2025/01/29

海外居住している親族を扶養親族する

海外居住を扶養親族にする要件

税務上の国外居住親族とは、「非居住者」である「親族」のことを言います。
非居住者とは、国外に住所を有し、かつ1年以上日本に居所を有さない個人をさします。

2022年までの要件は、日本国内に居住していても、海外居住していても要件は一緒でした。
・配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
・納税者と生計を一にしていること。
・年間の合計所得金額が48万円以下であること。
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
・その年の年末時点で16歳以上
が要件とされていました。

2023年より、上記要件が厳格化されました。
・海外居住している親や子への送金は、その年の12月31日時点で30歳以上70歳未満は扶養親族と出来ない。
※ただし、30歳以上70歳未満であっても下記の条件のいずれかに該当すれば要件は満たします。

①留学生
②障害者
③その年において38万円以上生活費や教育費の送金を受けている者

厳格化された理由の1つに、扶養控除の条件の一つに年間の合計所得金額が48万円以下という要件があります。
生活水準や貨幣価値は各国で変わりますが、日本では年間所得48万円だと、ほぼ自活出来ない状況です。
しかし海外の国によっては平均年収が48万円前後というところもあります。
48万円以下の所得であっても、現地では生活出来るというのが背景のひとつのようです。

扶養控除の要件を満たすためには

要件が変更となり先に記載した①から③に該当する方は何を用意すれば扶養要件を満たすのか見ていきます。

①留学生 
親族関係書類、送金関係書類、留学ビザ等の書類が必要
②障害者 
親族関係書類、送金関係書類が必要 
③その年において38万円以上生活費や教育費の送金を受けている者
親族関係書類、送金関係書類が必要

送金関係書類は年間38万円以上送金したことが分かるもの現金手渡しは要件を満たさない為に扶養親族とは出来ません。
複数人の親族がいて代表者1人に送った場合は、扶養親族が例えば3人いても1人分しか適用できません。

上記以外で該当する方
・16歳以上30歳未満または70歳以上親族関係書類、送金関係書類が必要となります。

次に、すべての要件で必要な親族関係書類と送金関係書類とは何か?ということです。

「親族関係書類」とは、国外居住者が、国内居住者の親族であることを証明するものです。

① 戸籍の附票の写し日本国又は地方公共団体が発行した書類及び国外居住親族の旅券(パスポート)の写し
② 外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)
例 戸籍謄本・出生証明書・婚姻証明書
外国語の場合は日本語への翻訳したものも提出が必要。
「送金関係書類」とは、国内居住者がその年において国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払を必要の都度、各人に行ったことを明らかにするものをいいます。
① 金融機関の書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引により居住者から国外居住親族に支払をしたことを明らかにする書類
② いわゆるクレジットカード発行会社の書類又はその写しで、国外居住親族がそのクレジットカード発行会社が交付したカードを提示等してその国外居住親族が商品等を購入したこと等により、その商品等の購入等の代金に相当する額の金銭をその居住者から受領し、又は受領することとなることを明らかにする書類
③ 電子決済手段等取引業者(電子決済手段を発行する一定の銀行等又は資金移動業者を含みます。)の書類又はその写しで、その電子決済手段等取引業者が行う電子決済手段の移転により居住者から国外居住親族に支払をしたことを明らかにする書類

上記書類を準備して、年末調整時に会社へ提出または提示することになります。
グローバル化に伴い、海外や外国人に関する税務には慎重な判断をしていかなくてはいけないので、注意が必要になってくるものと思われます。

記.大阪事務所3課