2022/12/27

在宅勤務時の交通費にご注意

通勤手当について

役員や使用人などの給与所得者に対して通常の給与に加算して支給する通勤手当は、一定の限度額まで所得税が非課税となっています。
交通機関を利用した交通費※(通勤手当)については、1か月当たり15万円までは非課税となり、15万円を超える部分の金額が給与として課税されます。
通常の在来線やバスでの通勤であれば15万円を超えることは多くないと思いますが、在宅勤務の普及により、遠方に引越しした方も増え、新幹線や飛行機で出社することがあるかもしれません。ご自宅の場所や交通手段によっては、週に1回程度の出社でも、15万円を超えることも考えられます。
この超えた分の交通費は、通常は給与として課税されると考えられますが、一定の要件を満たすと、1か月当たりの金額が15万円を超えても、給与として課税されないこととなります。
給与として課税されるかどうかについて、次項で詳しく確認していきます。
※交通費については、通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合で金額を計算します。

給与として課税される場合とされない場合

給与として課税されるかどうかは、従業員の労務の提供地によって取扱いが変わるので、注意が必要です。
通勤手当の取扱いと非課税限度額については先に記載した通りですが、一方で、給与所得を有する者が「勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行」をし、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるものについては非課税となります。
言い換えると、「出張費の精算」となる場合、交通費全額が給与課税されないことになります。

テレワーク時の自宅と本社等間の移動が「勤務する場所を離れてその職務を遂行するための旅行」に該当するかについては、従業員等の労務の提供地によって判断が異なります。
労務の提供地については、労働契約(労働契約で明確になっていない場合はその他勤務地を定める書類など)における場所で判断することになります。
労務の提供地が自宅の場合は、下記の要件を満たせば、「勤務する場所を離れてその職務を遂行するための旅行」に該当することになります。

・旅費規程等に基づき実費精算していること
・別途通勤手当の支給を受けていないこと

この場合、交通費の全額が給与として課税されないこととなります。

労務の提供地が本社等の場合は、「勤務する場所を離れてその職務を遂行するための旅行」には該当しない為、通勤手当の規定に基づき、15万円を超えた金額が給与として課税されることになります。
ただし、労働契約上の労務の提供地が自宅でない場合でも、実態がどのようになっているかで判断が必要になりますので、担当の税理士や所轄の税務署等にご確認下さい。

交通費と社会保険料

社会保険料の算定基礎となる「報酬」については、通常出社する場合の通勤手当は報酬に含まれますが、こちらも労務の提供地によって以下のように違いがあります。

①労働契約上の労務の提供地が自宅の場合
労働契約上、当該労働日の労務提供地が自宅とされており、業務命令により事業所等に一時的に出社し、その移動にかかる実費を事業主が負担する場合、出張費の精算と同様に考えられる為、「報酬等」には含まれません。

②労働契約上の労務の提供地が事業所とされている場合
当該労働日は事業所での勤務となっていることから、自宅から当該事業所に出社するために要した費用を事業主が負担する場合、通常出社する場合の通勤手当と考えられる為、原則として「報酬等」に含まれます。

所得税同様に、実態がどのようになっているかで判断が必要になりますので、詳しくは専門家へご相談ください。

このように、在宅勤務を導入している企業は所得税だけでなく、社会保険料についても、注意が必要です。

働き方の多様化が進んでいる今、企業ごとの状況に応じたルールを定め就業規則に規定しておく等、労働契約の確認や見直しをされてはいかがでしょうか。

記.東京業務1課