2024/03/27

賃上げ促進税制について

賃上げ促進税制各適用対象

令和4年4月1日以降「所得拡大促進税制」から名前を変えて始まった「賃上げ促進税制」です。
令和4年4月1日から令和6年3月31日までに開始される各事業年度が対象の期間は大企業向けと中小企業向けの2つに適用対象が分けられていました。

令和6年度の税制改正では中堅企業向けという新たな枠組みが設けられています。
適用期間は令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度です。個人事業主は、令和7年から令和9年までの各年が対象です。

①大企業向け賃上げ促進税制
青色申告書を提出する全企業又は個人事業主が対象。
 
②中堅企業向け賃上げ促進税制
青色申告書を提出する従業員数2,000人以下の企業又は個人事業主が対象。
(その企業及びその企業との間にその企業による支配関係がある企業の従業員数の合計が1万人を超えるものを除く。)

③中小企業向け賃上げ促進税制
青色申告書を提出する中小企業者等(資本金1億円以下の法人、農業組合等)又は従業員数1,000人以下の個人事業主が対象。

中小企業向けの対象範囲は改正前と変わっていません。
中小企業ほどではなくても、要件がより優しく適用を受けやすい範囲を広げたという内容です。

必須要件と税額控除

中小企業の場合は給与支給額の増加の要件は変わりません。上乗せ要件の教育訓練費増加率の要件が緩和されたことと、くるみんマーク、えるぼし認定による上乗せが追加されています。
また、給与支給額が前年度を上回っていても、赤字であったり、税額少なく使い切れない期であった場合は消えてしまっていましたが、中小企業の場合、「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」を提出することにより、適用を5年間後送りすることができるようになるところが大きなポイントだと思います。

改正前の賃上げ促進税制必須要件と税額控除率は下記の通りでした。

①大企業向け賃上げ促進税制
「継続雇用者」の給与支給額が前年度比
3%増加した場合15%税額控除
4%増加した場合25%税額控除
 
②中小企業向け賃上げ促進税制
「雇用者全体」の給与支給額が前年度比
1.5%増加した場合15%税額控除
2.5%増加した場合30%税額控除

改正後の必須要件(賃上げ要件)と税額控除率は下記の通りです。

①大企業向け賃上げ促進税制
「継続雇用者」の給与支給額が前年度比
3%増加した場合10%税額控除
4%増加した場合15%税額控除
5%増加した場合20%税額控除(新設)
7%増加した場合25%税額控除(新設)
 
②中堅企業向け賃上げ促進税制
「継続雇用者」の給与支給額が前年度比
3%増加した場合10%税額控除
4%増加した場合25%税額控除

③中小企業向け賃上げ促進税制
「全雇用者」の給与支給額が前年度比
1.5%増加した場合15%税額控除
2.5%増加した場合30%税額控除
※中小企業は、賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額の5年間の繰越しが可能。

※税額控除額の計算は、全雇用者の前事業年度から適用事業年度の給与等支給額の増加額に税額控除率を乗じて計算します。ただし、控除上限額は法人税額等の20%。

税額控除の上乗せ

賃上げ要件に加えて、税額控除率の上乗せ要件があります。
これまでの上乗せ要件は下記の通りです。

①大企業向け賃上げ促進税制
教育訓練費が前年度比で20%以上増加した場合税額控除率に5%上乗せ
 
②中小企業向け賃上げ促進税制
教育訓練費が前年度比で10%以上増加した場合税額控除率に10%上乗せ

改正後はこれまでの教育訓練費の増加要件に加えて、労働環境の整備に対しても税額控除率の上乗せが認められました。
厚生労働省から「子育てサポート企業」として認定を受けるともらえる「くるみんマーク」。女性活躍推進法に基づき、一般事業主行動計画の策定・届出等を行った事業主のうち、女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良である等の一定の要件を満たした事業主は、厚生労働大臣より認定が受けられる「えるぼし」認定というものがあります。
詳細は厚生労働省のホームページでご確認ください。

くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/kurumin/index.html
「えるぼし」認定とは
https://jsite.mhlw.go.jp/kagawa-roudoukyoku/content/contents/000952514.pdf

改正後の上乗せ要件と税額控除率は下記の通りです。あくまでも上乗せであり、プラチナくるみんの認定を受けていても必須要件(賃上げ要件)をクリアしていないと税額控除は受けられません。

①大企業向け賃上げ促進税制
・教育訓練費が前年度比10%増加した場合税額控除率を5%上乗せ
・「プラチナくるみん」または「プラチナえるぼし」取得で税額控除率を5%上乗せ

全雇用者の給与等支給額の増加額の最大35%を税額控除
 
②中堅企業向け賃上げ促進税制
・教育訓練費が前年度比10%増加した場合税額控除率を5%上乗せ
・「プラチナくるみん」または「えるぼし三段目以上」取得で税額控除率を5%上乗せ

全雇用者の給与等支給額の増加額の最大35%を税額控除

③中小企業向け賃上げ促進税制
・教育訓練費が前年度比5%増加した場合税額控除率を10%上乗せ
・「くるみん以上」または「えるぼし二段目以上」取得で
税額控除率を5%上乗せ

全雇用者の給与等支給額の増加額の最大45%を税額控除

※教育訓練費の上乗せ要件は、適用事業年度の教育訓練費の額が適用事業年度の全雇用者に対する給与等支給額の0.05%以上である場合に限り適用可能。

経済産業省のホームページもご参照ください。
賃上げ促進税制について
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/syotokukakudai.html
パンフレット
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/r6_chinagesokushinzeisei_pamphlet.pdf

記.東京事務所2課