2023/11/07

社員旅行について

社員旅行は会社の経費にできるが、従業員の給与となることも?

社員旅行の費用は会社の経費とすることができますが、福利厚生費ではなく、給与としなければならない場合があります。その時は旅費という経済的利益を受けた従業員に所得税が課税されることとなります。会社が費用を出してくれる旅行であっても、その経済的利益に所得税が課税されるのであれば参加を検討したいと考える従業員もいるかもしれません。

そこで、どのような条件であれば社員旅行が従業員の給与として課税されず、会社の福利厚生費等として認められるのか見ていきます。
まず、国税庁が公表している「タックスアンサー(よくある税の質問)」No.2603の「従業員レクリエーション旅行や研修旅行」というのがあります。

No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行

[令和5年4月1日現在法令等]
従業員レクリエーション旅行の場合は、その旅行の内容(旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、従業員等の参加割合・使用者及び参加従業員等の負担額及び負担割合など)を総合的に勘案して、社会通念上一般に行われているレクリエーション旅行と認められるもので、その旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追求の趣旨を逸脱しないものであると認められるものについては、その旅行の費用を旅行に参加した人の給与としなくてもよいことになっています。

なお、その旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追求の趣旨を逸脱しないものであると認められ、かつ、その旅行が次のいずれも満たすものであるときは、原則として、その旅行の費用を旅行に参加した人の給与としなくてもよいことになっています。

(1)旅行の期間が4泊5日以内であること。
海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。

(2)旅行に参加した人数が全体の人数の50パーセント以上であること。
工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50パーセント以上が参加することが必要です。

(注1) 上記いずれの要件も満たしている旅行であっても、自己の都合で旅行に参加しなかった人に金銭を支給する場合には参加者と不参加者の全員にその不参加者に対して支給する金銭の額に相当する額の給与の支給があったものとされます。
(注2) 次のようなものについては、ここにいう従業員レクリエーション旅行には該当しないため、その旅行に係る費用は給与、交際費などとして適切に処理する必要があります。
1 役員だけで行う旅行
2 取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行
3 実質的に私的旅行と認められる旅行
4 金銭との選択が可能な旅行

給与とせず、福利厚生費とするには下記の要件

■給与とせず、福利厚生費とするには下記の要件を満たす必要があります。
前提として、社員旅行の内容を総合的に勘案して、社会通念上一般的でその旅行によって従業員に対する経済的利益が少額と認められるものです。

<具体的要件>
①旅行の期間が4泊5日以内であること。
海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。

②旅行に参加した人数が全体の人数の50パーセント以上であること。
工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50パーセント以上が参加することが必要です。

上記の要件に該当すると従業員の給与として課税されずに福利厚生費として会社の経費となります。

社員旅行の費用が給与となる場合

次は、逆に社員旅行の費用が福利厚生費ではく、給与として課税される場合を見てみましょう。
福利厚生費とするには、前提として社員旅行の内容を総合的に勘案して、社会通念上一般的でその旅行によって従業員に対する経済的利益が少額と認められるものと具体的要件がありました。
基本的にはそれ以外が給与や交際費となります。
例えば、1週間以上の大型旅行や、あまりにも豪華な高額旅行については給与や交際費とみなされるでしょう。
また、タックスアンサーの注書に該当するものも福利厚生費とはなりません。

具体的には下記の通りです。
・要件も満たしている旅行であっても、自己の都合で旅行に参加しなかった人に金銭を支給する場合には参加者と不参加者の全員にその不参加者に対して支給する金銭の額に相当する額の給与の支給があったものとされます。
・役員だけで行う旅行
・取引先に対する接待、供応、慰安等のための旅行
・実質的に私的旅行と認められる旅行
・金銭との選択が可能な旅行

上記の場合は給与又は交際費となりますので注意しましょう。

社員旅行の限度額はいくらまで?

どのような条件であれば福利厚生費等の経費になるかは見ていきましたが、実際に金額はいくらまでが給与として課税されないのかは国税庁タックスアンサーにも記載がありません。
国税庁タックスアンサーには、社員旅行の内容を総合的に勘案して、社会通念上一般的でその旅行によって従業員に対する経済的利益が少額と認められるものとなっており、金額の記載がありません。
では、よく聞かれる5万円?10万円?15万円?のいずれか?となりますが、この根拠が不明瞭です。 
そこで国税庁タックスアンサーの「事例2」を見てみましょう。

国税庁タックスアンサーの「事例2」

イ 旅行期間4泊5日
ロ 費用および負担状況 旅行費用25万円(内使用者負担10万円)
ハ 参加割合100パーセント
旅行期間・参加割合の要件および少額不追求の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として課税しなくてもよい

ここで使用者負担が10万円の記載があります。ここから概ね10万円までは福利厚生費としていけるのではないかと思われます。
ただ、社員旅行の費用処理については、国税庁から一定の基準は示されていますが、すべての場合がこの基準に当てはまるものではなく、個々の状況を総合的に勘案して判断することが重要です。
どのように要件を満たす旅行にすればよいかを事前に確認しながら計画をたて、素敵な社員旅行として下さい。

記.大阪事務所3課