2022/11/09

年末調整手続の電子化

年末調整とは

まずは年末調整とは何なのか簡単にご説明させて頂きます。
年末調整という言葉自体はよく耳にしますが実際何を行っているのか改めて考えると意外に答えられないものです。
年末調整は、企業が従業員に対して支払った給料から徴収される「所得税」の過不足金を調整(清算)するための手続きです。従業員の給与や賞与から所得税を徴収することを「源泉徴収」といい、本来の所得税の総額をその年の給与総額から再計算して、実際に徴収している源泉徴収額との差額を徴収又は還付し清算する手続きの事です。

詳しくはこちら
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index.htm

年末調整手続の電子化の概要・メリット

これまでの年末調整手続

1 従業員(給与等の支払を受ける方)が、保険会社、金融機関、税務署等(以下「保険会社等」といいます。)から控除証明書等を書面(ハガキ等)で受領。
2 従業員が、保険料控除申告書又は住宅ローン控除申告書に、1で受領した書面(ハガキ等)に記載された内容を転記の上、控除額を計算し記入。
3 従業員が保険料控除申告書及び住宅ローン控除申告書など、年末調整の際に作成する各種申告書(以下「年末調整申告書」といいます。)を作成し、控除証明書等とともに勤務先(給与等の支払者)に提出。
4 勤務先が提出された年末調整申告書に記載された控除額の検算、控除証明書等の確認を行った上で、年税額を計算。

記載方法がわからず住所や生年月日の記入だけにとどまり、後は会社の事務員さんか税理士事務所の方でお任せの方が大多数だと思います。(証明書等は別途添付)

年末調整令和4年版の各種申告書・記載例はこちら
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/shinkokusyo/index.htm

年末調整手続が電子化

1 従業員が、保険会社等から控除証明書等を電子データで受領。
2 従業員が、国税庁ホームページ等からダウンロードした年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(※)に、住所・氏名等の基礎項目を入力し、1で受領した電子データをインポート(自動入力、控除額の自動計算)して年末調整申告書の電子データを作成。
3 従業員が、2の年末調整申告書データ及び1の控除証明書等データを勤務先に提供。
4 勤務先が、3で提供された電子データを給与システム等にインポートして年税額を計算。 

上記比較をもとに年末調整手続の電子化によるメリットをご説明させて頂きます。

(従業員側のメリット)
これまでの手書きによる手続(年末調整申告書の記入、控除額の計算など)を省略でき年末調整申告書の簡素化できます。つまり国税庁ホームページ等からダウンロードした年末調整控除申告書作成用ソフトウェアの活用で通勤時間に提出書類をスマートフォンなどから作成でき、提出の遅滞や書類紛失のリスクも回避できます。

(勤務先のメリット)
勤務先は、従業員が年調ソフトで作成した年末調整申告書データを利用することにより控除額の検算が不要となります。また、控除証明書等データを利用した場合、添付書類等の確認に要する事務が削減されます。さらに、従業員が年末調整申告書作成用のソフトウェアを利用して控除申告書を作成するため、記載誤り等が減少し、従業員への問合せ事務も減少することが期待されます。加えて、書面による年末調整の場合の書類保管コストも削減することができます。

電子化への初めの一歩

では年末調整手続きの電子化に向けてどうしたらよいのかを具体的にご説明させて頂きます。

年末調整の電子化を実施するに当たり、従業員が使用する年末調整申告書作成用のソフトウェアについてどのソフトウェアを使用するか、電子化後の年末調整手続の事務手順をどうするかなどを検討します。

国税庁から提供する年調ソフトはこちら
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/nencho.htm#soft_dl

従業員から年末調整申告書を電子データにより提供を受けるに当たり、法令上は事前に従業員から同意を得る必要はありません。しかし、電子化に当たっては、従業員においても、保険会社等から控除証明書等データを取得するための手続など、事前準備が必要となることから、電子化する際には従業員への早期の周知が必要となります。

詳しくはこちら
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/nencho_02.htm

まとめ

年末調整手続の電子化については、大企業においては独自のシステムなどにより、給料計算ソフトと連動して年末調整事務の煩雑さの解消が行われていると思いますが、中小企業においては未だに事務員さんの残業や他の専門家に委託しているのが現状だと思われます。この点を踏まえると国税庁による年末調整作成ソフトウェアは非常にありがたい存在であり、民間の給料計算ソフトにデータインポートできる仕様となっている点においても非常に優秀です。
しかし問題は企業側の事務の電子化の遅れと従業員側の税金に対する知識及び電子化のデータ取得方法の周知が中小企業ほど難しい点に尽きると思います。
とは言えIT化の波は今後衰えることはなくマイナポータル利用により電子データの一括取得も着々と進んでいるのが現状であり、IT化の波に国民のすべてが乗れるようマイナポイントの付与よりも電子データの取得や運用の仕方の周知を国民に向けて行う事が大切だと思います。

記.名古屋業務2課