2024/07/30

消費税のプラットフォーム課税・後編

消費税のプラットフォーム課税について(概要)

事業者が、日本国内の消費者等向けに行うアプリ配信等の電気通信利用役務の提供
※1(事業者向け電気通信利用役務の提供
※2を除きます。以下、「消費者向け電気通信利用役務の提供」といいます。)については、当該事業者が国内事業者か国外事業者※3であるかにかかわらず、当該役務提供を行う事業者が申告・納税を行うこととされています。

消費税法等の一部改正により、令和7(2025)年4月1日以後に、国外事業者が、デジタルプラットフォーム※4を介して行う消費者向け電気通信利用役務の提供で、かつ、特定プラットフォーム事業者※5を介して当該役務の提供の対価を収受するものについては、当該特定プラットフォーム事業者が当該役務の提供を行ったものとみなして申告・納税を行うこととされました(インボイスも当該特定プラットフォーム事業者が発行することになります)。

※1 電気通信利用役務の提供とは、アプリ配信のほか、電子書籍・音楽の配信などの電気通信回線(インターネット等)を介して行われる役務の提供をいいます。
※2 事業者向け電気通信利用役務の提供とは、国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいいます。
※3 国外事業者とは、所得税法に規定する非居住者である個人事業者及び法人税法に規定する外国法人をいいます。
※4 デジタルプラットフォームとは、例えば、アプリストアやオンラインモールなどがこれに該当します。
※5 特定プラットフォーム事業者とは、一定の要件を満たすプラットフォーム事業者であるとして、国税庁長官の指定を受けた事業者をいいます。

プラットフォーム課税の対象は、
・「国外事業者がデジタルプラットフォームを介して行う消費者向け電気通信利用役務の提供」
で、かつ、
・「特定プラットフォーム事業者を介してその役務提供の対価を収受するもの」
です。

そのため、次の場合はプラットフォーム課税の対象となりません。
・ 国内事業者がデジタルプラットフォームを介して消費者向け電気通信利用役務の提供を行う場合
・ デジタルプラットフォームを介さずに消費者向け電気通信利用役務の提供を行う場合
・ デジタルプラットフォームを介して行う消費者向け電気通信利用役務の提供で、特定プラットフォーム事業者を介さずに当該役務提供の対価を収受している場合

プラットフォーム課税の対象とならない消費者向け電気通信利用役務の提供は、これまでどおり、当該役務の提供を行う事業者が申告・納税を行うこととなります。事業者向け電気通信利用役務の提供は、これまでどおり、当該役務の提供を受けた事業者が申告・納税を行うこととなります(リバースチャージ方式)。

国内事業者が特定プラットフォーム事業者を介して行う場合は、従来と変更ありません。

プラットフォーム事業者の届出義務及び国税庁長官による指定・公表

〈届出義務〉
プラットフォーム事業者は、指定要件を満たす場合には、その課税期間の確定申告書の提出期限(申告義務がない場合は、申告義務があるとした場合の提出期限(法人であれば、その事業年度の末日の翌日から、原則2月以内))までに、「特定プラットフォーム事業者の指定届出書」(以下「指定届出書」といいます。)を、納税地を所轄する税務署長を経由して国税庁長官に提出する必要があります。

指定要件・・・プラットフォーム事業者のその課税期間において、その提供するデジタルプラットフォームを介して国外事業者が日本国内向けに行う消費者向け電気通信利用役務の提供に係る対価の額のうち、当該プラットフォーム事業者を介して収受するものの合計額が50億円を超えるもの

〈国税庁長官による特定プラットフォーム事業者の指定・公表〉
国税庁長官は、プラットフォーム事業者から指定届出書の提出があった場合、特定プラットフォーム事業者として指定します(指定届出書の提出がない場合であっても、指定要件を満たす場合は特定プラットフォーム事業者として指定します)。当該指定は、指定届出書の提出期限(その提出期限までに指定届出書の提出がない場合は指定通知を発した日)から6か月を経過する日の属する月の翌月の初日に指定の効力が生じます(指定の効力が生ずる日からプラットフォーム課税の対象となります)。

制度開始時における届出及び指定について(経過措置)・・・令和6年4月1日を含む課税期間(当該課税期間が令和6年8月1日以後に終了する課税期間である場合は、当該課税期間の前課税期間とします。以下「施行時判定期間」といいます)において、指定要件を満たす場合は、令和6年9月30日までに指定届出書を提出する必要があります。この場合、国税庁長官は、施行時判定期間に係る特定プラットフォーム事業者の指定を令和6年12月31日までに行い、令和7年4月1日にその指定の効力が生じます。

国税庁長官は、特定プラットフォーム事業者を指定したときは、特定プラットフォーム事業者に対して書面で通知するとともに、国税庁ホームページに公表します。
国税庁ホームページで公表する特定プラットフォーム事業者に関する事項は以下の通りです。
・特定プラットフォーム事業者のデジタルプラットフォームの名称
・特定プラットフォーム事業者の氏名・名称
・特定プラットフォーム事業者の指定の効力が生ずる日

参考ですが、現在で経済産業省が公表している「特定デジタルプラットフォーム提供者」として指定されている事業者は以下の通りです(最終更新日2023/10/20)。

○総合物販のオンラインモール運営事業者
・アマゾンジャパン合同会社(Amazon.co.jp)
・楽天グループ株式会社(楽天市場)
・LINEヤフー株式会社(Yahoo!ショッピング)

○アプリストア運営事業者
・Apple Inc.及びiTunes株式会社(App Store)
・Google LLC(Google Playストア)

○メディア一体型広告デジタルプラットフォームの運営事業者
(自社の検索サービスやポータルサイト、SNS等に、主としてオークション方式で
 決定された広告主の広告を掲載する類型)
・Google LLC(広告主向け広告配信役務である「Google広告」、「Display&Video360」等を通じて「Google検索」又は「YouTube」に広告を表示する事業)
・Meta Platforms,Inc.(広告主向け広告配信役務である「Facebook広告」を通じて「Facebook(Messenger含む)」又は「Instagram」に広告を表示する事業)
・LINEヤフー株式会社(広告主向け広告配信役務である「Yahoo!広告」を通じて「Yahoo!JAPAN(Yahoo!検索含む)」又は「LINE及びファミリーサービス」に広告を表示する事業)

○広告仲介型デジタルプラットフォームの運営事業者
(広告主とその広告を掲載するウェブサイト等運営者(媒体主)を、主としてオークション方式で仲介する類型)
・Google LLC(広告主向け広告配信役務である「Google広告」、「Display&Video360」等を通じて、「AdMob」、「Adsense」等により、媒体主の広告枠に広告を表示する事業)

まぁ、現時点では誰もが知っているような有名どころばかりですね。

特定プラットフォーム事業者の指定を受けた場合

国税庁長官から特定プラットフォーム事業者の指定通知を受けた場合、プラットフォーム課税の対象となる消費者向け電気通信利用役務の提供を行う国外事業者に対して、プラットフォーム課税の対象となる旨及びプラットフォーム課税の対象となる年月日(特定プラットフォーム事業者の指定の効力が生ずる日)を通知する必要があります。

プラットフォーム課税の対象となる消費者向け電気通信利用役務の提供については、特定プラットフォーム事業者が申告・納税を行うこととなります。
なお、その確定申告書には、プラットフォーム課税の対象となる消費者向け電気通信利用役務の提供の対価の合計額等を記載した明細書を添付する必要があります。

特定プラットフォーム事業者が適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)である場合、プラットフォーム課税の対象となる消費者向け電気通信役務の提供について、適格請求書(インボイス)の交付義務が生じます。

今回は長い説明になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

記.名古屋事務所1課