2024/05/01

役員借入金について

役員借入金とは?

「役員借入金」とは、法人が役員から借り入れているお金、というものです。
貸借対照表では負債勘定として計上され、実態的には事業に関係する支出に対して経営者のポケットマネーから一時的に支出されているものが多いかと思います。流動的なお金なので短期借入金勘定として処理される場合もあります。

よく似た名前のものとして役員貸付金というものがあります。こちらは対照的に法人が役員に対してお金を貸し付けている、というものです。似た名前のものになりますが性質は全く違うものになります。次節で少し掘り下げていきます。

役員貸付金

「役員貸付金」は貸借対照表では資産勘定として計上され、実態的には経営者の事業とは関係のないプライベートな支払いに対して法人がお金を払っているケースが多いかと思います。

少し話が逸れますが、知り合いの銀行員の方によると、とりわけ信用保証協会付の融資を受ける際には、役員貸付金の内容について明瞭にしておかないと融資を断られる可能性が高まる、と聞いたことがあります。

理由としては、そもそも収益を生むための元手を確保するための仕入や経費の運転資金として使われるべき融資金が、経営者個人の私的な支出に使われるのであれば収益が生まれずに返済の目処が立たなくなってしまうため、とのことでした。

信用保証協会は公共性の高い組織のため、役員貸付金もそうですし使途不明金に類する勘定科目(多額の仮払金、前渡金など…)については非常に敏感です。事業性融資を考えている場合は損益状態だけではなく貸借対照表の科目についても少し気をつけた方がいいかもしれません。

ちなみに役員借入金については、実質的には自己資本に類するものとみなすこともあるので、融資の審査上はさほど大きな影響は出ないことが多いそうです。一部に伝聞、私見が含まれておりますので、あくまで参考程度にお含みおきください。

役員借入金の免除、注意点

通常、法人は役員借入金の返済時期や返済金額は自由に設定できますが、借入元の役員が債権放棄をすれば法人は債務が免除されることとなります。

この際、仕訳としては

(借方)  / (貸方)
(役員借入金)/(債務免除益)

と仕訳をすることになり、利益が生じることとなるので場合によっては法人税負担が大きくなるので注意しましょう。

また複数の株主がいる場合は、純資産がプラスとなれば株価が上がることとなり、他の株主に対するみなし贈与に該当し、贈与税の問題が生じるケースもあります。
実際にはその場で資金の移動があるわけではないのでなぜ贈与にあたるのか?、と思われるかもしれません。
この流れについては以下のとおりとなります。

①役員借入債務免除実施
②役員借入の減少、当期利益の増加
③利益の増加により繰越利益の増加=純資産の増加
④一株当たりの価値が上がる

他の株主達からすると間接的に株価の増加という経済的利益を受けることとなるので、債権放棄をした役員から他の株主へ資産の贈与を行った、とみなされるということです。

債務免除を行ったとしても生じたみなし贈与の額が贈与税の基礎控除の範囲内であったり、債務免除後も法人が大幅な債務超過の状態であれば必然的に株価はゼロのままで贈与税の問題が生じないこともあります。

会社の株主が一人のみの場合はこういった問題も起こりませんが、複数人の株主からなる会社の場合は注意していきましょう。

記.大阪事務所2課