2023/07/19

最近の税務調査

税務調査の事前通知とは

平成23年12月の国税通則法の改正で、税務調査を行う場合には、原則として納税義務者に対して事前通知を行うこととされました。

事前通知は、国税通則法第74条の9に定められており、通知する内容は第1項に以下の事項と定められています。

1 質問検査等を行う実地の調査を開始する日時
2 調査を行う場所
3 調査の目的
4 調査の対象となる税目
5 調査の対象となる期間
6 調査の対象となる帳簿書類その他の物件
7 その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項

調査の対象となる期間は、基本3年間ですが、税務調査を実施している途中で、それより前の期間を調べたり、指摘してくることが数回ありました。
 
事前通知により、「調査の対象となる期間」を伝えておきながら、それ以外の期間に対して、質問検査等を行うことは可能なのでしょうか。

事前通知した以外の事項について調査できる場合とは

事前通知した期間以外の期間の質問検査を行える場合とは、国税通則法第74条の9第4項に
「第1項の規定は、当該職員が、当該調査により当該調査に係る同項第3号から第6号までに掲げる事項以外の事項について非違が疑われることとなった場合において、当該事項に関し質問検査等を行うことを妨げるものではない。この場合において、同項の規定は、当該事項に関する質問検査等については、適用しない。」
と定められており、事前通知した内容以外の事項について「非違が疑われることとなった場合」と規定されています。

「非違が疑われることとなった場合」については、明確な条文規定等はありませんが、事前通知した事項以外の調査の申し出があった場合もしくは、調査がされていた場合は、その要件を満たしている必要があります。

国税庁の「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」にも以下のような記載があります。
 
第2章 基本的な事務手続及び留意事項
3 調査時における手続
(2) 通知事項以外の事項についての調査

納税義務者に対する実地の調査において、納税義務者に対し、通知した事項以外の事項について「非違が疑われた場合」には、納税義務者に対し調査対象に追加する税目、期間等を説明し理解と協力を得た上で、調査対象に追加する事項についての質問検査等を行う。

事務運営指針にそのように記載されていても、説明もなく、実施されていることもあるかと思います。また、説明があったとしても、繰り返しとなりますが、「非違が疑われた場合」に当たるかが要件です。

また、事前通知の期間以外の調査を行った根拠として、調査官から以下の通達を言われたこともありましたが、これは、「事前通知した課税期間の調査のために、それ以外の期間の経理処理を確認する場合があるとき」の内容のため、全く違うものです。

「法令解釈通達 個別通達 税務調査手続関係 5-5」
事前通知した課税期間の調査について必要があるときは、事前通知した当該課税期間以外の課税期間に係る帳簿書類その他の物件も質問検査等の対象となることに留意する。
(注)例えば、事前通知した課税期間の調査のために、その課税期間より前又は後の課税期間における経理処理を確認する必要があるときは、法第74条の9第4項によることなく必要な範囲で当該確認する必要がある課税期間の帳簿書類その他の物件の質問検査等を行うことは可能であることに留意する。

非違が疑われる場合とは

「非違が疑われる場合」の明文規定はないと伝えましたが、国税庁の「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)<平成28年12月改定>」に参考となるものがございます。
 
問32
調査の過程で、事前通知を受けた税目・課税期間以外にも調査が及ぶこととなった場合には、調査の対象を拡大する旨や理由は説明してもらえるのですか。

回答
実地の調査を行う過程で、把握された非違と同様の誤りが事前通知をした調査対象期間より以前にも発生していることが疑われる場合のように、事前通知した事項以外の事項について非違が疑われた場合には、事前通知した事項以外の事項について調査を行うことがあります。
この場合には、納税者の方に対し、調査対象に追加する税目、課税期間等について説明し理解と協力を得た上で行いますが、当初の調査の場合と同様、追加する理由については説明することはありません。
 
この例示では、「実地の調査で非違が把握されること」と「同様の誤りが事前通知した調査対象期間より以前にも発生していることが疑われる場合」と示されています。

また、「当初の調査の場合と同様、追加する理由については説明することはありません。」との回答はどうかと思いますが、「非違が疑われる場合」の要件を満たしていないと思われる場合においては、反論し、説明を求める必要はあると思います。

少しでも、事業者様の税務調査の対応の参考となればと思います。

記.東京事務所1課