2022/05/24

不動産の相続登記

不動産の相続登記が義務化されます

不動産の登記は、あくまで権利を主張するためのものであるため所有権の変更は任意の事項でした。
ところが2017年の国土交通省の調査では、不動産登記簿から所有者の所在がわからない土地が日本全国の約22%もあったそうです。経済活動の問題点になるであろうという考えから、所有者不明の不動産の対策として所有権移転の相続登記が義務化されました。
この規定の施行日は2024年4月1日です。

2024年4月1日以降に発生した相続については、相続人が相続する財産に、土地や建物があると知ったときから3年以内に相続登記が必要となります。
また、2024年4月1日以降に発生した相続により取得した不動産だけでなく、施行日より前の相続により取得した不動産についても所有権の移転を行っていないものについては施行日から3年以内の登記が義務となりました。今まで登記を行っていなかった物件については2027年3月31日までに登記が必要となります。
遺産分割協議がまとまらずに3年以内に登記ができないときは、相続人申告登記の申し出を一旦法務局に行い、遺産分割が成立した日から3年以内の登記が義務となるようです。
罰則も明記され、正当な理由がなく登記を怠ったときは10万円以下の過料対象です。

通常の法律ですと、法律の施行日後が対象となりますが、今回は過去の相続による不動産の取得ついても遡って登記を義務化させ、所有者不明の不動産をできるだけなくす方向で進むようです。
今後についても、登記所が住民基本台帳ネットワークシステムを利用するようになる様子で、登記名義人の死亡情報も登記官が定期的にチェックができるようになるそうです。

住所変更も義務化です

所有者不明の状態をなくすため、所有者が住所・氏名変更をした場合にも、住所・氏名の変更登記が義務化されました。
こちらの施行日は2022年5月時点では法案が確定されていないようですが、2026年4月に施行が予定されています。
住所・氏名の変更については、変更から2年以内に登記が必要になります。正当な理由がなく2年以内に変更登記をしなければ5万円以下の過料対象です。
 
また、住基ネット(個人の住所・氏名情報)や商業登記(法人の本店所在地・名称情報)に基づき、登記官が職権的に住所・氏名(法人の場合は名称)の変更登記をする方策が併せて導入されたようです。登記官からの確認に所有者が了解すれば、登記申請をしなくても登記が完了する方法です。
こちらが浸透すれば、住所・氏名の変更登記は登記官が職権により変更してくれることになりますが、2022年5月時点では、どういう時に職権が使われるか、わからないところになります。 

相続人が被相続人の名義になっていた不動産の一覧の証明書を取得できる所有不動産記録証明制度も併せてできましたので、所有者情報が整備されれば、相続時の手続きには利便性が上がると思われます。

登録免許税の免税措置について

相続登記を申請すると登録免許税がかかります。
登記の義務化が施行されることもあり、下記の2点については、登録免許税が免除される措置がとられています。

①相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置 
個人が相続(相続人に対する遺贈も含みます。)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、2025年(令和7年)3月31日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない。(租税特別措置法第84条の2の3第1項)
被相続人及び相続人とも死亡されている所有権移転については登録免許税を課税しないということになります。現在の所有者に変更する相続登記は固定資産課税台帳に登録されたか価格×0.4%の登録免許税が課税されます。

②不動産の価額が100万円以下の土地に係る登録免許税の免税措置
個人が、2025年(令和7年)3月31日までに、土地について所有権の保存登記又は相続による所有権の移転登記を受ける場合において、これらの登記に係る登録免許税の課税標準となる不動産の価額が100万円以下であるときは、当該土地の所有権の保存登記又はその土地の相続による所有権の移転登記については、登録免許税を課さないこととされています。(租税特別措置法第84条の2の3第2項)

2025年3月31日の期間が延長されるかは不透明ですので、この時期に滞らせていた相続の登記を行ってみてはいかがでしょうか。

記.東京業務2課