2024/01/15

破産すると滞納した税金

法人の破産

最初に法人(会社)破産について解説します。
法人破産とは「法人の債務や資産を清算し、法人を消滅させる手続き」です。法人の背負った負債(マイナス)と、法人が有する資産(プラス)を清算した上で、会社(法人)を消滅させるのが法人破産という手続きになります。

法人破産によって法人は消滅しますが、「滞納した税金」や「滞納分の取り扱い」はどうなるのでしょうか。
法人破産をすることで会社(法人)がなくなる為、税金などの債務者(支払い義務を持つ存在)が消滅します。つまり法人破産によって債権自体も消滅します。法人破産した会社の経営者などが、法人が滞納していた税金などを支払う必要はありません。

個人破産

次に個人の破産について法人破産との違いを見ながら解説します。
個人破産と法人破産の1つ目の違いとして「破産の対象」があります。個人の破産は個人が対象ですが、法人破産は法人が対象です。
2つ目の違いは「破産手続き後の存続の有無」になります。個人が破産をしても、個人の存在が消滅することはありません。対して法人破産は破産した法人が消滅します。
法人破産と個人の破産の3つ目の違いは「財産処分について」です。個人の破産は、破産後の生活を考えて必要最低限の財産を残してもらえます。しかし、法人の破産については、財産はすべて処分対象になります。

個人の破産と法人破産では、債務の取り扱いも異なります。個人の破産は免責により債務の支払い義務を免れますが、法人破産は債務を背負う存在である法人自体が消滅するため、個人破産の免責とは異なるのです。個人の破産では、免責を受けても滞納した税金などの支払い義務は残ります。

なぜ個人の場合は、自己破産しても税金や社会保険の支払いがなくならないのか。その理由は、税金が非免責債権に該当するからです。非免責債権とは、自己破産をしても免除されない支払いのことです。前述した法人破産についても例外的に支払い義務が残るケースが有ります。納税保証書を提出しているケースと第二次納税義務を負っているケースです。
今回は詳しい説明は割愛します。

破産後の税務

法人破産や個人破産後の税務はどうなるかについて解説します。
通常の経営状況であれば、税理士さんに依頼して任せ、それほど税務処理の負担を感じることはないかもしれません。しかし、経営状況が厳しくなり、支払不能破産申立てを検討するといった状況になると、税理士さんに払う顧問料の支払いも厳しくなり、これ以上の業務はできないと言われて以後の税務申告業務を断られたり、契約を解除されてしまったりすることもよくあることです。
それでは、破産した場合の税務申告・確定申告は誰が行うのでしょうか。
ずばり破産管財人です。
破産管財人というのは、破産手続において破産財団(簡単に言うと破産者の財産)に属する財産の管理と処分をする権限を持った人です。言わば、破産法人の管理人です。破産管財人は、破産手続開始の決定と同時に、裁判所によって選ばれます。現在の運用では、ほとんどの場合に弁護士の中から選ばれます。

次に破産管財人の職務について簡単に解説します。
破産者が有していた財産の換価・処分・回収、破産債権の認否(破産者に対する債権の有無とその額を確定すること)、債権者に対する配当、裁判所と破産債権者に対する報告です。このような破産管財人の職務を遂行するために、破産管財人には、破産者の財産の管理と処分をはじめとする大きな権限が法律上与えられています。破産法人及び個人破産の税務申告・確定申告は、租税債務という破産債権の有無とその金額を確定させる行為です。

まとめ

破産には法人破産と個人破産があり、それぞれに違いがあり法人破産では、税金などの債権は会社の消滅にともない基本的には消滅します。個人破産(自己破産)の場合は、免責により債務の支払い義務は免れますが、滞納した税金(非免責債権)などの支払い義務は残ります。破産の税務については、裁判所により選ばれた破産管財人が行うことになります。
破産の要件や手続きなどにお悩みの場合は、弁護士や税理士などの専門家にあらかじめ相談しておくことをおすすめします。

記.名古屋事務所2課