2024/07/09

短期前払費用の特例について

短期前払費用の特例とは

短期前払費用の特例とは、前払費用のうち1年以内に役務提供を受けるものについては、支払った事業年度に一括で費用計上ができるというものになります。

そもそも前払費用とは、法人が一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいいます。
そして前払費用は原則として、支出した時に資産に計上し役務の提供を受けた時に損金の額に算入することとなります。
そのため、原則として前払費用の費用計上は認められていませんが、短期前払費用の特例を適用すると、前払費用を損金算入することが認められ、節税対策に繋げることができます。
しかし、短期前払費用の特例には要件や注意点が決められておりますのでその点についてご紹介したいと思います。

短期前払費用特例の要件と注意点

短期前払費用の要件と注意点は以下の4つとなります。

支払日から1年以内に役務の提供を受ける役務に係る費用であること

例えば3月決算法人が翌事業年度分(4月1日~翌年3月31日)の費用を3月中に支払った場合は短期前払費用の要件を満たしますが、2月中に支払った場合は翌年3月分が1年1カ月目となってしまうため、1年以内に提供を受ける役務に該当しないこととなり要件を満たさなくなってしまいます。
この場合、1カ月分が経費として否認されるのではなく、全額が経費否認されてしまいますのでご注意下さい。
また、厳密な考え方をすると1年以内となると翌事業年度分(4月1日~翌年3月31日)の支払いを3月20日に支払った場合、11日分は支払日より1年を超えた部分となってしましますが、実務上は1ヶ月以内の日割り部分は柔軟な取扱いがされ、短期前払費用の特例として認められています。

契約に基づき継続的に支払った日の属する事業年度で費用処理していること

短期前払費用の特例は契約に基づいていなければならず、月払い契約を勝手に1年分先に支払ったとしても認められていません。
こちらが認められてしまうと、黒字の年だけ適用し、赤字だから今年はやめるということができてしまい恣意的な利益操作に繋がってしまうからです。
そのため、毎月払い家賃等を節税対策のために短期前払費用の特例を適用しようとする場合は、年払いへの契約変更や書面での承諾書が必要となりますのでご注意下さい。

等質・等量のサービスで継続的に受けているもの

等質・等量のサービスとは、土地や事務所の賃借料、生命保険料や器具・機械の保守サービス等のことをいいます。
税理士や弁護士等の顧問料、コンサルティング費用等はその内容が毎月異なり等質・等量のサービスではないため、短期前払費用の特例としての処理は認められておりません。

重要性の原則から考えて問題のないこと

短期前払費用の特例では、企業会計上の重要性の原則に基づく金額の重要性と質的重要性の内容について検討が必要となります。
金額の重要性とは簡単に説明しますと金額が大きすぎるものは認められないというものです。
金額に明確な基準はありませんが、過去の判例では最終利益の10倍であったり金額自体が多額であることを理由に認められなかったケースがあります。
質的重要性とは、仕入の前払代金等の収入に直接的に対応するような費用については短期前払費用から除外するというものです。
短期前払費用の費用計上は、重要性の乏しいものについて特例的に認められた会計処理となるため、収入に対応する費用は重要性が高いと考えられ、短期前払費用から除外されます。

まとめ

短期前払費用の特例は適用すると適用初年度には2年分の費用計上を行えるため、利益が過大に出てしまった場合に節税することができます。
しかし短期前払費用の特例を適用する際には、契約書に基づいているか、等質・等量のサービスであるか、重要性の原則の範囲内であるかについて検討しなければなりません。
また効果は初年度のみですが一旦採用すると費用が年払いとなるため、費用支払月の資金繰りにも注意が必要となってきます。
節税にばかり目がいってしまい後から後悔しないように活用の際には慎重に検討することをおすすめします。

記.名古屋事務所1課