簡易な扶養控除等申告書について
簡易な扶養控除等申告書とは
簡易な扶養控除等申告書は、令和7年1月1日以後に支払いを受けるべき給与等について、勤務先へ提出する「給与所得者の扶養控除等申告書」又は「従たる給与についての扶養控除等申告書」に記載すべき事項が前年に勤務先へ提出した事項から異動がない場合はその事項の記載に代えて、異動がない旨を記載した申告書を提出することができるというものになります。
簡易な扶養控除等申告書の導入により、従業員が必要な情報を迅速かつ正確に提供できるようになります。また、企業側も情報の管理が容易になり事務負担の軽減が期待されています。
簡易な扶養控除等申告書の記載方法
簡易な申告書を提出する人本人の氏名、住所又は居所及びマイナンバーを記載の上前年に提出した扶養控除等申告書に記載した事項から異動がない旨を「余白に記載」する等して提出する事によって「簡易な扶養控除等申告書」となります。別の様式があるわけではありません。
なお、給与等の支払者が、扶養控除等申告書に記載すべき従業員の方等のマイナンバーなど、所定の事項を記載した帳簿を備えているときはそのマイナンバーの記載をしなくてよいこととされています。
給与支払者の対応
給与支払者の対応としては主に2つあります。
①最後に提出された扶養控除等申告書の内容の把握
簡易な申告書の提出を受けた給与等の支払者は前年に提出を受けた扶養控除等申告書に記載された事項が簡易な申告書に記載されているものとして、源泉徴収事務を行うことになります。このため、従業員から最後に提出された簡易な申告書以外の扶養控除等申告書の内容を把握できるようにしておく必要があります。
②従業員に異動、変更の有無の確認を行う
従業員が、前年に提出した扶養控除等申告書に記載した事項について異動の有無を確認できるようにするため前年に提出を受けた扶養控除等申告書の写しを交付したりシステム等を利用して前年の扶養控除等申告書の申告データを確認してもらうなどの対応が必要となります。
簡易な扶養控除等申告書を提出できる人、できない人
・所得に変動がある場合
源泉控除対象配偶者や控除対象扶養親族の所得の見積額は年によって変動する可能性があります。この場合、その年と前年の両方において同じ控除(控除額も同じ)が適用される場合には前年から異動がないものと取り扱って差し支えない。
また、障害者控除の対象となる人の障害の程度(等級)に変動があった場合にも障害者控除の額が変わらなければ異動がないものとして取り扱うことができます。一般の障害者から特別障害者になる場合や特別障害者から一般の障害者になる場合には障害者控除の額が変わるので簡易な申告書を提出することはできません。
・扶養親族の年齢の変動がある場合
扶養親族の年齢の変動によっては、前年から異動があったものとして簡易な申告書を提出できない場合があります。
例)15歳→16歳 年少扶養親族 → 一般の控除対象親族
69歳→70歳 一般の控除対象親族 → 老人扶養親族等
年の途中で異動があった場合
簡易な申告書を提出した後、年の途中で申告内容に異動が生じた場合にはその都度、給与等の支払者へ異動申告書を提出する必要がありますがこの場合、給与等の支払者は、通常、最後に提出を受けた簡易な申告書以外の扶養控除等申告書の内容を基に源泉徴収事務を行うことになるので従業員の方から異動申告書を提出してもらう際は異動月日及び異動事由を明かにした上で該当するすべての事項を記載してもらうなどして給与等の支払者の実務に応じて、効率的に源泉徴収事務が行える記載方法で提出を受けていただくことをおすすめします。
まとめ
簡易な扶養控除等申告書の導入は、企業の事務負担を軽減し効率的な年末調整を実現するための有力な手段です。従業員の記入負担が軽減されることで、申告内容の正確性も向上し結果的に企業全体の業務効率化につながります。導入を検討する企業は運用に向けた準備を進め、活用してはいかがでしょうか?
記.名古屋事務所2課