2023/08/02

保証金や敷金のインボイス

返還されない保証金の消費税課税仕入れついて

事務所等を借りる際、保証金や敷金(以下は、保証金等という)を支払うことがありますが、その一部が契約終了後に返還されない契約になっていることがあります。

返還されない保証金等の有無や金額については、賃貸借契約書に、「償却額:保証金等の○○%相当額」、もしくは、「契約終了時賃料の○ヶ月分相当額を保証金等から償却する」等と記載されていることがあるので、ご確認ください。

事務所等の事業用の契約であれば、返還されない保証金等の部分は消費税が課されるため、借主の課税仕入れとなります。(返還される保証金等の部分は課税の対象にはなりません。)

消費税の課税仕入れの計上時期は、返還しないこととなった課税期間とされていますので、上記のように記載されている場合、契約時に返還しないことが確定しているものとして、契約した課税期間に返還されない保証金等の全額を計上することになります。

インボイス制度開始後の対応

インボイス制度開始前であれば、貸主から請求書や領収書の交付を受けることが出来なかったとしても、帳簿のみの保存等により課税仕入れとすることが出来ました。
しかし、インボイス制度開始後、返還されない保証金等の部分を課税仕入れとする為には、貸主からインボイスの交付を受けて保存することが必要になります。
その為、インボイス制度開始後に契約締結した場合、返還されない保証金等の金額について、インボイスの記載事項が記載された領収書等、もしくは、追記された契約書を受領する必要があります。

インボイス制度開始後、貸主が適格請求書発行事業者であれば、インボイスの交付義務が生じる為、貸主の方へご相談ください。

既に契約している場合であっても、賃料の見直し等で金額が変動することがあり、それに伴い、返還されない保証金等の金額が変動することも考えられます。月額の賃料が変更になる際には、インボイスが必要になると思いますので、保証金等のインボイスについても忘れずに受け取り下さい。

また、その際の対応については、次項でご説明いたします。

金額が変動した場合の対応

契約時に返還されない金額が確定している場合でも、内容によっては、一定期間経過時や契約終了時に、金額が変動することもあるかもしれません。
例えば、「新賃料のひと月分を償却」となっている場合、旧賃料との差額が、変動する金額になります。
金額が変動した場合も、金額変更時に返還されないことが確定したものと考えられます。その為、差額分の修正インボイスを受領、保存することで、金額変更時の属する課税期間の課税仕入れとすることでご対応下さい。

現状では、返還されない保証金等についての領収書等を受領することが少なく、インボイス制度開始後の対応を失念している事業者が多いかもしれません。事務所等の賃貸借は頻繁に発生する取引ではありませんが、賃料の数ヶ月分の保証金等が発生して高額になることもありますので、忘れずにご対応下さい。

記.東京事務所2課