2023/02/06

資産税関係の改正について

資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築

令和5年度の税制改正大綱の基本的な考え方は、我が国は高齢化に伴い、高齢世代に資産が偏るという状態になっています。これはひとえに贈与税が相続税の累進課税負担の回避を防止する観点から、相続税より高い税率となっており、生前にまとまった財産を贈与しにくい点にあります。
その結果いわゆる「老老相続」の状態になり、財産を譲り受けた段階で既に高齢となり、有効な資産の活用が行われていないのです。その為早いタイミングで若年世代へ財産を移転し、有効活用による経済の活性化が期待されています。しかし他方では相続税がかかる方の中でも相続財産が多く、高い税率が適用される一部の方にとっては、財産を生前に贈与して、相続税より低い税率を適用している状況となっています。

これらを踏まえ、資産の再分配機能の確保を図りつつ、資産の早期の世代間移転を促進する観点から、生前贈与でも相続でもニーズに即した資産の移転が行われるよう、諸外国の制度も参考にしつつ、資産移転の時期の選択により中立的な税制を構築していく必要があるという見地から税制改正が行われています。

相続時精算課税の使い勝手の向上

生前に財産を移転しやすくする為に、相続時精算課税の改正が行われます。

相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母などの直系尊属から、18歳(令和4年3月31日以前の贈与については「20歳」)以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。ただしこの制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用されます。
控除額は2,500万円までは非課税となっており、超えた場合一律20%で課税されます。また、父母または祖父母などが亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額を加算して相続税額を計算します。

改正点
(1)基礎控除額の創設
相続時精算課税制度において、毎年110万円の基礎控除が設定され、110万円以下の贈与については申告も不要で、相続税の計算においても加算する必要がありません。

(2)相続時の再計算
相続時精算課税は贈与時の時価で相続税の計算の時に加算しますが、災害による場合は相続税の計算の時に再計算するという事です。

これにより生前にまとまった財産を贈与しにくかった者も、相続時精算課税を選択後も新たな基礎控除を活用することにより、若年層へ資産の移転をしやすくすることになります。

教育資金の一括贈与と結婚・子育て資金の贈与

贈与税の制度には、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置と結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置があり、どちらもその制度の利用が減少している為、本来廃止されるはずでしたが、延長という事になりました。

「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」とは、30歳未満の受贈者(孫など)が直系尊属(祖父母など)から教育資金の贈与を受けた場合、受贈者1人あたり最大1,500万円までが非課税となります。 教育費は入学金、授業料のほか、学校の寮費、通学交通費、修学旅行代や給食費も含まれます。

改正点
(1) 適用期限の延長
適用期限が3年延長されました。

(2) 相続財産5億円を超える者の管理残高への相続税課税贈与者が死亡した場合において、贈与者の相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは、受贈者が23歳未満である場合等であっても、教育資金の管理残高(非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額)を相続税の課税対象とします。

(3) 管理残高への贈与税課税
受贈者が30歳に達した場合等において、管理残高に贈与税が課税されるときには、贈与税の一般税率を適用します。

「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税に非課税措置」とは子や孫のための資金の拠出について、父母や祖父母などの直系尊属から20歳以上(令和4年以降18歳以上)50歳未満の子や孫のために、結婚や出産または育児に要する資金を一括で贈与した場合、1,000万円まで贈与税が非課税となる制度です。

1.改正点
(1)適用期限の延長
適用期限が2年延長されました。

(2) 管理残高への贈与税課税
受贈者が50歳に達した場合等において、管理残高に贈与税が課税されるときには、贈与税の一般税率を適用します。

記.大阪業務1課