2024/04/09

空き家に係る譲渡所得の特別控除

空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例

少し前のお話になりますが、昨年の令和5年度税制改正により空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例の制度に改正がありました。

空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例とは、相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を令和9年12月31日までの間に売却し、一定の要件を満たす場合は、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。

具体的な要件につきましては、Vol.611(2022年10月11日配信分 https://www.tax-sos.co.jp/news_tax/1537.html)で解説しておりますのでそちらをご参照ください。
今回は改正点に焦点を当てていきたいと思います。

相続等で取得した古い家屋やその敷地に供されている土地の有効利用が進まないという問題は以前からあり、そういった状況を改善するためにこの特別控除の制度が設けられているのですが、依然として解消には至っていないことから適用期間の延長や一部要件の緩和を盛り込んだ改正となっています。
また、一部要件が緩和されている一方で、場合によっては特別控除額が減額されることになっています。

令和6年1月1日以降に行う譲渡については、その改正後の要件と特別控除額に基づき申告する必要がありますので注意が必要です。

改正点

改正の内容につきましては以下のとおりになります。

(1)適用期限について
改正前は令和5年12月31日までの譲渡分についての適用でしたが、4年間延長され令和9年12月31日までの譲渡について適用できるようになっています。

(2)耐震改修・除却要件について
改正前は譲渡日までに相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋を耐震基準を満たすようリフォームするか、取り壊しをしてから譲渡することが要件となっており、相続人が耐震リフォームや取り壊しをすることが必須でした(既に耐震基準を満たす場合においては、耐震リフォームは不要)。
改正後は譲渡年の翌年2月15日までに、すなわち譲渡年分の確定申告期間が始まるまでに耐震リフォームをするか取り壊せばOKとなっています。
これにより、譲渡後において譲受側の耐震リフォームや取り壊しでも構わないということになっており、特例適用の要件が緩和されたかたちとなります。

(3)特別控除額について
改正前は相続人の複数名が取得した場合でも控除額がそれぞれ3,000万円となっていましたが、改正後は相続人が3人以上で取得した場合は、その控除額が2,000万円となります。
そのため、相続人が2人で取得して売却した場合の特別控除額は3,000万円×2人の合計6,000万円と改正前と同額ですが、相続人が3人で取得して売却した場合の特別控除額は2,000万円×3人の計6,000万円と、改正前の9,000万円から減額となります。

被相続人居住用家屋等確認書

この制度を適用する場合には、確定申告書に家屋所在地の市区町村から交付された「被相続人居住用家屋等確認書」を添付する必要があります。
被相続人居住用家屋等確認書は、適用要件を満たすことを証明する書類を揃えて、市区町村へ申請をすることにより交付されるという流れになります。

被相続人の居住の用に供していたことを示すために住民票の除票の写しが必要であったり、家屋の取り壊しを行ったのであれば家屋の閉鎖事項証明書が必要となります。
そのほか、被相続人が生前に老人ホームに入所していたのであればその事実を証明する書類など、必要な書類は多岐にわたります。
国土交通省のホームページにも申請に必要な書類の一覧が掲載されておりますのでご参照ください。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001715180.pdf

以上より、被相続人居住用家屋等確認書を申請するための書類を準備することに時間を要するかと思います。

改正前は譲渡以前の耐震リフォームまたは取り壊しが要件となっていたことから、譲渡時にはそれらを証明する書類がある程度用意できました。
改正後は、それらの工事が譲渡後でも認められることから、譲渡後にそういった書類の準備をする可能性もあります。
もし譲渡が年末近くに行われ、耐震リフォームや取り壊しが年明けとなった場合は、これらの工事に関する書類等を準備して、市区町村に被相続人居住用家屋等確認書の交付を確定申告までに受ける必要があり、時間的に余裕がなくなってしまいます。
そのことから、なるべく年の早いうちに譲渡と耐震リフォームもしくは取り壊しを完了させて、必要な書類を準備する期間を長く設けることも必要になるかもしれません。

記.大阪事務所1課