2023/06/06

DES(デス)のメリットとデメリット

DES(デス)とは

DESとは、Debt Equity Swap(デッド・エクイティ・スワップ)の略称であり、その名のとおりDebt(借金、債務)とEquity(株式)をSwap(交換する)「債務の株式化」のことであり、金融機関が経営不振の取引先を支援する目的で使われたり、中小企業、特に同族企業の中には役員借入金を相続対策の為に使われたりする事があります。
では、役員借入金によるDESは法人税法上、どのような取扱いになるか見ていきましょう。税務上の考え方は、役員側から見ると、会社株式を得る代わりに会社に対する貸付金を会社に譲渡つまり出資したことになります。
また、この場合金銭ではなく、債権を譲渡したわけですから、現物出資に該当します。税務上、現物出資が行われた場合には、適格・非適格の判定が行われます。そして、この判定を行うとそもそも役員は法人ではありませんから、非適格現物出資に該当することになります。(適格・非適格判定については割愛します。)

ここで1点問題が発生します。
税務上、非適格現物出資を行った場合、現物出資した資産を出資時点で時価評価し、その時価評価額をもって出資を行ったとみなします。簡単に言うと、「外部にいったんその資産を売却し、その売却して入ってきた金銭をもって、出資を行ったとみなす」ということになります。この場合、財務状態が健全な(純資産がプラス)法人であれば債務金額=時価として特に問題はありません。しかし、そうではない法人の場合、出資時点ですべての資産を換金・売却しても債務を支払いきれないため、弁済能力を考えると債務金額=時価ではないのではないか?という疑問が生じます。
このことから平成18年度税制改正により、その時価評価した金額と債務金額との差額については債務消滅(免除)益として課税対象となりました。よって特に債務超過の法人については、DESをする際に注意・検討が必要となります。

また、2つ目の注意点として、みなし贈与の発生があります。こちらは、株主が複数いる場合、または出資によって株主が複数になる場合に注意が必要となります。株主を出資者1人にするか、または、1株当たりの株価を算定し適正な価格をもって、出資を行う必要があります。また、非上場株式の株価算定にあたっては、非常に計算が複雑となります。

DESによるメリット・デメリット

DESを行うメリットは、債務者(法人) 財務状態の改善、企業価値の上昇、その債務についての元本返済・利息の支払義務がなくなる。債権者(役員) 相続対策となる可能性が有ります。DESを行うデメリットは、債務者(法人) 資本金の増加により地方税(外形標準・均等割)などの税負担の増加及び債権者(役員) 債権から株式に変換されるため、法律上の弁済順位が下がる、利息収入がなくなるなどが考えられます。

DESによる相続対策メリット

役員借入金DESを行う上で最も大きなメリットと言えるのは、やはり相続税の節税効果ではないでしょうか。

オーナーが多額の法人に対する貸付金を持ったまま亡くなった場合、その貸付金は相続財産となり通常であれば債権金額で評価され、そこに相続税が課されます。しかし、その貸付金が株式に代わっていた場合、非上場株式を算定する際に評価金額が下がることが多く(類似業種比準価格等)、また事業承継税制の適用の可能性もあります。
また、相続人の中に会社の経営に参加していない相続人がいる場合ですが、そもそも貸付金を現金で回収可能であるのにわざわざ債務と株式を交換して貸付金を株式に交換してしまうのは、会社の経営者側の考えであり、第三者からすれば許せない行為かもしれません。

まとめ

会社役員(特にオーナー役員)が会社への貸付金が膨らんできた際に、相続税対策としてよく検討される役員借入金のDESです。
メリットが非常に大きい分、実行する際にはさまざまな注意点があり、専門家への相談は必須と言えるでしょう。

記.名古屋事務所2課