2022/04/12

退職金を受給した方の住民税

退職所得について

退職所得とは、勤務先から受ける退職手当などの所得をいい、社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金なども退職所得とみなされます。
退職所得は、原則として他の所得と分離して所得税額を計算しますが、退職所得控除を設けている等、税負担が軽くなるような計算方法となっています。
退職所得の金額は、原則として、次のように計算します。

(収入金額-退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額
※勤続年数が5年以下の場合、計算方法が変わることがあります。
 
[補足:退職所得控除額]
勤続年数20年以下:40万円×勤続年数
勤続年数20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

退職所得は、退職金の支払いを受けるときまでに「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出することで、原則として確定申告をする必要はありません。「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない方は、支払金額の約20%が源泉徴収される為、確定申告で精算することになります。

合計所得金額と所得控除

所得税と住民税は、基本的に同じ計算方法の為、年末調整や確定申告をすることで両方の申告が完了する仕組みになっています。しかし、分離課税の退職所得については「合計所得金額」に含まれるか含まれないかの違いがあります。所得税では含まれる、住民税では含まれない、となっています。その為、(1)の計算で退職所得金額が出る場合は、所得税以外に住民税も注意が必要です。
実際に注意が必要なのは、ひとり親控除、配偶者控除、扶養控除、基礎控除等の人的控除がある方、住宅ローン控除がある方です。
「合計所得金額」は上記各種控除の本人や配偶者等の所得要件の判定に用いられます。「合計所得金額」により、以下の控除が適用出来なくなってしまいます。
 
ひとり親控除:500万円超
配偶者(特別)控除:本人→1,000万円超、
配偶者→48万円超もしくは133万円超
扶養控除:本人→制限なし
扶養親族→48万円超
基礎控除:2,500万円超
住宅ローン控除:2,000万円超もしくは3,000万円超

例えば、1年間の給与所得が800万円、退職所得が300万円の方の場合を考えてみましょう。(他の所得はなしとして)

所得税では、800万円+300万円で、合計所得金額が1,100万円になり、配偶者の所得が0円であっても配偶者控除を適用することは出来ません。ですが、住民税では、退職所得は含まれない為、合計所得金額は800万円になり、配偶者控除を適用することが出来ます。
このように差異が生じていますが、確定申告や年末調整した場合は住民税での控除が適用されていない状況になってしまうので、該当する場合は注意が必要です。

住民税の申告について

まず、ご自身の所得控除の内容や、合計所得金額をご確認ください。その上で、前項に記載した状況の場合は、住民税の申告を別途行う必要があります。申告書の記載方法や必要書類については、お住まいの市区町村によって取扱いが違う場合がありますので、申告の際には各自治体にご確認ください。

住民税の申告期限は、毎年3月15日となっているため、2022年中に退職金を受給した場合は2023年の3月15日までに申告を行いましょう。もし、2021年に退職金を受給して、申告すべきだった方は、お早めにお住まいの市区町村に相談してみてはいかがでしょうか。

記.東京業務2課