住民税を合わせて最大で55%にもなります。法人のそれは34% ※1ほどです。

たとえば、会社に利益が1千万円出たとして、社長が会社から給料を取っていない場合(そんなことは考えにくいですが、極端な例として)は、1 千万円に対して 340 万円の税額(税率34%)ですが、給料を 500 万円取った場合は、法人税 170 万円・所得税 30 万円(所得税・住民税合わせた税率 20%。さらに個⼈には様々な「所得控除」というのがあり、単純に給料 500万に税率をかけた税額ではありません)ほどで、法人個人合わせても 200 万円ほどの納税で済みます。

これだけでも 140 万円の節税です!

この例はかなり極端でしたが、実際にはもっと社長いが給料を取って、法人税を少なくする方が良いですね。

「ウチは個人事業だから、給料としてはとれないよ(涙)」

諦めないでください。もし奥様などの親族と⼀緒に働いておられたら専従者給与が出せます。「適正」な金額を出し、所得分散して節税しましょう!

中⼩零細の同族会社では、経営者イコール株主というケースが大半です。つまり自分の給料は自分で決められる、ということですが、給料(役員報酬)の決め方がいい加減なところも見受けられます。

このように、利益(収入)の母体を分散させ、それぞれの母体の利益を少なく(所得分散)し、税率を低く抑えることが、節税の基本中の基本なのです。

※1 法人税率は通常 23.9% ですが中⼩企業に対しては所得 800 万円以下の部分については現在 15% に軽減されており、さらに今後減税措置が講じられるかもしれません。これ以降あるいは他章でも実行税率 34%として解説する場合が多いかとおもいますが、この点につきましては十分にご理解とご了承お願いいたします。

政策で認められている優遇税制をきっちり活⽤する

政策で勧めてくれている節税商品というのがあります。
そんなに数は多くないですが、これらを利用しない手はありません。

例えば、有名なものでは、中小企業庁公認の金融商品『小規模企業共済』というものがあります。
節税商品としてはとても有名なモノなのですが、税理士に関与をお願いしていない社⻑(個人事業主)は意外とご存じないのです!

また、中小企業及び個人事業主に限定された優遇税制も数多く存在しています。例えば昨今の税制改正では、中小企業限定で、法人税率の引き下げや、交際費の限度額の上限アップ及び欠損金の繰戻還付制度の復活などがありました。

とは言え、まだまだ中小企業の実情を分かってくれていない税制も数多く残っていますが…。  これらのように、世の中の実情に合わせて(?)税制は毎年目まぐるしく改正されています。
税理士に顧問を依頼していないような会社は、とてもこれらの改正について行けず、耳にしたころにはその税制が廃止済み!なんて事態もあり得ます。

自社に有利な優遇税制は、積極的に利⽤していきましょう!

以上の 4 つはどれも基本中の基本といえる節税に対するスタンスですが、やはりどの方法も事前に準備と計画が必要なものがほとんどです。

これらの「節税の基本スタンス」を常に念頭に置いた経営計画・資金計画が出来たならば、事業も益々軌道に乗ることでしょう!

社長自身で節税意識を!

社長の意識改革こそがすべての出発点!

よく、会社を設立したばかりの社長は、事業を軌道に乗せるのに精⼀杯で、最初は経理や税金対策のことなんて念頭にありません。

そして、バタバタのうちに第 1 期目の申告期限が近づき、慌てて税理士を探して…、というパターンも見受けられます。

それならまだましなのですが、はなっから申告期限のことなど念頭にはなく、いざ銀⾏融資を受けたいときに、融資担当者に申告書を提⽰しろと⾔われ、慌てて税理士に申告の依頼をする(もちろん申告期限後に!)、というケースもあります…。

税務署に無申告を指摘されて、という場合や、顧問料をケチって税理士に依頼しないなんて場合も…。こんな状態では「計画的に節税する」以前の問題です。顧問料をケチった分以上に、税務署にごっそり税金を持っていかれてしまうのがオチです。

「ウチは全て会計事務所に任しているから、そんな⼼配はない。」
そう思われている⽅も多いでしょう。でも、それでもまだ万全ではありません。

節税対策は、経営者自身でも意識を強く持ってほしいのです。税理士に丸投げでは不⼗分です。自身でも意識を強く持っていただければ効果 100 倍となるのです!

節税対策は今後の事業展開やビジョンによって、施すべき手段が全く変わってきます。税理士は、社長のお手伝いはできても、社長の頭の中まではのぞけません。

社長が「節税脳」を働かせ、その上で税理士に相談をする⽅がよほど効果的なのです!
X社長:「来期、利益が結構出そうやねん。センセイ、なんかいい案ありまへんか?」
Y社長:「来期はカクカクシカジカの営業戦略で展開したいんだけど、その結果、これぐら
い利益が出そうな⾒込みなんだよ。その際に設備投資と⼈材育成が必要なんだが、
これらを活かした良い節税戦略はないかな?」

どちらの相談事例が税理士の良い回答を期待できます?答えは言うまでもなく、Y社長さんですよね!
「なんかいい案」と⾔われましても…、よほど付き合いが長く経営にまで入り込んでいるならばともかく、「節税対策マニュアルを買って下さい」と⾔うしかないですね…(笑)