2023/05/24

控除対象外消費税額等について

控除対象外消費税額とは

控除対象外消費税額(以下控除対象外消費税)は、消費税の計算において支払った消費税が全額控除できないケースに生じる読んで字のごとく「控除できない消費税額」のことです。
消費税の会計処理方法が税抜経理方式を採用し、かつ、課税期間中の課税売上高が5億円超または課税売上割合(※)が95%未満の場合に生じます。

※課税売上割合とは・・・
その課税期間の課税売上高(税抜)(*1)÷その課税期間の総売上高(税抜)(*2)
*1 課税売上高とは、国内における課税資産の譲渡等の対価の額の合計額をいいます。
これには、輸出による免税売上高が含まれます。
*2 総売上高とは、国内における資産の譲渡等の対価の合計額をいいます(課税売上高と非課税売上高の合計額となります)。

控除対象外消費税は、「法人税法上」または「所得税法上」、次の方法により「損金」または「必要経費」に算入します。

控除対象外消費税の処理方法

資産に係る控除対象外消費税

資産に係る控除対象外消費税は、次のいずれかの方法によって、損金の額または必要経費に算入します。

(1)その資産の取得価額に算入し、それ以後の事業年度または年分において償却費などとする方法。
(2)以下の①~③のいずれかに該当する場合には、法人税法上は、損金経理を要件としてその事業年度の損金の額に算入し、所得税法上は、全額をその年分の必要経費に算入します。
①その事業年度または年分の課税売上割合が80%以上であること。
②棚卸資産に係る控除対象外消費税であること。
③一の資産に係る控除対象外消費税が20万円未満であること。

(3)上記に該当しない場合には、「繰延消費税額等」として資産計上し、次に掲げる方法によって損金の額または必要経費に算入します。
①法人税
繰延消費税額等を60で除し、これにその事業年度の月数を乗じて計算した金額の範囲内で、その法人が損金経理した金額を損金の額に算入します。なお、その資産を取得した事業年度においては、上記によって計算した金額の2分の1に相当する金額の範囲内で、その法人が損金経理した金額を損金の額に算入します。

②所得税
繰延消費税額等を60で除し、これにその年において事業所得等を生ずべき業務を行っていた期間の月数を乗じて計算した金額を必要経費に算入します。なお、その資産を取得した年分においては、上記によって計算した金額の2分の1に相当する金額を必要経費の額に算入します。

「繰延消費税額等」として処理した場合には、当該資産を売却又は除却した場合であっても、引き続き一定額の償却を続けることになります。つまり、「繰延消費税額等」として処理した場合には、最初の1期目が2分の1償却であり、除却等を行ってもその期で処分できないことから、償却が終わるまで最低でも6期分はかかることになるわけですね。

資産以外に係る控除対象外消費税

資産以外に係る控除対象外消費税は、次に掲げる方法によって損金の額または必要経費に算入します。

(1)法人税
全額をその事業年度の損金の額に算入します。ただし、交際費等に係る控除対象外消費税額等に相当する金額は交際費等の額に加算して、交際費等の損金不算入額を計算します。

(2)所得税
全額をその年分の必要経費に算入します。

居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度の適正化

令和2年4月以降、事業者が、国内において行う「居住用賃貸建物」に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象としないこととなっています。詳しい説明は省きますが、金地金等の売買を繰り返し、課税売上割合を意図的に高め、一括比例配分方式を採用することにより、多額の還付金を受けるというスキームを封じるための措置ですね。
なお、この適用を受けた「居住用賃貸建物」について、次のいずれかに該当する場合には、仕入控除税額を調整することになっています。

①第三年度の課税期間(※)の末日にその居住用賃貸建物を有しており、かつ、その居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間(※)に課税賃貸用に供した場合
※第三年度の課税期間とは・・・居住用賃貸建物の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間をいいます。
※調整期間とは・・・居住用賃貸建物の仕入れ等の日から第三年度の課税期間の末日までの間をいいます。
 
②その居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間に他の者に譲渡した場合

「居住用賃貸建物」については、税抜経理方式を採用し、かつ、課税期間中の課税売上高が5億円超えまたは課税売上割合が95%未満の場合は、控除対象外消費税も関係すること
になりますね。当該調整については消費税の調整だけでなく、法人税または所得税においても調整した消費税分を利益として計上する必要があります。

記.名古屋事務所1課