2024/01/31

ソフトウェアの会計と税務

会計上のソフトウェア

会計上のソフトウェアとは「コンピュータを機能させるように指令を組み合わせて表現したプログラム等」になります。
ソフトウェアの概念はコンピュータ・ソフトウェアであり、その範囲は

①コンピュータに一定の仕事を行わせるためのプログラム
②システム仕様書、フローチャート等の関連文書

を指します。
コンテンツは、ソフトウェアとは別個のものとして取り扱い、ソフトウェアには含めません。 ただし、ソフトウェアとコンテンツが経済的・機能的に一体不可分と認められるような場合には、両者を一体として取り扱うことができます。
また、ソフトウェアの製作費に係る会計基準は、製作目的別の次の3区分の設定があり、当該区分ごとに、その処理方法を定めています。(取得形態(自社製作、外部購入)による区分ではありません。)

①受注製作のソフトウェア
(特定のユーザーに対し受注・製作、提供するもの)

②市場販売目的のソフトウェア
(不特定多数のユーザー向けに開発・製作し、販売する目的のもの)

③自社利用目的のソフトウェア
(その利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であるソフトウェア)

ソフトウェアを資産として計上する場合には、無形固定資産の区分に計上しなければなりません。なお、製作途中のソフトウェアの製作費については、無形固定資産の仮勘定として計上することになります。

ソフトウェア製作に係る費用・資産計上

ソフトウェア製作による会計処理は要約すると下記の様になります。

①受注製作のソフトウェア
受注製作によるソフトウェアは、購入側においては、原則的に購入費用等を無形固定資産に計上します。製作者側においては、請負工事の会計処理に準じて処理されます。

②市場販売目的のソフトウェア
会計上、市場販売目的のソフトウェアである製品マスターの製作費は、研究開発費に該当する部分を除き、資産として計上しなければなりません。つまり研究開発が終了するまでの間にかかる製作費は費用とされ、それ以降の製作費は資産計上されることになります。
しかし、製品マスターの機能維持に要した費用は、資産として計上してはいけません。

③自社利用目的のソフトウェア
自社利用のソフトウェアの資産計上については、そのソフトウェアの利用により【将来の収益獲得又は費用の削減が確実である】と認められることが要件になります。
よって、その確実性が認められない又は不明な場合は、費用として処理することになります。

その他のソフトウェア取得に関する会計上の取り扱いは、下記のとおりです。
①購入ソフトの設定費用は取得費になります。(重要性が乏しい場合は除く)
②データコンバート費用やトレーニング費用は発生年度の経費になります。

ソフトウェアの税務

税法上のソフトウェアの定義については規定されていませんが、一般的には会計上の概念・範囲と基本的に同様のものであると考えられています。
税務上の資産区分については無形減価償却資産に該当することとされ、減価償却資産の耐用年数等に関する省令において、その利用目的に応じて耐用年数が定められており、次のとおりになります。

利用目的が
①複写して販売するものの原本  耐用年数3年
②その他のもの         耐用年数5年
③開発研究用のもの       耐用年数3年
になります。

ソフトウェアの取得価額については以下の通りです。(組織再編による取得価額については省略します。)

①他から購入したソフトウェア
ソフトウェアの購入代金(引取運賃等を含む)と ソフトウェアを事業の用に供するために直接要した費用の額 の合計額
  
②自己が製作したソフトウェア
ソフトウェアの製作に要した原材料費、労務費及び経費の額 と ソフトウェアを事業の用に供するために直接要した費用の額 の合計額

ソフトウェアを自主製作する場合、一般的に製品化又は資産化の過程で、一定の研究開発を行っている場合がほとんどであるが、税務的の原則的考え方は、ある資産を取得するために要した費用は、すべて資産に計上することが原則であるという立場になります。しかし、実務上、すべての研究開発費をソフトウェアの取得価額としているわけではありません。ソフトウェアを自社製作する場合、その製作費用の大部分は、労務費等の人件費であり、実際に精緻な取得原価計算を行うには、事務的煩雑さを伴うなど困難な場合が多いと考えられます。

そのため、法基通7-3-15の2、法基通7-3-15の3において下記の取り扱いを容認しています。

①ソフトウェアの取得価額を算定する場合、法人が、原価の集計、配賦等につき、合理的であると認められる方法により継続して計算している場合には、これを認める。(法基通7-3-15の2)

②次に掲げるような費用の額は、ソフトウェアの取得価額に算入しないことができる。
⑴ 自己の製作に係るソフトウェアの製作計画の変更等により、いわゆる仕損じがあったため不要となったことが明らかなものに係る費用の額
 
⑵ 研究開発費の額(自社利用のソフトウェアについては、その利用により将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかものに限る。)
 
⑶ 製作等のために要した間接費、付随費用等で、その費用の額の合計額が少額(その製作原価のおおむね3%以内の金額)であるもの
(法基通7-3-15の3)

まとめ

今回はソフトウェアの会計と税務についてまとめさせて頂きました。特に自己が製作をしたソフトウェアについては、正しく処理をされていないと税務調査等においても指摘事項になってくる可能性がありますので、取り扱いについて注意をしていく必要があります。

記.名古屋事務所2課