2022/10/19

補助金による固定資産の取得

国庫補助金等で取得をした固定資産の圧縮記帳

圧縮記帳による経理を行うための要件と国庫補助金等について記載をいたしましたのでご確認ください。

①圧縮記帳の要件
・清算中の法人でないこと。
・国庫補助金等の交付を受けること。
・交付事業年度末までにその国庫補助金等の返還不要が確定したこと。
・交付事業年度に交付目的に適合した固定資産の取得又は改良をしたこと。
・経理方法として、次のいずれかの方法によること
イ.帳簿価額を損金経理により減額する方法<直接控除方式>
ロ.確定した決算において積立金として積み立てる方法<間接控除方式>
ハ. 剰余金の処分により積立金として積み立てる方法<積立金方式>
・確定申告書に圧縮額の損金算入に関する明細書の添付が必要。

②国庫補助金等の範囲
・固定資産の取得又は改良に充てるための国又は地方公共団体の補助金等で限定列挙されたもの
・補助金は金銭だけでなく、土地、その他の固定資産の現物交付も含まれる。
また、地方公共団体から低額で取得した土地等の時価との差額も国庫補助金等となる。
そしてその差額は同時に圧縮記帳したものとして取り扱われる。(注1)

(注1)時価500万円の土地を300万円で市町村から譲渡された場合
仕訳例
(土 地) 500万円 / (現預金)  300万円
            / (補助金収入)200万円
(圧縮損) 200万円 / (土 地)  200万円

課税の繰り延べとは

圧縮記帳が法人税額の減免ではなく課税の繰り延べと言われる理由は以下のとおりです。

補助金の給付を受けて支給要件を満たす建物を建築した場合。(直接控除方式による)
建物1,000万円の建築にあたり700万円の補助金を取得した場合。

仕訳例 
(建 物)1,000万円 /(現預金) 1,000万円
(現預金)  700万円 /(補助金収入) 700万円
(圧縮損)  700万円 /(建 物)   700万円

補助金収入700万円が圧縮損700万円と両建てとなるので損益計算はプラスマイナス0円となります。
これだけでしたら法人税は課税されず課税の繰り延べではなく課税の減免になります。 
 
次に今後の減価償却費の計算を考えます。
建物の帳簿価額は300万円となっています。
建物の法定耐用年数が20年であるとすると300万円÷20年で年間の減価償却額は15万円です。
圧縮損の計上がなかった場合には、1,000万円÷20年=50万円となり年間35万円の償却費が少なく計算されることにより20年間で700万円の補助金に対する課税が取り戻されることになる訳です。

固定資産取得と国庫補助金等の取得事業年度が異なる場合

①固定資産取得後の国庫補助金等の交付決定を受けた場合

固定資産を取得した後に国庫補助金等の交付が決定した場合に圧縮記帳を適用できるか否かの判断ですが固定資産の取得後、これに適合する国庫補助金等の交付を受ける場合には法人税基本通達上において示されております。

具体的な取扱いは、固定資産を取得した事業年度(1年目)はその取得価額によって減価償却費を計算します。

固定資産の取得価額 1,000万円 
耐用年数 20年 (償却率 0.05)
国庫補助金の額 700万円 

1年目 期首に取得
(建 物)1,000万円 /(現預金)1,000万円
(減価償却費) 50万円 /(建 物)   50万円

国庫補助金等の交付を受けた事業年度(2年目)において、その固定資産の取得価額に対して圧縮記帳を適用しますが、その際には圧縮限度額の調整を行なうことになります。

2年目
(現預金) 700万円 /(補助金収入)700万円
※1(圧縮損) 665万円 /(建 物)  665万円
※2(減価償却費)15万円 /(建 物)   15万円

※1(1,000万円-50万円)× 700万円 ÷1,000万円=665万円
取得価額  初年度償却費  補助金の額  取得価額
※2(1,000万円-700万円)×0.05 =15万円
取得価額   補助金の額  償却率  2年以降償却費

②補助金交付の翌事業年度に固定資産を取得した場合
補助金等の交付決定等があった事業年度に資産の取得等が間に合わずその翌事業年度以後に固定資産の取得等があった場合には、その補助金等の交付決定等があった事業年度においては本来収入として計上すべきところを仮勘定として経理処を行い資産の取得等があった事業年度にその仮勘定を取り崩し収入として計上して圧縮記帳の適用を受けることができます。

固定資産の取得価額 1,000万円 
耐用年数 20年 (償却率 0.05)
国庫補助金の額 700万円 

1年目
(現預金) 700万円 /(補助金収入) 700万円
(圧縮特別勘定繰入)700万円 /(圧縮特別勘定)700万円
受取った補助金に対して圧縮特別勘定を設けて700万円の繰入(損金)を行い補助金収入700万円に対する課税を繰り延べています。

2年目 翌期首に取得
(建 物)1,000万円 /(現預金)1,000万円 
(圧縮特別勘定)     /(圧縮特別勘定戻入)
700万円        700万円
(圧縮損)  700万円 /(建 物)  700万円
固定資産の取得により圧縮特別勘定を取崩し、戻入(益金)が計上されますが固定資産の取得価額を700万円圧縮記帳します。
(減価償却費)15万円 /(建 物)   15万円

課税の繰り延べとはいえ、700万円を受取事業年度に一度に課税されるより耐用年数の20年間繰り延べされることは納税の資金繰りについては大きなメリットになると思います。
ただし、帳簿価額が取得価額を表さないので会社の純資産価額の判断を誤る可能性があります。是非、メリット、デメリットを踏まえてご検討ください。

記.名古屋業務1課