2023/12/13

役員社宅制度

役員社宅制度の仕組みとそのメリット

役員の節税対策の一つとして役員社宅制度の活用があります。
役員社宅制度では、会社名義で借りている賃貸物件に役員が住むことで会社は家賃負担分を経費として計上することができ、役員側も一定額の家賃(賃貸料相当額)を会社に支払っていれば給与として課税されることがなくなります。会社は経費が増えることにより法人税を下げることができ、役員も実質的な手取りを増やすことができます。

では具体的にはどのような仕組みなのでしょうか。
通常、役員が個人で住宅を借りる場合は、会社が役員報酬を役員個人に支払い、その後に役員個人が家賃を支払うこととなります。しかし、会社が会社名義で物件を契約した場合は、会社が役員個人に又貸しすることとなります。家賃支払いの流れが役員個人で借りた場合は、役員→大家の流れとなりますが、会社で借りた場合は、役員→会社→大家の流れで家賃を支払うこととなります。
間に1つ会社を挟むことで、実際の家賃と役員が会社に支払う家賃の差額を経費として計上することとなり役員個人・会社双方にとってメリットとなります。

賃料相当額の計算方法

上記で説明したとおり実際家賃と役員が会社に支払う家賃の差額分が経費となり節税効果
となるのですが、役員が会社に支払う家賃はどのように設定するのでしょうか。

役員向け社宅の家賃計算方法には、住宅の種類によって異なってきます。
具体的な住宅の種類には①小規模住宅、②小規模でない住宅、③豪華社宅の3種類となります。

①小規模な住宅とは、法定耐用年数が30年以下の建物の場合には床面積が132平方メートル以下である住宅、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には床面積が99平方メートル以下(区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定します。)である住宅をいいます。

②一般的な賃貸住宅で、①の小規模住宅に該当しない場合が小規模でない住宅となります。

③豪華社宅とは床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。なお、床面積が240平方メートル以下のものであっても、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するものについては、いわゆる豪華社宅に該当することとなります。

ではそれぞれの計算方法を見ていきましょう。

①小規模住宅の賃料相当額計算方法
次の(1)~(3)までの合計金額となります。
(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 0.2%
(2)12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
(3)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 0.22%

②小規模でない住宅の賃料相当額計算方法
次の(1)と(2)の合計金額の12分の1又は会社が大家に支払う家賃の50%の
いずれか大きい方の金額となります。
(1)(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 12%
(2)(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 6%

③豪華社宅の賃料相当額計算方法
豪華社宅とみなされた場合は家賃全額が賃料相当額となるため節税効果はなくなってしまいます。

役員社宅制度を採用する上での注意点

役員社宅制度は節税効果は大きい制度ではありますが、下記の点について注意が必要です。

①社内ルールの整備が必要
社宅制度を利用するためには、社宅に関する社内規定を作成する必要があります。特に役員の社宅の場合は、税務調査で問題視されてしまう可能性があります。こういったリスクを減らすためにもしっかりとしたルール決めを行う必要があります。

②個人から会社への名義変更について
役員社宅制度を利用する場合には、会社名義として法人契約が必要となります。すでに役員個人が契約しているマンションを、会社名義の法人契約にする場合は、ほとんどの場合、全ての契約手続きを最初から行う必要があり、改めて審査を受けることとなるため、敷金や手数料、各種書類の作成費用などが新たに必要になります。既に個人名で賃貸借契約をしている自宅をそのまま家賃を会社で負担すると給与とみなされてしまいますのでご注意下さい。

③家賃以外の負担について
電気代・ガス代・水道代等の水道光熱費、車のための駐車場代については役員本人の負担となりますので、もし会社が負担していますと給与として課税されてしまいますのでご注意下さい。

④賃貸料相当額が無償の場合
社宅を無料で借りてしまっている場合は、賃貸料相当額が給与として課税されてしまい、社会保険料の計算対象にもなってきてしまいます。役員の場合は役員賞与となり、税務上の経費にはならないためご注意下さい。

まとめ

役員の家賃を経費にして節税になる役員社宅制度の仕組みやメリット、注意点について解説しました。役員社宅制度の賃貸料相当額計算には固定資産税の課税評価額を把握しなければならないという手間はかかりますが、家賃の8割~9割を経費にできる場合もあり節税効果が大きいものとなりますので、法人契約の役員社宅を検討されている方はご自身の賃貸物件で一度計算していただくのもいいかもしれません。実施される場合は注意点などもありますので税理士にご相談されることをお勧めします。

記.名古屋事務所1課