2023/06/13

電子帳簿保存法について

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法とは、国税関係(法人税法や所得税法)の帳簿や書類を電磁的記録(電子データ)で保存することを可能とする法律のことです。電子帳簿保存法で定められている要件を満たすことで従来まで紙で保管していた帳簿や書類を電子データとして保存することができます。
電子帳簿保存法の対象企業(事業者)は電子取引をしているすべての法人と個人事業主で、その規模は問われません。
電子帳簿保存法の対象書類は、「国税関係帳簿」「国税関係書類」「電子取引」の3種類で電子帳簿保存が可能なものと、スキャナ保存が可能なもの電子取引が可能なものに分類されます。

対象書類の具体的な例として
・国税関係帳簿
仕訳帳、売上台帳、総勘定元帳、経費帳など

・国税関係書類
決算関係書類(貸借対照表、損益計算書、棚卸表、試算表など)
自身が作成した書類(見積書、請求書、契約書、領収書など)
相手から受領した書類(見積書、請求書、契約書、領収書など)

・電子取引
WEB、電子メール、EDI(電子データ交換)、クラウドサービスなどによる見積書、請求書、契約書、領収書などの授受

これらが電子帳簿保存法の対象書類となっている物になります。

電子帳簿保存法の適用要件

電子帳簿保存法には、不正や第三者の介入を防ぐために2つの要件が定められています。

・真実性の確保:保存したデータの改ざんを防ぎ、訂正・削除の際に履歴と操作内容を確認できる状態にしておくこと。

・可視性の確保:保存したデータを明瞭な状態で閲覧・出力することができ必要に応じて誰でもすぐに閲覧できる状態にしておくこと。

上記の2つの要件は、更に3つの保存区分によって細かな規定が設けられており帳簿や書類を電磁的記録(電子データ)で保存するにはその細かな規定を満たす必要があります。

電子帳簿保存法の3つの保存区分

① 電子帳簿等保存
電子帳簿等保存とは、会計システムや請求書発行システムなどにより電子的に作成した帳簿書類をデータのまま保存すること。2022年1月1日より適用要件が緩和され、下記の最低3つの要件を満たすことで電子データ保存が認められるように法改正されました。

電子帳簿保存の最低限の要件
・システム関係書類などの備え付けていること。
・電子データを保存するシステムの操作マニュアルを保存しておきデータをすぐに出力できる状態にしておくこと(見読可能性の確保)。
・税務職員による電子データのダウンロードに対応していること。

② スキャナ保存
スキャナ保存とは、 紙で作成(請求書などの控え)受領(請求書など)した書類をスキャンし画像データとして保存すること。スキャナ保存の要件は書類によって異なり重要書類と一般書類に分類される。重要書類はより厳しい要件が定められている。

スキャナ保存の書類区分
・重要書類:契約書、領収書、請求書、納品書など資金や物の流れに直結・連動する書類
・一般書類:検収書、見積書、注文書など資金や物の流れに直結・連動しない書類

スキャナ保存は解像度や色の階調などの要件が細かく定められており要件を満たせばスマホやデジタルカメラを利用した保存も可能です。他の電子保存区分と比較して要件が多いため全ての要件の抜けがないよう細かく要件を確認する必要があります。

③ 電子取引
電子取引とは、 電子的に授受した取引データを電子のまま保存することです。電子取引は、対象となる書類が幅広いことが特徴です。電子取引に該当するものとして、インターネット通販やEDI取引、電子メールクラウドサービスなどが挙げられます。また、 電子取引に関する情報を書面に印刷して保存することは認められておらず電子取引にあたっては、以下の要件を満たす必要があります。

真実性の確保(4つのうち、いずれかの措置を行う)
・タイムスタンプを付けた後、取引情報の授受を行う
・取引情報の授受後、速やかにタイムスタンプを付け保存者または監督者に関する情報を確認できるようにする
・情報の訂正や削除を行った場合にその記録が残るシステムまたは訂正や削除ができないシステムで取引情報の授受や保存を行う
・訂正や削除を防止する規程を定めて運用を行う

可視性の確保
・保存場所に、パソコンやディスプレイ、プリンタなどの操作マニュアルを備え付け、整った形式や明瞭な表示で速やかに出力できるようにする
・処理システムの概要書を備え付ける
・検索機能を確保する
①取引年月日その他日付、取引金額、取引先について検索できる
②日付または金額の範囲指定により検索できる
③2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できる
※税務職員の質問検査権行使に基づくダウンロードの求めに応じる場合には②と③の検索要件は不要基準期間売上高が5,000万円以下の事業者は検索要件自体が不要。

電子取引について

冒頭でご説明した通り、今回は電子取引について焦点を当ててご説明したいと思います。

電子帳簿等保存やスキャナ保存に関しては今まで紙媒体だったものやパソコンで作成したデータを紙で印刷せずに電子で保存したい場合に必要になってくる要件の為自ら進んで電子化を行いたいという事業者の方以外は、実務上あまり影響が無いかと思いますが電子取引については令和6年1月1日より電子的に授受した取引データを電子のまま保存する必要があり、要件などを理解し準備を進める必要があります。

前述した通り電子取引を行った場合に電子のまま保存するためには真実性の確保(4つのうちどれか1つ)と可視性の確保の要件を満たす必要があります。真実性の確保に関しては4つのうちどの要件を満たすかは設備投資の有無やパソコン操作の得意不得意もあるでしょうが現状何の準備も出来ていないのであれば「訂正や削除を防止する規程を定めて運用を行う」が恐らく一番手間が少なく済むのではないかと思います。
本来であれば、授受した電子データには訂正や削除を行ってしまわないようにタイムスタンプの付与や訂正や削除を行った記録が残るシステムの導入が必要になりますが「訂正や削除を防止する規程を定めて運用を行う」ことによってタイムスタンプの付与やシステム導入を省くことができます。
この規定に関しては国税庁HPに雛形があるので、そちらを活用するのがいいかと思います。

可視性の確保に関しては上記のものから特に省略できる部分はありませんが検索機能を確保する事に関しては税務職員が電子取引データについてダウンロードを求めてきた際に応じる場合には検索要件が緩和されます。

宥恕措置について

改正電子帳簿保存法は2022年1月1日より施行されていますが電子保存に対応できていない企業も多かったため紙での保存も認める宥恕期間が設けられました。
宥恕期間は当初「2023年12月31日まで」となっておりその内容としては
・やむを得ない事情がある場合
・ダウンロードの求め・出力書面の提示又は提出に応じられる場合
この2つを条件に、2021年から2024年までの2年間は電磁的記録を紙に出力して保存することが認められるというものでしたが令和5年度税制大綱改正によってこの要件が電子帳簿保存法の本則に盛り込まれることになりました。

「やむを得ない事情」がどの程度までの事なのかや、本則に盛り込まれた事によって今までと同じように令和6年以降も紙で印刷してしまっても問題ないのかなどはハッキリ言及されていないので、安易に今までと変わらないと判断してしまうのは注意が必要かもしれません。
「ペーパーレス化を進めたい」など、自ら電子帳簿保存法に向かっていく方以外にも最低限の準備は進めていく必要があると思います。

記.名古屋事務所1課