2022/11/01

年収別の扶養の壁

年収○○万円の壁

皆さん、「年収○○万円の壁」という言葉をお聞きしたことあるでしょうか。
この金額は税金や社会保険料などを支払わなくてもいいボーダーラインを意味します。以前は103万円の税金の壁と130万円の社会保険の壁2つだけを把握しておけば税金のかからない範囲内で働くことができました。
しかし近年は税制や社会保険制度の改正により税金・社会保険の壁が追加されてしまいました。様々な控除を受けるため扶養内で働きたい方にとっては、所得税の発生や社会保険の加入義務など、さまざまな年収の壁を知ることは重要でしょう。年収や扶養関係は様々なケースがあるかと思いますが、
今回は夫が正社員として働き、妻がパートとして働く場合の様々な年収の壁を紹介したいと思います。

そもそも扶養内とは何か?

扶養とは自分一人の力で生活することが難しいため、家族や親族から経済的な援助を行うことです。収入や働き方などの条件を満たせば配偶者等の親族を扶養に入れることができ、税金や社会保険料の控除を扶養者は受けられます。一般的に扶養という言葉は「扶養に入る」「扶養内で働く」というように使われます。
扶養内で働くとは「扶養控除が受けられる範囲の中で働く」を意味し、扶養控除の範囲内で働くことによって、税金を計算する上でさまざまな控除を扶養者は受けることができます。
そして扶養控除には「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2つがあり、どちらも控除の対象ですが、制度としては別物なので注意が必要です。
収入によって両方の扶養に入ることができるのか、どちらか一方に入れるのか、両方とも入れないのかなど変わってきます。

税法上の扶養

税法上の扶養とは、所得税法上の扶養控除や配偶者控除・配偶者特別控除に関するものです。
税法上の扶養でポイントとなるのは、年収103万円と年収150万円、201万円となります。
妻のパート年収が103万円以下であればご自身の所得税はかかりません。
妻のパート年収が150万円以下であれば夫は配偶者控除又は配偶者特別控除により
最大38万円の控除を受けることができます。
妻のパート年収が150万円を超えてしまうと配偶者特別控除が段階的に減少してしまい、年収201万円を超えてしまうと配偶者特別控除を受けることができなくなってしまいます。
また、夫の所得が900万円を超える場合は段階的に配偶者控除・配偶者特別控除の控除額が減少していき、所得1,000万円を超えると配偶者控除・配偶者特別控除を受けることはできないのでご注意ください。

社会保険上の扶養とは

社会保険上の扶養とは健康保険や年金などに関するもので、扶養対象者となれば自身で健康保険や年金保険料を支払う必要がありません。
社会保険上の扶養では年収106万円と130万円がポイントとなります。
妻のパート年収が130万円以上になりますと、社会保険上の扶養から外れてしまい、ご自身で社会保険料を自身で負担することとなります。
妻のパート年収が130万円未満であっても、下記の要件に当てはまる場合には年収が106万円以上で社会保険上の扶養から外れてしまい社会保険料を自身で負担することとなります。
<要件>
1.所定労働時間が週20時間以上(残業は除く)
2.雇用期間が2カ月以上見込まれる
3.学生ではない
4.従業員数が101人以上の企業
※4の101人以上の要件については、2024年には「従業員が51人以上の企業」に変更される予定であるため106万円を超えて加入要件に該当する人は益々増えていくと予想されます。

年収別の扶養の壁について

上記では税制上の扶養と社会保険上の扶養について簡単に説明しました。
2種類の扶養制度が混在しているため、混乱される方も多いかと思います。
扶養についてわかりやすくするため、税金や社会保険に関係する壁を年収別にまとめてみました。

103万円の壁

103万円の壁は、給与所得者本人の所得税の支払い義務が生じるボーダーラインです。
103万円以下であれば本人の所得税の支払い義務は発生せず、その配偶者は38万円の所得控除が適用できます。
扶養者の所得が900万円超になりますと配偶者控除・配偶者特別控除が38万円から段階的に減少し、所得が1,000万円超になりますと配偶者控除・配偶者特別控除を受けることができなくなりますのでご注意下さい。

年収106万円の壁

年収106万円を超え上記のとおり勤務条件等の一定の要件を満たす場合は、社会保険の扶養範囲外となり自分で社会保険料を納める必要がでてきます。

年収130万円の壁

年収130万円を超えると、勤務条件等の一定の要件に関係なく社会保険の扶養範囲外となり自身で社会保険を納める必要がでてきます。

年収150万円の壁

年収150万円を超えると、社会保険上の扶養から外れるだけでなく、配偶者特別控除額が徐々に減少していきます。
配偶者特別控除は年収150万円までは控除額を満額(38万円)受けることができますが、150万円を超えると段階的に減少していき、201万円を超えると配偶者特別控除を受けることができなくなってしまいます。

住民税の年収100万円の壁

補足として、上記の「所得税」と「社会保険」の壁の他に「住民税」の支払い義務が発生する年収100万円の壁というものもあります。
住民税は居住している地域の自治体により、93万円~100万円の範囲で変動がありますので
詳しいボーダーラインを知りたい方は確認が必要となります。
住民税については100万円を少し超えてしまった場合でも、支払いが7,000円程度であることから、あまり重要視されておらず初めて聞いた方も多いかもしれません。
年収103万円以内に抑えたのに税金がかかってしまったと驚かれないためにも補足として把握しておくといいでしょう。

まとめ

扶養内で働く場合、年末が近づくにつれて、勤務日数や時間を調整しながら働かれる方も多いかと思います。
今年は10月より大幅な最低賃金の上昇もあり、うっかり想定していた年収をオーバーしてしまわないように気をつけましょう。
こちらの記事を読んで税金と社会保険の年収別の扶養の壁を把握し、自分や家庭において最適な働き方を見つけて頂ければ幸いです。

記.名古屋業務2課