2023/08/09

インボイス後の領収書整理や会計入力について

インボイス制度の影響を受けない方(免税事業者又は簡易課税制度を選択している事業者)

消費税とは資産の譲渡(物品の売却)や役務の提供(サービス提供など)に対して課税される税金ですが、インボイス制度が開始されてもこの内容に変更はありません。

今回変更されるのは消費税を納税する事業者(納税義務者)が納税する消費税の計算にあたり、今までは差引けていた経費部分(課税仕入れ)の消費税をインボイス登録事業者に対して支払った分しか差引けなくなるということです。

ざっくりとした計算例として、
今までAさんから110円で仕入れたものを330円で売却した場合には納付する消費税は 330円×10/100-110円×10/110=20円 と計算していたところ、Aさんがインボイス登録事業者でないと330円×10/110=30円と計算することになります。

1.消費税免税事業者

上記に記載した通り消費税を納税する事業者に影響する制度であることから消費税免税事業者については影響を受けません。そのため、領収書の整理や会計ソフトへの入力は今まで通りとなります。

2.簡易課税を選択している事業者

消費税納税義務者のうち本則課税ではなく簡易課税を選択している事業者(具体的な説明は割愛しますが、2年前の消費税課税売上高が5,000万円以下の事業者で届出書を提出している方等)については、支払った経費に関係なく課税売上を基に消費税納税額を計算することからインボイス制度の影響を受けません。
そのため、領収書の整理や会計ソフトへの入力は今まで通りとなります。
ただし、本則課税と簡易課税のどちらが有利(納税が少ない)かを判断するためにはインボイス領収書を整理して集計する必要が生じてきますので、どうすれば良いかは都度税理士の先生等に確認された方が良いかと思います。

インボイス制度の影響を受ける方(上記以外の事業者)

『インボイス制度の影響を受けない方』に記載した通りインボイス制度開始日以後はインボイス登録事業者への支払以外は消費税の計算で差引けなくなることから、まずは領収書等にインボイス番号の記載が有るか無いかを確認する必要がございます。
インボイス番号の記載があるものについては今まで通りの処理(会計ソフトへの入力も同じ)となります。
インボイス番号の記載が無い領収書については、まずはインボイス登録を行っているかを確認し、登録を行っているのであればインボイス番号を記載した領収書等を発行してもらう必要があります。(これだけでもかなりの手間が掛かると思われることから、入力前にインボイス番号の有る無しで分けておいた方が良いかもしれません)
 
インボイス番号が無く登録も行っていない事業者への支払は消費税の計算上差引くことが出来ないことから会計ソフトへの入力時に消費税の課税区分を『対象外』等で処理することとなります。
ただし、時限的な特例措置として下記があることから、領収書の整理や入力がかなり煩雑になることが予想されます。

1.少額特例
(基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者)

…税込1万円未満の課税仕入れについてインボイスの保存がなくとも一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が出来ますが、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの支出に限ります。

2.経過措置
(令和5年10月1日から令和8年9月30日までの支出は80%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までの支出は50%)

…インボイスの保存がなくとも一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が出来ます。(例えば令和5年10月1日に消耗品購入のため550円を支出した場合だと550円×10/110×80%=40円の控除を受けることが出来ます)
  
上記区分については会計ソフトがインボイス制度に対応しているものであれば入力日付により自動判定されるはずですが、念のため事前に確認されておいた方が宜しいかと思います。また、今まで領収書からではなくカード明細を基に入力をされていた方については、基本カード明細上からはインボイス番号が分からないため入力方法の変更を検討する必要があるかと思われます。

2割特例(令和8年9月末の属する課税期間まで)

上記とは少し内容が違いますが、インボイス登録を行わなければ免税事業者だった事業者が、インボイス登録を行ったことにより課税事業者となった場合については経費支出に関係なく課税売上高の2割分の消費税の納税で良いという特例があります。
考え方としては簡易課税制度と同じですが、こちらは要件を満たしていれば届出の必要は無いことから、もしこの特例を使用した方が確実に納税が少なくなると見込まれる事業者については適用出来る間はインボイス制度を気にしなくても良いかもしれません。

記.東京事務所2課