2023/02/14

令和5年度税制改正の届出書について

個人事業者の届出書の一括化・簡素化

個人で事業を開始した際には税務署に開業届を提出する必要があります。
開業届の他にも開業時に提出しておくべき届出がいくつかありますが、大綱ではこれらの届出書の内容を簡素化することが記載されています。 

【大綱より抜粋】
個人事業者がその事業を開始し、又は廃止した場合に行う届出書等の提出を一括で行えるよう、次の見直しを行う。

① 個人事業の開業・廃業等届出書について、その提出期限をその事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限とするとともに、事務所等を移転する場合のその提出先を納税地の所轄税務署長とするほか、記載事項の簡素化を行う。

② 青色申告書による申告をやめる旨の届出書について、その提出期限をその申告をやめようとする年分の確定申告期限とするとともに、記載事項の簡素化を行う。

③ 次に掲げる届出書等について、記載事項の簡素化を行う。
イ 納期の特例に関する承認の申請書
ロ 青色申告承認申請書及び青色専従者給与に関する届出書
ハ 給与等の支払をする事務所の開設等の届出書

(注)①の改正は令和9年1月1日以後の事業の開始等について、
②の改正は令和8年分以後の所得税について、
③イの改正は令和9年1月分以後の承認申請について、
③ロの改正は令和9年分以後の所得税について、
③ハの改正は令和9年1月1日以後の事務所の開設等について、
それぞれ適用する。

開業届の提出期限が開業2ヶ月以内で、確定申告書の提出期限が翌年3月15日であったため、別々に提出する必要がありますが、今回の改正により提出時期の一括が可能となりそうです。
また記載事項の簡素化により複数届出書の統合など、届出書の一括化が期待できます。

給与所得者の届出書の簡略化・デジタル化促進

開業後、従業員を雇用すると給与関係の書類の提出を受けて保管したり、書類を作成して交付する必要があります。

代表的なものが次の3つで、それぞれ変更が予定されています。
・扶養控除等申告書 (いわゆる「マル扶」です。)
・保険料控除申告書 (いわゆる「マル保」です。)
・源泉徴収票 

各帳票ごとに検討されている変更事項などをお伝えします。

(1)扶養控除等申告書

【大綱より抜粋】
その申告書に記載すべき事項がその年の前年の申告内容と異動がない場合には、その記載すべき事項の記載に代えて、その異動がない旨の記載によることができることとする。
(注)令和7年1月1日以後に支払を受けるべき給与等について提出する申告書について適用する。

今までは扶養家族の情報を毎年記入する必要がありましたが、今後は無くなりそうです。  

(2)保険料控除申告書

【大綱より抜粋】
次に掲げる事項の記載を要しないこととする。
① 申告者が生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合のこれらの者の申告者との続柄
② 生命保険料控除の対象となる支払保険料等に係る保険金等の受取人の申告者との続柄
(注)令和6年10月1日以後に提出する申告書について適用する。

他にも控除額計算に影響がなく記載不要とできそうな箇所がありますが、今回の改正では続柄欄に限られるようです。

(3)源泉徴収票 

交付方法の変更推進(デジタル化促進)です。

【大綱より抜粋】
給与所得の源泉徴収票又は給与支払明細書の交付に代えてその源泉徴収票又は給与支払明細書に記載すべき事項を電磁的方法により提供するための要件であるその支払を受ける者の承諾手続に、その支払を受ける者に対し期限を定めてその承諾を求め、その支払を受ける者がその期限までにこれを拒否する旨の回答をしない場合には、その支払をする者はその承諾を得たものとみなす方法を加える。 

簡単にまとめると次の内容となります。
  
源泉徴収票のデジタル交付
今まで  : 了承した人のみ
これから : 了承した人+期限内に拒否しなかった人
(期限内に拒否した人を除いた全ての人)

電磁的方法による提供(デジタル交付)とは、例えば専用のWebページにアクセスし、各自がダウンロードして帳票を取得するなどの方法です。

デジタル交付により受渡や再発行の手間、受渡漏れや紛失のリスクを低減できるため、今後はこの方法が主流になっていくと予測しています。

必要な届出を期限までに

令和5年税制改正大綱において簡素化・簡略化が予定されている届出などを記載しましたが、他にも簡素化・簡略化できるものはあると思います。

他の届出にもこのような取り組みが拡大することを期待しています。
ただ、いくら届出の書式が簡素化・簡略化されても、納税者にとって必要な届出が何か分からないと意味がありません。
必要な届出には税務の他にも社会保険に関する届出など多種多数あります。期限までに提出するにはご自身で調べて関係機関に問い合わせを行ったり、専門家等に確認することが重要かと存じます。 

先に青色申告承認申請書を挙げていますが、青色申告制度は種々の特典のある制度ですので、個人事業者で未提出の方がおられましたら内容ご確認のうえ提出をご検討下さい。

個人事業者の提出期限はその年3月15日です。
(その年1月16日以後新たに業務を開始した場合には、その業務を開始した日から2月以内です。)
(事業を相続により継承した場合は別途規定があります。)
 
国税庁タックスアンサー 青色申告制度
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm

記.大阪事務所1課