2023/09/20

福利厚生費計上時の注意点

福利厚生とは?

福利厚生とは、雇用主が従業員向けに健康の増進や生活の充実を図ること、とされています。福利厚生費とはこういった目的で会社が支出する費用のことを指します。
また福利厚生費は①法定福利費と②法定外福利費の2種類からなります。

①法定福利費
法律で定められた会社に負担を義務付けられたもの。
(例:社会保険料の会社負担分)

②法定外福利費
会社が独自で定める福利厚生のための支出。
(例:勤務時の軽食の支給、社内旅行代金、社外の自己啓発サービスの利用料など)

②は一般的に福利厚生費として経費計上されます。
また、自社の社員のために支出した費用ということで非常に自由度の高いものとなっています。
その反面、一定の条件(平等性、支出金額)が設けられています。

(i)平等性
従業員全員を対象とするもので一部の人だけに支給されるものではないこと。
 
(ii)支出金額
支出する金額が世間一般的にみて常識的な範囲であること。

条件を満たさない場合には従業員の給与として課税されることがあります。

現物給与

従業員の給与としてみなされるものは先ほど触れた一定の条件を満たさなかった場合に加え、現物給与というものがあります。

〇現物給与
(A)物品その他の資産を無償または低い価額により譲渡したことによる経済的利益
(B)土地、家屋、金銭その他の資産を無償または低い対価により貸し付けたことによる経済的利益
(C)福利厚生施設の利用など(B)以外の用役を無償または低い対価により提供したことによる経済的利益
(D)個人的債務を免除または負担したことによる経済的利益

ほぼ無償でのサービスであったり、一部の従業員がサービスを受けられるものについては、その受けたサービスの対価が当該従業員の給与として課税されます。一方、業務遂行上必要なもの、換金性に欠けるもの、政策上の配慮を要するものなどの特定の現物給与については一部例外となっています。

事例紹介

福利厚生の一環のはずが従業員の給与に該当してしまう事例を国税庁のタックスアンサーより抜粋してご紹介します。

Q.背広など、私服としても着用できるものを制服として支給する場合、経済的利益の課税はどうなりますか。

A.所得税法上非課税とされる制服等には当たらないことから、給与等として源泉徴収をする必要があります。

1.制服、事務服等の支給又は貸与を非課税としている基本的な考え方
制服等の支給による経済的利益は一種の反射的利益であって、給与所得者に特別な利益を与えるものではなく、また給与所得者の役務提供に対する対価という性格が極めて希薄なものであることから、一定の制服の支給を非課税として取り扱うこととしています。
 
2.非課税とされる制服等の範囲
事務服、作業服等の支給が非課税とされるためには、それが、
①専ら勤務する場所において通常の職務を行う上で着用するもので、私用には着用しない又は着用できないものであること
②事務服等の支給又は貸与が、その職場に属する者の全員又は一定の仕事に従事する者の全員を対象として行われるものであること
が必要であると考えられます。

これらのことから、制服等として支給され、職務の遂行に当たり現に着用されているものであっても、これらの要件を満たさないものは、非課税とされる制服等には当たらないと考えられます。本件のように私用でも着られるような背広を支給すると、税務上現物給与となり源泉所得税の徴収、納付漏れということになります。従業員のために、と思って行ったことが税務的には思わぬ問題が生じることがありますので注意しましょう。

記.大阪事務所1課