2023/05/17

企業の組織再編・合併につて

組織再編とは

まず、組織再編についてですが、一般的には法人の組織や形態の変更を行い、法人の利益体質の改善や事業運営の効率化など法人グループの収益力の向上を目的として法人内の組織を編成し直すことです。

具体的には、2つの法人を1つの法人にすることや1つの法人内の複数の事業の一部あるいは全部を別の法人へ移したり、他法人の株主が所有する株式と自社の株式と交換し子会社化するなどがあります。

組織再編の代表的な手法には、①合併②会社分割③株式交換④株式移転がありますが、今回のテーマである①合併について説明させていただきます。

組織再編(合併)

合併とは、別々の法人が1つの法人に合体することであり、合併により消滅する法人を被合併法人といい、合併後も存続する法人を合併法人といいます。
合併は以下の2種類分類されます。

吸収合併・・・既に存在する法人の一方を合併法人(存続)、他方を被合併法人(消滅)とする合併のことです。

新設合併・・・既に存在する2以上の法人が被合併法人(消滅)、新たに設立する法人が合併法人(存続)とする合併のことです。

実務上、一般的に新設合併よりも吸収合併が主に活用されているようです。これは、新設合併より吸収合併の方が手間とコストがかからないことが理由になると思われます。新設合併の場合は、許認可や免許が引き継がれませんのですべて新規で取り直しになりますが、吸収合併の場合は、許認可や免許が引き継がれます。また、登録免許税についても新設合併の場合、資本金の額に対して課税されますが、吸収合併については資本金の増加額に対して登録免許税が課税されます。

さらに、吸収合併の場合は、合併の対価として現金の受け渡しも可能なため、株式を発行せずに合併手続きをすることができます。

組織再編(合併)のメリットデメリット

合併の手法は先ほどのご説明させて頂いた様に2通りありますが、メリットとしては、下記のとおりになります。

合併のメリット

合併のメリットは各法人間では共有出来ていなかった情報や連携がひとつの組織で一体化しやすくなりますし、競合他社同士が合併すれば仕入コストの削減や価格競争がなくなる分利益確保がしやすくなります。
また、経営統合することにより組織の再編成と人員の再配置により機能的かつ合理的な組織体制に変えられますし、異なる組織の企業文化の融合による従業員の意識向上やシナジー効果を得られるのがメリットと言えます。

対外的に言えば、法人の組織規模が大きくなり、財務的な信用が増加します。後継者が不在の場合、合併により後継者問題を解消し事業承継も可能です。
また合併をすると法人格が一つに統合されるので損益通算が可能となり、黒字法人は節税効果、赤字法人は損失補填などが可能になります。また、一定の要件を満たせば被合併法人が抱えている繰越欠損金(過去の累計赤字)を合併法人にて引き継ぐことが出来る場合もあります。
あと、合併をした結果として法人オーナーの相続税対策になることもあります。上記にように黒字法人と赤字法人の相殺によって全体の評価額が下がったり、法人の組織規模の変更により株価計算の方法が変わることにより、株価が下がり税金が少なくなることもあります。

グループ法人の場合、合併によりグループ法人間の資金のやりとりが無くなるため、グループ法人間の取引においての手間や税務リスク(例えば、グループ法人間の経費負担金や給与負担金の漏れ、グループ法人間取引の取引価格の不均衡など)も解消されます。

合併のデメリット

合併のデメリットは、規模が小さい会社同士でもコストが掛かります。また、社内的には合併によって多くの事務負担や業務フローの変更が出てきますので、周到な準備が必要になります。
あと、メリットにも上げた異なる組織の企業文化の融合による従業員の意識向上やシナジー効果を得られることが逆に作用する可能性も否定できません。吸収合併の場合、被合併法人の従業員(特に長年勤め上げてきた従業員)にしてみれば、合併により自社が消滅することになりますので、愛社精神が強い従業員は特に精神的ストレスがかかると思われます。
また、違う企業文化を受け入れる柔軟性を持ち合わせていない従業員についても、過度なストレスがかかると思われます。そのため、双方の従業員に対して合併することにより本人達が受けれる恩恵について正しく伝えていく必要があります。

尚、合併による組織拡大に伴い機動力の鈍化、責任の所在の曖昧さも出てくる可能性もありますので、合併計画の中で組織図を作成するなど周到な準備が必要です。

まとめ

今回は主に組織再編の中の合併についての概要と手法をお伝えさせて頂きました。大手企業間だけではなく、中小企業間においての合併も徐々に増えてきていますが、法務・労務・税務など事前準備が多くありますので、綿密なスケジューリングが必要です。

税制面については適格合併・非適格合併により課税上の取り扱いが大きく変わってきます。また、合併に伴い被合併法人の株主に対する対価の支払いのために企業価値の算定や合併法人の株式交付のために合併比率の算定が必要になってきます。
この企業価値の算定や合併比率が不均衡だと税務上の課税リスクが発生する可能性があります。

組織再編(合併)の税務については次の機会に取り上げていこうと思います。

記.名古屋事務所2課