2022/07/12

中小企業向け賃上げ促進税制の教育訓練費

中小企業向け賃上げ促進税制とは

中小企業向け賃上げ促進税制とは、中小企業者等が、前年度より給与等を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税 (個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。

1.適用期間

・法人    … 2022(令和4)年4月1日から2024(令和6)年3月31日までの間に開始する事業年度
・個人事業主 … 2023(令和5)年と2024(令和6)年の各年

2.適用要件と税額控除率

(1)雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加 → 控除対象雇用者給与等支給増加額の15%
(2)雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加 → (1)に15%上乗せ
(3)教育訓練費の額が前年度と比べて10%以上増加    → (1)に10%上乗せ
これだけ見るとシンプルですが、実際に計算してみると、一定の補助金の交付を受けている場合は給与等支給額を調整したり、給与等支給額や教育訓練費のうち役員や個人事業主とその親族などに係る部分は対象とならないなど、細かい規定があり結構複雑です。

改正前からの主な変更点

1.上乗せ要件がシンプルに

・改正前は、雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加し、かつ、
(1)教育訓練費の額が前年度と比べて10%以上増加
(2)適用年度の終了の日までに経営力向上計画の認定を受け、その成果を証明のどちらかを満たすことで控除率を10%上乗せすることができましたが、改正後は(2)が廃止され、前段のように別個の要件になりました。

2.控除率の引上げ

・改正前 … 最大25%(通常15%+上乗せ10%)
・改正後 … 最大40%(通常15%+上乗せ15%+上乗せ10%)
ただし、適用年度の法人税額又は所得税額の20%が税額控除額の上限となるので、いくら人件費や教育訓練費を増やしても、相当の利益も出さなければ税額控除がフルに受けられず、もったいないことになります。

3.教育訓練費の明細書の「添付義務」が「保存義務」へ変更

改正前は、税務申告の際に教育訓練費の明細書を申告書類に添付する必要がありましたが、改正後は保存で足りることとなりました。
なお、明細書には、各教育訓練につき次の事項を記載・添付する必要があります。
・実施年月 … 「日」の記載は任意。
・実施内容 … テーマや内容、実施期間(○日、○週間、○ヶ月、○年など)
・受講者  … 氏名等。
・支払証明 … 領収書のコピー等を添付。
様式は自由なので、上記の他「支払額」など記載すればより分かりやすくなると思います。

対象となる教育訓練費について

国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用のうち一定のものをいいます。

具体的には、
(1)中小企業者が教育訓練等を自ら行う場合の費用
(2)他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合の費用
(3)他の者が行う教育訓練等に参加させる場合の費用
などをいいます。

(1)中小企業者が教育訓練等を自ら行う場合の費用
例えば、招聘した外部講師への謝金や外部施設の使用料、教育訓練計画の作成委託費などが該当します。

(2)他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合の費用
例えば、個人の外部講師や民間教育会社、公共職業訓練機関、商工会議所などに支払う研修委託費が該当します。

(3)他の者が行う教育訓練等に参加させる場合の費用
例えば、外部の講習会、研修セミナー、技術指導などの授業料や参加費が該当します。国内雇用者がその費用の一部を負担する場合は、その負担された部分は対象になりません。

逆に対象とならない費用には、次のようなものがあります。
・教育訓練に参加する国内雇用者への訓練期間中の給与や報奨金等
・国内雇用者が教育訓練に参加するたの交通費やホテル代、海外留学時の居住費等
・中小企業者が所有する教育訓練施設の使用に要する光熱費、維持管理費等
・教育訓練施設の取得費用、その施設の減価償却費
・教材等の購入・製作に要する費用
・教育訓練の直接費用でない大学等への寄附金、保険料等

いかがでしたでしょうか。
今回の「中小企業向け賃上げ促進税制」は令和4年4月1日以後開始事業年度から適用開始ですので、通常の1年決算法人を前提とすると、1番早くて令和5年3月期決算からの適用ということで結構先の話になりますが、決算のときにバタバタしないように、前もって制度の理解と教育訓練費の明細書を作成しておくのがオススメです。

記.大阪業務2課