2024/09/09

新紙幣の発行に伴うシステム等の改修費用の取扱い

改修費用の取扱い

2024年7月3日から一万円札、五千円札、千円札について新しい紙幣が発行されました。

これに伴い既存のレジシステムや券売機、自動販売機などについて、新しい紙幣に対応するために、改修を迫られる事業者も多いかと思います。

それではこのシステム等の改修費用については税務上はどのように取り扱われるでしょうか?

システム等の改修費用については、その改修の内容により「修繕費」又は「資本的支出」として取り扱われることになり、「修繕費」であれば一時に損金算入することができ、「資本的支出」に該当する場合は、一時に損金算入することができず、固定資産として減価償却による費用処理が必要となってきます。

修繕費と資本的支出とは?

「修繕費」と「資本的支出」については以下の支出が該当することになります。

修繕費

修繕費は保有する固定資産の修理、改良等のために支出するもので、その固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産の現状回復をするための費用となります。

国税庁の通達では以下のものを例示として上げています。

・建物の移えい又は解体移築をした場合におけるその移えい又は移築に要した費用の額。(一定の場合を除く)
・機械装置の移設に要した費用の額(一定の場合を除く)
・地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用の額。(一定の場合を除く)
・建物、機械装置等が地盤沈下により海水等の浸害を受けることとなったために行う床上げ、地上げ又は移設に要した費用の額。(一定の場合を除く)
・現に使用している土地の水はけを良くする等のために行う砂利、砕石等の敷設に要した費用の額及び砂利道又は砂利路面に砂利、砕石等を補充するために要した費用の額

資本的支出

資本的支出とは保有する固定資産の修理、改良等のために支出するもので、その固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められるものを言います。
 
国税庁の通達では以下のものを例示として上げています。
・建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額
・用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額
・機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した費用の額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額
(注) 建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる。

新紙幣の発行に伴うシステム等の改修費用について

それでは、今回の新紙幣発行に伴うシステム等の改修費用についてはどうでしょうか?

その改修費用がシステム等の新たな機能の追加、機能の向上に該当する場合は「資本的支出」に該当し、新紙幣の発行に伴い既存システム等の効用を維持管理するための費用である場合には「修繕費」に該
当することになります。(両方含まれる場合はそれぞれ対応する金額に分ける必要があります。)

つまり、旧紙幣で利用されていた機能を、そのまま新紙幣でも利用できるようにするような改修であれば通常の維持管理として「修繕費」に該当し、一時に損金算入することができます。また、その改修のついでに、新機能の追加を伴うバージョンアップなどを行った場合については、「資本的支出」に該当する可能性があるので対応する部分の資産計上の検討が必要になるかと思います。

国税庁ではこれまで、こういったシステム等の改修費用について「消費税の税率改定」「消費税の軽減税率導入」「インボイス制度の実施」などの際に質疑応答を公表してきました。今回の新紙幣の発行に伴うシステム等の改修費用についても同様の考え方をするため参考として頂ければと思います。

また、「修繕費」と「資本的支出」の区分の判断は難しいため、実際にシステム等の改修費用を支出された場合には税理士等の専門家に相談いただければと思います。

記.東京事務所1課