2022/05/09

配当金の源泉徴収義務について

完全子法人株式等と関連法人株式等とは

既存の規定では法人税法の受取配当金の益金不算入の規定で完全子法人等と関連法人株式等の定義が定められています。

完全子法人株式等とは、配当等の額の計算期間の初日から末日まで継続して、配当等の支払いを受ける法人と支払う法人との間に完全支配関係がある場合におけるその株式等のことを指します。
完全支配関係とは、発行済株式等の100%を直接又は間接に保有する関係をいいます。そのため、期の途中で子会社株式の全株取得を行った場合には、配当計算期間すべての期間継続して完全支配関係にはないため、完全子法人株式等には該当しないこととなります。

関連法人株式等とは、発行済株式等の総数の3分の1超の株式等を配当等の計算期間の初日から末日まで引き続き保有している場合におけるその株式等をいいます。完全子法人株式等からの配当等については100%益金不算入となります。

関連法人株式等からの配当等についても負債利子控除があるものの100%益金不算入となります。

従来の取り扱いについて

完全子法人等からの配当金(適格現物分配を除く)に関しても、源泉徴収義務がありました。それでは、なぜ今回の改正により完全子法人株式等の配当に係る源泉徴収制度の見直しを行うこととなったのかをご紹介していきます。これまでは完全子法人(内国法人同士のものに限る)からの配当金を金銭ではなくモノで受け取る適格現物分配の場合のみ源泉徴収不要でした。
これは配当所得の規定の中に「法人税法第二条第十二号の十五に規定する適格現物分配に係るものを除く」と定められているためです。適格現物分配はそもそも配当所得ではないこととなり、配当所得ではないため源泉徴収義務はないと考えられるためです。金銭で受け取る場合は源泉徴収が必要でした。法人が配当金を支払う場合、その配当金からあらかじめ決められた税率により所得税等を源泉徴収する必要があります。
源泉徴収税率は上場株式の配当金の場合15.315%です。
非上場株式の配当金の場合20.42%です。
令和5年9月30日までに支払いを受ける配当等までの適用です。

改正後の取り扱いについて

押さえておきたいのは、完全子法人等からの配当金は100%益金不算入となるというところです。それにも関わらず、これらの配当等について源泉徴収を行った場合、納税者は配当等に係る源泉徴収により一時的な資金負担が生じることとなっていました。また、税務署側でも申告による還付金が生じる可能性が高いため会計検査院による制度の見直しが行われました。
令和4年の税制改正大綱によると、一定の内国法人が支払を受ける配当等で次に掲げるものについては、配当等に係る所得税の源泉徴収を行わないこととするとされました。

①完全子法人株式等に該当する株式等に係る配当等
②配当等の支払に係る基準日において、当該内国法人が直接に保有する他の内国法人の株式等(当該内国法人が名義人として保有するものに限る)の発行済株式等の総数等に占める割合が3分の1超である場合における当該他の内国法人の株式等に係る配当等

①については法人税法の受取配当金の益金不算入の規定の完全子法人株式等の規定と同じ取扱いです。
②については法人税法の受取配当金の益金不算入の規定の関連法人株式等と異なり発行済株式等の3分の1超の株式等を配当の支払いに係る基準日において保有していることを要件としており、保有期間の定めがないところもポイントです。
株式等の範囲は単体の保有株式数で判定するのではなく内国法人及びその内国法人との間に完全支配関係がある他の法人を含む株式の保有比率により判定することとなりました。関連法人株式等よりも広くなるため源泉徴収不要となるケースが多くなりそうですね。

受取配当金が全額または一部益金不算入となる内国法人同士での改正なので、社長個人が株主といった場合は完全支配関係にある場合でも源泉徴収はこれまで通り必要です。源泉徴収不要となる対象の配当金にはみなし配当も含まれるようです。
令和5年10月1日以降に支払いを受けるべき配当等からの適用です。

記.東京業務1課