2022/06/22

インボイス制度についてPart3

インボイス発行事業者になるかどうかの判断は?

インボイス登録申請をしてインボイス発行事業者になるべきかどうかの判断を販売先の区分からタイプ別にみていきましょう。

現在、消費税の申告納税をしている課税事業者の判断

〇販売先が一般消費者のみである場合
インボイス発行事業者にならなくても影響はないと考えられます。ただし、現状は事業者への販売がなくても将来的に発生する場合や一般消費者と判断しづらい場合(飲食の接待利用客、タクシーの乗客等)はインボイス発行事業者になることを検討する必要があります。

〇販売先が事業者のみである場合、及び事業者と一般消費者とが混在する場合
インボイス登発行事業者になったほうがいいでしょう。これまでと同様の取引関係が継続すると思われます。一方、インボイス発行事業者にならない選択もありますが、その場合、登録申請や請求書の様式変更などの手間は省けますが、取引関係を見直される可能性があります。

現在、消費税の申告納税をしていない免税事業者の判断

〇販売先が一般消費者のみである場合
診療所、学習塾など販売先に事業者がいない限り、インボイス発行事業者になる必要はないと思われます。

〇販売先が事業者のみである場合
インボイス発行事業者になるほうが無難でしょう。これまでと同様の取引関係が継続すると思われますが、消費税の課税事業者となり、消費税の申告納税義務が生じます。一方、インボイス発行事業者にならない場合には、これまで通り消費税の申告納税義務はありませんが、取引停止、値引き要請など税負担以上の不利益を受ける可能性もありますので、取引先との協議のうえ判断する必要があります。

〇販売先が事業者と一般消費者が混在する場合
インボイス発行事業者になるかどうかは、事業者と一般消費者に対する販売の割合に応じて総合的に判断する必要があります

インボイスを発行できない事業者への対応は?

インボイス制度への対応を進める中で、免税事業者との取引が多い課税事業者(簡易課税を選択している事業者を除く)は、これからの取引の方針を検討する必要があります。免税事業者からの仕入れは税額控除ができず、以前と同じ条件の取引では納税額が増えることになります。
これを回避するために次のような対応が考えられます。

〇仕入れ先にインボイス発行事業者になることを提案する。
インボイス発行事業者になるかどうかは事業者が判断する事であり、強制はできませんが、提案することは可能です。

〇取引価格の減額を求める
仕入税額控除ができない事を理由に立場の強い事業者が下請けなど立場の弱い事業者に値下げを強要することなどは独占禁止法等により問題になります。制度改正によりどれだけ影響があるかを検討したうえで適正価格で取引が実施できるように双方が納得できる交渉が必要となります。

一般消費者からの仕入れ税額控除は可能か?

インボイス制度の下では免税事業者や一般消費者など、適格請求書発行事業者以外の者からの仕入れは、原則として仕入税額控除の適用を受けることができませんが、一般消費者からの仕入れが多い事業者には例外措置があります。
例えば、個人からマイホームやマイカーを買い取ることが多い不動産業者や中古車販売業者などは、請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるとする措置が講じられています。

(1) 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送

(2) 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引((1)に該当するものを除きます)

(3) 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります)の購入

(4) 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります)の取得

(5) 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります)の購入

(6) 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限ります)の購入

(7) 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等

(8) 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります)

(9) 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

記.大阪業務1課