2024/07/23

消費税のプラットフォーム課税・前編

かつての消費税法における国外事業者等との取引

日本での消費税は1989年(平成元年)4月1日に導入されました。

消費税の課税対象となる原則的な取引は、

「事業者が事業として行う」
『国内取引』で、
「対価を得て行う」
「資産の譲渡、貸付け、役務の提供であること」

です。

しかし、時代の変化に伴い、当初では予定していなかった事態がいろいろと生じてきました。

その最たるものがインターネットの普及です。

それにより「日本国内」に居ながら、「国外」の事業者から簡単にサービスの提供等を受けることが可能となったわけですが、国外事業者からの資産の譲渡や役務の提供等は「国内取引」には該当しないため、消費税が課されなかったことから、Amazon等の多額の利益を上げていた巨大な外国法人が日本に対して消費税を納めていないという問題が生じていました。

当初の国外事業者絡みの消費税の取扱いは以下の通りです。

国内事業者 → 国外事業者又は国外消費者 ・・・ 「国内取引」(課税取引)
国外事業者 → 国内事業者又は国内消費者 ・・・ 「国外取引」(不課税取引)

国境を越えた役務の提供に対する課税の見直し

前述した問題を解消すべく、平成27年の税制改正より消費税法の一部改正が行われました。

電子書籍、音楽、広告等の配信などインターネット等を介して行われる役務の提供を「電気通信利用役務の提供」と位置付け、その役務の提供が消費税の課税対象となる国内取引に該当するか否かの判定基準が、原則として

「役務の提供を行う者の事業所等の所在地」
         ↓
「役務の提供を受ける者の住所地等」

に見直されました。

これにより国外事業者絡みの消費税の取扱いは以下のとおりとなりました。

国内事業者 → 国外事業者又は国外消費者 ・・・ 「国外取引」(不課税取引)
国外事業者 → 国内事業者又は国内消費者 ・・・ 「国内取引」(課税取引)

つまり、それまでとは「真逆」の取扱いとなったわけです。

そのため、この改正の前後では、税務署もこういった取引だけに目を付け、狙い撃ちで税務調査が入ることもしばしば見受けられました。

※余談ですが、平成27年の税制改正では国外事業者が提供する「消費者向け電気通信利用役務の提供」について、当該役務の提供を受けた国内事業者の仕入税額控除が制限されましたが、登録国外事業者から提供を受けるものについては仕入税額控除の対象となりました(登録国外事業者制度)。
その後、令和5年10月1日以降は登録国外事業者制度は廃止され、インボイス制度に移行されています。

※「消費者向け電気通信利用役務の提供」とは・・・事業者が日本国内の消費者等向けに行うアプリ配信等の電気通信利用役務の提供をいいます。

消費税のプラットフォーム課税について(概要)

現在は、「消費者向け電気通信利用役務の提供」については、当該事業者が国内事業者か国外事業者であるかにかかわらず、当該役務提供を行う事業者が申告・納税を行うこととされています。

しかし、先の税制改正後もインターネットへの依存度は更に高い世の中になりました。

そのため、国外の小さな事業者からも、主としてデジタルプラットフォームを介して、誰でも簡単に日本国内に居ながらサービスの提供を受けることが出来るようになってきています。

大きな国外事業者であれば、今までの税制でも問題なく課税できたのでしょうが、小さな国外事業者に対し全てを課税するのは非常に困難です。

そのため、消費税法等の一部改正により、令和7(2025)年4月1日以後に、
「国外事業者」が、
「デジタルプラットフォームを介して行う消費者向け電気通信利用役務の提供」で、
かつ、
「特定プラットフォーム事業者を介して当該役務の提供の対価を収受するもの」
については、当該特定プラットフォーム事業者が当該役務の提供を行ったものとみなして申告・納税を行うこととされました。

※デジタルプラットフォームとは・・・例えば、アプリストアやオンラインモールなどがこれに該当します

※特定プラットフォーム事業者とは・・・一定の要件を満たすプラットフォーム事業者であるとして、国税庁長官の指定を受けた事業者をいいます。

次回は、この辺りの内容をもう少し詳しく解説していきたいと思います。

記.名古屋事務所1課