2022/07/05

自宅売却時の税金や優遇措置

売却益に対する所得税、住民税

売却の際には譲渡所得(売却益部分)に税率を乗じて所得税、住民税を計算することになります。課税の対象となる譲渡所得は以下の算式で計算します。

譲渡所得=売却金額-(取得費+譲渡費用)

取得費には土地、建物の購入代金の他、仲介手数料や登録免許税など取得にかかった付随費用も含まれます。ただし、建物に関しては購入代金と付随費用の合計額から減価償却費相当額を差し引いた金額が取得費となります。
譲渡経費は売却の際に支払った仲介手数料が該当することとなり、こちらも譲渡所得の金額計算上、売却金額から差し引くことができます。

以上で計算した譲渡所得の金額に税率を乗じて税額を計算します。所有期間に応じて、税率は以下のように異なります。

(1)土地や建物を売却した年の1月1日時点で、その物件の所有期間が5年を超えるもの
所得税 15.315% 住民税 5%

(2)土地や建物を売却した年の1月1日時点で、その物件の所有期間が5年以下のもの
所得税 30.63% 住民税 9%

自宅を売却した場合の特例

上記で税額の計算式を示しましたが、自宅を売却した場合で一定の要件を満たしたときは「居住用財産の特例」を受けることができます。

※居住用財産とは
・居住の用に供している家屋及びその敷地
・居住の用に供していた家屋及びその敷地(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されるもの)

以下が特例の内容となります。

(1)3000万円の特別控除
居住用財産を売却した場合には、譲渡所得の金額から3000万円の特別控除額が控除できます。

(2)軽減税率
所有期間が10年を超える居住用財産を売却した場合は所得税率が10.21%(住民税は4%)となります。ただし、所得の金額が6000万円を超える部分は15.315%(住民税は5%)となります。こちらは(1)の特別控除と併用ができるため、譲渡所得から3000万円を控除した部分に各税率を乗じることになります。

(3)買換えの特例
所有期間が10年を超える居住用財産(本人の居住期間が10年以上)を売却(売却金額1億円超のものを除く。)して、新しく住宅を購入した場合に、その売却金額を購入金額に充てたときはその差額に対して所得税が課税されます。ただし、新しく購入した住宅に関して、令和6年1月1日以後に建築確認を受けるもの(登記簿上の建築日付が令和6年6月30日以前のものを除く。)又は建築確認を受けないもので登記上の建築日付が令和6年7月1日以降のものについては一定の省エネ基準を満たすものである必要があります。こちらは(1)、(2)との併用ができません。

上記(1),(2),(3)は売却益が出た際に適用できる特例ですが、一方で売却損が出た場合も適用できる特例があります。自宅の所有期間が5年超であるなど要件がありますが、売却損を他の所得と損益通算することができます。例えば、他に事業所得を有している場合には、その事業所得から自宅の売却損を差し引くことができるのです。また、他の所得から売却損が引き切れなかった場合には、その引き切れなかった金額を翌年以降に繰越すこともできます。

居住用財産の特例の適用を受ける場合は、それぞれ細かく要件が定められており、必要な資料は各特例により異なるため注意が必要です。そして、税額が発生する場合や上記の特例を適用する場合には、確定申告が必要となります。

確定申告に必要な資料は?

では、確定申告をするためにはどういった資料が必要なのでしょうか。まず、譲渡所得に対する税額を計算するため以下の資料を用意する必要があります。

・自宅売却時の売買契約書
・自宅購入時の売買契約書
・購入時の付随費用(仲介手数料や登録免許税等)の領収書等
・譲渡費用(売却時の仲介手数料等)の領収書等

この時に購入時の売買契約書など資料が見当たらず、いくらで購入したかが不明な場合があります。そのときは売却金額から差し引く取得費が売却金額の5%の金額で計算され、残りの95%部分が課税の対象となってしまうので注意が必要です。

国税庁のホームページより、譲渡所得の申告の際の確認事項と提出書類をまとめたものが「譲渡所得申告のチェックシート」としてダウンロードできます。他にも、特例の適用要件をフローチャート形式でまとめたチェックシートも入手できますので詳細はそちらからご確認ください。

資料によっては、すぐには入手できないものもあります。もし自宅を売却された場合は、余裕をもって資料収集をするようにしてください。

記.大阪業務2課