2025/03/05

相続時精算課税制度について

相続時精算課税制度とは

受贈者の選択により、贈与時に贈与財産に対する贈与税を支払い、その後の相続時にその「贈与財産」と「相続財産」とを合計した価額を基に計算した「相続税額」から、すでに支払った「贈与税を控除」することにより贈与税と相続税を通じた納税ができる制度です。

一般的な適用対象者

贈与者・・・贈与をした年の1月1日で「60歳以上」の「父母、祖父母」
受贈者・・・贈与を受けた年の1月1日で「18歳以上」の「推定相続人」及び「孫である直系卑属」

※適用対象者の特例としては、住宅取得等資金の贈与の場合や特例対象受贈非上場株式等の場合などもありますが、判りにくくなるので説明は省略します。
以下についても同様に特例のあるものが存在しますが、それらについても説明は省略します。

適用手続き

この制度を選択する「受贈者」は、「その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年の2月1日~確定申告期限まで」の間に贈与を受けた者の所轄税務署長に対して、「相続時精算課税制度選択届出書」を贈与を受けた者ごとに「贈与税の申告書に添付」して行います。この時「受贈者の戸籍謄本等」も添付します。

この選択は、受贈者である者各々が、贈与者である父、母、祖父、祖母毎に選択できます。例えば、父と母から貰った分は「暦年課税」、祖父から貰った分は「相続時精算課税制度」を適用するというようなことが可能です。

相続時精算課税制度の取扱い

・最初の贈与の際の届出により、「相続時までこの制度を継続して適用」します。
・届出書を提出した年分以降は「全て相続時精算課税制度が適用」され、暦年贈与の適用はありません。
・「令和6年1月1日以後」は基礎控除として「110万円を控除できる」ことになり、この基礎控除については相続時に「相続財産に加えられない」という新たなメリットができました。
・宥恕規定はないので、届出書を期限内に提出し忘れたら当該制度の適用はありません。

適用対象財産等

一般の場合は贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はありません。なお、推定相続人でない「孫」が相続時精算課税制度を適用した財産に対しては、その後贈与者(祖父母)に相続が発生した場合は「相続税の2割加算」の対象となります。

税額の計算

・贈与税額の計算
(「贈与者ごとの課税価格」-「110万円」(令6.1.1以後)-(「2,500万円」-「前年以前に控除した金額」))×20%
・相続税額の計算
「相続時までの贈与財産(基礎控除を除いた「贈与時の時価」)」と「相続財産」とを合算して通常の課税方式により計算した相続税額から、すでに支払った「贈与時の贈与税」相当額を控除して計算します。なお、土地・建物が令和6年1月1日以後に一定の災害で相当の被害を受けた場合には被災相当額を控除します。

令和6年以後の暦年課税贈与

・贈与税額の計算
(「1/1~12/31の間に取得した財産」-110万円)×税率
・相続税額の計算
その贈与者から「相続又は遺贈により財産を取得したとき」は、その「相続開始前7年以内(R12.12.31までは経過措置があります)」に贈与を受けた財産の価額(相続開始前4年~7年以内の贈与財産については、その合計額から「100万円を控除」します)を相続税の課税価格に加算し、その加算に係る贈与を受けた財産に課された贈与税額をその者の相続税額から控除します。

令和5年の税制改正により、相続開始前7年分の贈与財産が相続税に加算されることを知っている方は非常に多いですが、勘違いしやすいケースとしては、前述した通り加算の前提は「相続又は遺贈により財産を取得したとき」です。つまり、「相続又は遺贈」により「財産を取得しない孫」などへの暦年贈与は加算されませんので、引続き有効な相続対策です。

まとめ

相続時精算課税制度は平成15年の税制改正により創設された制度ですが、スタート当時に比べるとだいぶ使い勝手が良くなったように思います。相続対策をお考えの方は、状況によって暦年課税との使い分けを検討されるのがいいでしょう。

記.名古屋事務所1課