2022/05/16

証拠書類のない簿外経費の必要経費不算入・損金不算入措置

証拠書類のない簿外経費

令和4年の税制改正により追加された『証拠書類のない簿外経費の必要経費不算入・損金不算入措置』における『証拠書類のない簿外経費』とは、領収書など金額や取引内容、日付が記載された資料が無く帳簿上でも計上されていない経費のことを指します。
※必要経費不算入は所得税法上の用語で損金不算入は法人税法の用語となりますが、いずれも税金の計算上経費計上出来ないという意味です。

通常の取引では領収書など一定の証拠書類に基づき帳簿を作成しますが、たとえば税務調査で売上計上漏れを指摘された場合にその計上漏れ分の現金の使い道を確認したところ、取引先への出張交通費として交通系ICカードにチャージして使用していたが領収書を発行しなかったためにそのままとなってしまっているケースなどが今回の『証拠書類のない簿外経費』に該当します。

ただ、上記の場合ですと交通系ICカードのチャージ、使用履歴、得意先との打合せ実態を確認し、経費計上が漏れてしまっていることを主張すれば税務署の反面調査等により経費を認められるケース(認容)がありました。

上記例題ですと下記②の要件を比較的容易に満たせることから改正後も引き続き認容されると思われますが、『得意先にお土産を持参したが領収書が見当たらない』など、具体的な金額や相手先の把握が難しい簿外経費
を主張された場合も、その主張が正しいかを反面調査等で確認しなければならず、税務署側での時間的、金銭的コストが多く発生していました。

証拠書類のない簿外経費の必要経費不算入・損金不算入措置

上記の事情を踏まえて今回の改正により税務調査における悪質な納税者に対応するための措置として、帳簿保存等のない間接経費は必要経費又は損金への算入が認められなくなりました。

具体的には事実の仮装・隠蔽がある又は無申告の年分(事業年度)において、確定申告における所得金額の計算の基礎とされなかった間接経費の額(原価の額(資産の販売・譲渡に直接要するものを除く。)、費用の額及び損失の額)は、次の場合を除き、必要経費(損金の額)に算入しないこととなりました。

①間接経費の額が生じたことを明らかにする帳簿書類等を保存する場合
(災害等により保存することができなかったことを納税者が証明した場合を含む。)
②帳簿書類等により取引の相手先が明らかである・取引が行われたことが推測される場合であって、反面調査等により税務署長がその取引が行われたと認める場合

今回の改正は所得税については令和5年分以降、法人税については令和5年1月1日以後に開始する事業年度の所得について適用されます。

資産の販売・譲渡に直接要するもの等については今回の改正の対象外

今回の改正により必要経費又は損金不算入措置の対象となる間接経費の額とは、資産の販売・譲渡に直接要するものを除いた原価の額、費用の額及び損失の額とされています。
 
資産の販売・譲渡に直接要するものとは、例えば物品販売業における販売商品の仕入金額等です。
また、間接経費を証明する上記①の帳簿書類等については、青色申告者の場合法令上保存義務が規定されている仕訳帳や総勘定元帳、領収書等の帳簿書類等、青色申告者以外の場合はその取引等の事実を記録した帳簿書類等となります。

ふとしたことから領収書を紛失してしまったり相手先から入手することを忘れてしまうことはありえますので、その場合もなるべく相手先の氏名、日付、金額、取引内容を記載した書類を保存しておくなど、『証拠書類のない簿外経費』に該当しないようにしておきたいところです。 

記.東京業務1課