2026/09/23

企業グループ間取引の書類保存の特例

制度の概要

令和8年度税制改正において「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」が創設されました。
 
法人税では従来、取引に関して受領し又は作成した契約書や請求書、領収書などの書類等を保存することが義務付けられてきました。
本特例は企業グループ間において一定の取引を行った場合に、この保存することとされている書類等に、その取引の対価の算定に必要な事項の記載が無い場合に、その事項を明らかにした書類等の作成保存を追加で求めるものです。

制度が導入された背景には、企業グループ間でのシェアードコスト取引、ロイヤルティ取引、経営指導料の支払などの取引は、第三者間取引とは違い恣意的に取引金額が調整されやすいものの、調査時に取引内容の確認や算定の妥当性を確認できず、十分な資料提供がなされない場合があったようです。

制度の具体的内容

次に本特例の対象となる法人や取引などの具体的内容をお伝えします。

「対象法人」
公共法人を除く全ての内国法人が対象で、取引の対価を支払い販売管理費等として費用計上を行う側の法人が適用されます。青色申告や白色申告の適用の要件はありません。また企業規模などの要件も無いため中小企業なども対象となります。

「関連者」
対象法人と、企業グループ間取引を行う相手方となる法人を関連者といいます。関連者は親子会社や兄弟会社などで、いずれか一方が50%超の株式を保有する関係がある法人と、役員の派遣、事業資金や取引の大部分の依存などによる実質的な支配関係がある法人が該当します。また、関連者には内国法人だけではなく外国法人も含まれます。

「特定取引」
対象となる取引を「特定取引」といい、販売費、一般管理費、その他費用の基因となるものに限るとされており、売上原価の起因となるものは除かれます。具体的には以下の取引となります。

・工業所有権等の譲渡、貸付け
例えば、特許権、商標権、プログラム、著作権、ノウハウの譲渡や貸し付け、使用料の支払など

・一定の役務提供
例えば、関連者の経営資源による研究開発、広告宣伝による成果の提供を受けること、関連者が所有する専用資産(システムなど)の使用させることや維持管理の役務提供、経営の管理又は指導、情報提供、技術指導、マーケティング支援、会計支援など。
※これらの取引は第三者を中継した迂回取引の場合でも対象となります。

「特定事項記載書類(作成保存すべき書類)」
本特例の対象となる取引を行った場合に、契約書、請求書、領収書などの取引関連書類に、取引の明細や対価の額の明細及び計算の方法の記載等が無い場合に、その記載が無い事項(特定事項)を明らかにする書類(特定事項記載書類)を追加で、取得又は作成して保存する必要があります。

「適用開始時期と保存期間」
適用の開始は令和8年4月1日以後開始事業年度における特定取引が対象となり、特定事項記載書類はその事業年度の申告期限までに取得、作成のうえ、申告期限から7年間保存が必要です。

保存等が無い場合の影響

次は特定事項記載書類の保存等が無い場合の影響についてお伝えします。

「損金算入との関係」
特定事項記載書類の保存等は、その基となった対象取引に係る費用の損金算入の要件とされるものではありません。そのため、保存等が行われていなかった場合であっても、保存等がなかったことのみをもって費用が否認されることはありませんが、取引実態や対価の額の算定根拠などの立証が出来ない場合は、損金性が無いと判断される可能性があることを考えると、その判断要素の一つとして書類の保存等の対応は重要と思われます。

「青色申告の承認の取消しについて」
青色申告制度については、帳簿書類の備付け、記録又は保存が法令で定めるところに従っていない場合に、その承認を取り消すことができるとされています。本特例はこの法令の定めるところに含まれるものの、国税庁の指針において、その保存等の有無のみをもって取消を行うことは適切ではないとの見解を示しており、実地調査等により、その違反の程度やその他の事情を踏まえて判断を行うとされています。

「欠損金の繰越控除との関係」
特定事項記載書類の保存等の状況は、欠損金の繰越控除の適用に係る帳簿書類の保存要件にも関係があるため、保存等が十分でない場合に、繰越控除の適用が受けられない可能性があるので注意が必要です。

「推計課税について」
本特例は、青色申告法人だけではなく、白色申告法人に対しても適用がされます。白色申告法人については青色申告の承認の取消しの問題はありませんが、保存等の状況により特定取引の実態を明らかにすることが出来ないことその他の事情により、法人税の課税標準等を実額で算定することが困難である場合は、推計課税が適用される可能性があります。(青色申告で申告を行った法人であっても保存等の状況によっては承認の取消とあわせて推計課税が行われる可能性があります。)

記.東京事務所1課