2023/06/21

税務調査

税務調査とは

日本では法人税、所得税、相続税は申告納税制度という方式が採られており、納税者自身が所轄税務署へ申告し、納税額(または還付税額)を確定させるよう定められています。
しかし、自ら申告することが前提であるため申告内容や税額に誤りが生じる可能性があります。
そのため、国税庁では「このような誤った申告が横行し、納税者間に課税の不公平感が生じないよう、国税庁およびその管轄組織により、納税義務が適正に果たされていないと認められる納税者に対して、その誤りを正すために」税務調査が行われるとされています。

税務調査の対象となる納税者は国税庁のシステムで選定されますが実際の調査理由は直接的には教えてもらえないのが実情です。

選定されうるのは下記のような申告内容が多いのではないかと個人的には考えています。
・前回の調査で修正事項や指摘事項があった。
・ずっと赤字だったが黒字に転換し欠損金も消化したため直近の申告で納税した。
・申告内容で前期比較をすると異常値が発生していた。
・売上が激増した。
・消費税が還付申告となった。
・本社が移転したため管轄の税務署が変わって3年経過した。
・不動産の購入があった。
・取引先に調査があった。

事業の状況に大きな動きがあった場合に正しい税務処理が行われているかを確認するため、という傾向があると考えられます。

申告内容に間違いが無ければ申告是認とされ申告は正しいものとして認められますが、調査担当者から指摘を受け、申告内容に誤りがあった場合には修正申告を勧められます。修正申告を提出した場合には、仮にその指摘に不服があっても原則は後から不服申立てをすることはできません。

また、納税者が修正申告書を提出しないと決めた場合には管轄の税務署長が職権で納税者の申告内容を改め、正しい課税標準・税額等を通知することもあります。この場合、納税者へ「更正通知書」または「決定通知書」が送付されます。納税者はこの処分が不服であれば、税務署長あてで再調査の請求か、国税不服審判所に審査請求することもできます。

実地調査

実際の調査がどのように進められるかはケースバイケースですが申告を税理士に依頼し委任状を添付し申告している場合には大半の場合、最初はその税理士に連絡がいくため納税者本人に連絡はいきません。

調査には二種類あり、強制調査と任意調査があります。強制調査は国税犯則取締法に則り、国税局査察部が脱税を疑われる納税者に対して、裁判所の令状をもって事前連絡なしに強制的に行う調査をいいます。納税に関する資料を押収できる権限があり、納税者はこの調査を拒絶できません。脱税行為が特定された場合には検察庁に告発され、その場合は刑事事件なります。
ただ、脱税額が多額で、かつ悪質な仮装隠ぺいと想定される事案に限られています。任意調査は、最も一般的な税務調査で管轄税務署の調査官等が納税者の同意を得て任意で行われる調査をいいます。納税者または税理士等の有資格者あてに、電話等で数週間前に連絡が来て日程調整を行います。
ただし、現金商売など、実態調査などを行う必要がある事業者の場合は、事前に通知されることなく抜き打ちで調査に来られる場合もあります。調査担当者は申告内容や事実確認に関する質問をする「質問検査権」を有しており、納税者は質問に対し黙秘する権利は認められていません。したがって虚偽の答弁や不答弁等には罰則規定が設けられています。過去の申告について問われることになるのでその場で即答できないこともあります。その場合には確認しておきます、でも構いません。当然その後、その内容についての確認はされます。

任意調査の場合、調査官の人数は事業規模によって変わります。5名から6名で来られる比較的大きな規模の事業者もあれば1名のみで来られるような場合もあります。日程は3日から4日間で依頼されることが多いのですが事業規模や関係書類を勘案し、1日で終わることもあります。

次に、具体的な調査項目を列挙します。業種によって焦点は異なるので必ずしも下記項目が問われるとは限りませんのであくまでも参考としていただければと思います。

資産・負債に関する事項
・現金残高と出納帳の照合
・売掛金計上漏れの有無(〆日から決算末日までの〆後売上)
・棚卸資産の計上漏れの有無
・減価償却資産の償却額、耐用年数、売却・除却の証憑書類
・不動産購入時の購入・売却に関する契約書等
・仕入に対応する売上との関連性
・役員から借入れをした際の原資確認
・固定資産台帳と現物の照合

損益に関する事項
・売上計上漏れ
・雑収入計上漏れ
・ガソリン代に含まれる軽油税の消費税処理
・接待交際費に含まれるゴルフ利用税の消費税処理
・事業に関連するかどうかの私的支出の可否
・現金支払で支払った経費に関する実態の確認
・人件費の実態確認
・外注費か給与かの実態確認
・所得税法204条の源泉徴収税額の徴収義務に該当しないかの実態、納付確認
・地代家賃に関する消費税の課税区分

その他
・印紙税の課税文書に該当する場合の印紙の貼付の有無
・源泉徴収簿の確認
・代表者の個人口座(給与振込口座等)
・代表者のデスク周り
・代表者の職務経歴

上記掲載事項では足りない部分も多いかもしれませんがせめてこれくらいは調査中に聞かれても回答できることが重要でしょう。
最近の取引内容の複雑さは既存の税法でカバーできない部分も多々あります。調査の際に指摘されないような書面での契約実態や事実確認ができるよう帳簿の備付けは最低限できていることが望ましいと言えるでしょう。

書類をきっちり整理し保管されていれば調査担当者へ与える印象も違うので普段から帳簿書類は漏れなく保存しておくことが大事ですね。

記.名古屋事務所1課