2024/11/14

合同会社について

合同会社とは

会社法により設立できる会社は株式会社と、持分会社といわれる合同会社、合資会社、合名会社の4種類となっています。持分会社は、会社法で新たに設けられた名称です。

合同会社の特徴

合同会社の最大の特徴は、原則として総社員の同意で定款の変更その他の会社の方針が決定され、社員自らが会社の業務の執行に当たるということです。社員の権利内容も、定款によりどのように定めることもできます。

株式会社と合同会社の違い

(1)出資者の責任
株式会社・・・株主は有限責任
合同会社・・・社員は有限責任

(2)機関の設置
株式会社・・・株主総会、取締役、取締役会、監査役、監査役会、会計監査人、会計参与、各委員会、執行役、監査等委員会があります。会社法では、ある程度裁量をもって自由に機関設計をすることが認められており、これらすべての機関を設置する必要はありません。 
合同会社・・・取締役や監査役といった役職はなく、機関としては、社員総会、代表社員、業務執行社員となります。

合同会社のメリット

(1)設立費用が割安
合同会社の設立は、法務局で登記を行う必要があります。設立登記にかかる登録免許税が株式会社の場合最低15万円からなのに対し、合同会社は6万円と安価です。
また、株式会社は公証役場で定款の認証を受ける必要がある一方、合同会社は定款の認証が不要です。

(2)経営の自由度
株式会社の場合、会社の方針や重要事項を決定するには、会社法で定められた株主総会を開く必要がありますが、合同会社は出資者がそのまま経営者となるため、意思決定が迅速に行え経営の自由度が高くなります。また、定款により柔軟な運営が可能なため、経営戦略の変更や新規事業への対応がスムーズに行えます。

(3)決算公告の義務がない
決算公告とは、株主や債権者などに向けて会社の決算状況を公開することを指しますが、合同会社には決算公告の義務が無く、費用や手間がかかりません。

(4)役員任期の更新が不要
株式会社の場合、役員の任期は通常2年であり、満了時には役員変更の登記を申請しなければなりません。(ただし非公開の株式会社の場合は最長10年まで延長できます) もし忘れていた場合には罰金を科される恐れもあります。しかし合同会社であれば、役員の任期がないため、この手続きが不要で、コストを抑えられるだけでなく、法務局への登記申請などの手続きの手間も省けます。

合同会社のデメリット

(1)信用力の低さ
合同会社は株式会社に比べて全体の数や知名度に劣るため、場合によっては取引先や金融機関からの信用度が低くなるケースもあります。これにより、契約締結や融資の取得が難しくなることがあります。ただし、近年では合同会社の設立が増えていることから、以前と比較すると信用力を得られる場合も見られています。

(2)資金調達が難しい
株式会社と比較すると、上記の融資が難しくなることに加え、合同会社は株式を発行できないため、資金調達が行いにくい場合があります。

(3)意見の対立により意思決定が混乱する
株式会社では、出資した株数に応じて議案に対する意思表示を行えるという仕組みになっています。 もし役員間で経営方針に関する意見が割れたとしても、最終的には保有している株数の多い人の意見が通ります。しかし合同会社では、社員1人が1票の議決権を持つという仕組みになります。社員の意見が対立すると結論が出ず、経営が混乱してしまう恐れがあります。

(4)株式市場へ上場できない
上場とは、自社の株式を証券取引所で自由に売買できるようにすることを指します。 会社が上場するためには、数年かけて経営体制や業務フローなどを整え、非常に厳しい基準をクリアしなければなりませんが、社会的な信用度は大幅に高まります。しかし合同会社の場合は、そもそも株式の発行ができない組織であるため、このような株式市場への上場はできません。  

合同会社の設立の流れ

(1)定款の作成
会社の基本的な規則である定款を作成します。定款は社員になろうとする人全員で作成し、署名または記名押印をしなければなりません。紙で作成することもできますが、電磁的記録で作成することもできます。合同会社については公証人の認証を受ける必要はありません。定款には下記の3種類を記載します。

①絶対的記載事項
定款には、次に掲げる事項を記載しなければなりません
(イ)目的
(ロ)商号
(ハ)本店所在地
(二)社員の氏名または名称および住所
(ホ)社員が有限責任か無限責任か(合同会社の場合は全員が有限責任)
(へ)社員の出資の目的およびその価額または評価の標準

②相対的記載事項
相対的記載事項とは、会社法の規定により定款に定めがなければその効力を生じない事項をいいます。
(イ)持分の譲渡の要件
(ロ)業務を執行する社員(業務執行社員)の指名又は選任方法
(ハ)社員又は業務執行社員が2人以上ある場合における業務の決定方法
(二)合同会社を代表する社員(代表社員)の指名又は互選
(ホ)存続期間又は解散の事由

③任意的記載事項
任意的記載事項とは、定款の記載事項のうち、絶対的記載事項及び相対的記載事項以外の事項で、会社法の規定に違反しないものをいいます。
(イ)業務執行社員の員数
(ロ)業務執行社員の報酬
(ハ)事業年度
(二)その他

(2)出資金の払込み
合同会社を設立する際には、定款に定めた出資金を払い込む必要があります。出資金の払い込みの手続きの流れは、以下のとおりです。
 
①社員になろうとする者の個人名義の口座への入金
出資金を社員になろうとする者の個人名義の口座に入金します。社員が複数人いる場合は、代表者1名の口座へ入金することもできますし、各個人名義の口座に入金することもできます。

②払込証明書の作成
次に払い込みのされた口座の通帳のコピーをとります。コピーを取る箇所は、通帳の表紙、表紙裏、出資金の入金記録のあるページとなります。これらのコピーは別途作成する払込証明書と綴じ込みます。払込証明書は、出資金が全額払い込まれたことや払込金額などを代表社員が証明する書類です。

(3)設立登記申請
以上の手続きが完了したら、登記申請書やその他の必要書類とまとめて法務局へ提出します。

(4)登記完了後の手続き
登記が完了した後は、会社印の作成や銀行口座の開設、各種許認可の取得などを行います。他には、税務署への法人設立届出書提出などが挙げられます。一般的に会社印は会社名を含む印鑑で、契約書や銀行取引に使用されます。金融機関の口座開設手続きには履歴事項全部証明書が必要な場合がありますので、法務局で数通取得しておきます。

その他気を付ける事

(1)合同会社の社員が亡くなった場合
合同会社の社員が亡くなった場合、例えば株式会社の場合は相続人が株主の地位を承継しますが、合同会社の社員の場合は定款の確認が必要です。

①定款に定めがある場合
定款に「死亡した社員の相続人がその社員の持分を承継する」旨の定めがある場合には、相続人にその地位が承継されます。

②定款に定めがない場合
合同会社の社員は死亡によって退社となり、その地位は、原則として、相続人へ承継されません。例えば、1人合同会社を設立した後、社員が死亡した場合、その出資持分を相続人が相続し、合同会社を承継して、事業継続していくことを想定していると思います。ところが、このような社員が1人となった合同会社において、定款の記載の仕方次第では、社員が死亡した時点で合同会社は強制的に解散させられることになり、事業継続ができないだけでなく、合同会社が所有している財産は原則として換価され、債権者に返済した後、残余財産が相続人に払い戻されることになります。

(2)合同会社の役員について
法人税法上、「使用人兼務役員」という規定があります。この規定は、役員のうち、部長、課長など使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事している者のことです。たとえば、取締役部長、取締役支店長といった肩書の人が該当します。なお、取締役などが単に「営業担当」「総務担当」などと担当部門名を付されているだけでは職制上の地位を有しているものとは認められません。使用人兼務役員の場合は、使用人に相当する部分については使用人の支給基準に合わせた賞与を支払っても損金に算入することができますが、次のような役員は使用人兼務役員には該当しません。
①社長、副社長、代表取締役、専務、常務、監査役
②合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行社員
③同族会社の役員でみなし役員を判定する際の持株基準を全て満たす者
合同会社の業務執行社員は使用人兼務役員になれないので、従業員と同じように賞与を支給したとしても、役員賞与とみなされ事前の届出がない場合は、法人税の計算上経費として認められなくなります。

以上、合同会社についてお話させて頂きました。

記.大阪事務所1課