2022/03/22

青色申告の特典

青色申告の概要

青色申告により確定申告書を提出する方は一定水準の記帳をし、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられます。青色申告をすることができる人は、不動産所得、事業所得、山林所得のある人です。
青色申告者は、帳簿書類を備え付けて、取引を記録し、その帳簿書類を保存しなくてはいけません。現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよいことになっています。令和3年分の申告書からはどのような記帳等を行っているか区分する欄も増えていましたね。

青色申告により申告する場合、様々なメリットがあるので今まで青色申告ではない申告書を提出されていた場合は青色申告に切り替えることをお勧めします。令和4年分の提出期限は過ぎてしまいましたが。参考までに、1月16日以後、新たに事業を開始したり不動産の貸付けをした場合には、その事業開始等の日(非居住者の場合には事業を国内において開始した日)から2月以内に提出すればまだ間に合います。

青色申告の特典

国税庁HPでは主に下記4項目が掲載されています。
1. 青色申告特別控除
2. 青色事業専従者給与
3. 貸倒引当金
4. 純損失の繰越しと繰戻し

実際はこれだけではなく他にもあります。

5. 家事関連費の必要経費算入(所令96二)
青色申告者に係る家事関連費のうち、業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分の金額を指します。例えば携帯電話の料金であれば、業務に必要であった部分については必要経費に算入でき、年間100,000円だったとして仕事用のみの携帯なら100,000円全額が、半分であれば50,000円を必要経費とすることができるいうことです。ただし、「必要である部分を明らかに区分することができる場合には」との記載もあるのでエビデンスが必要となるでしょう。

6. 棚卸資産の低価法による評価(所令99①二)
青色申告者は、棚卸資産の評価法で低価法を選択できます。ただ、届出書の提出が必要です。12月末日の時価と取得価額を比較し低い方を用いて棚卸資産の金額を決められます。在庫の値下がり額分だけ損失を計上できるので検討しても良いでしょう。

7. 減価償却費等の特例(措法28の2)
青色申告者が一単位当たりの取得価額につき30万円未満の減価償却資産を取得し、業務の用に供した場合にはその年に取得価額の全額を必要経費とすることができます。ただ、年間の合計額は300万円が限度となっています。適用を受ける場合には決算書に「措法28の2」の記載が必要です。

8. 小規模事業者の現金基準による所得計算(所法67)
申告する年の前々年分の不動産所得と事業所得の金額(専従者給与等を差引く前の金額)の合計額が300万円以下の人は現金主義の方法で総収入金額と必要経費を
計算することができます。こちらも適用しようとする年の3月15日までに届出書の提出が必要です。この届出書にはその年の前年の売掛金、買掛金等の経過勘定を記載する必要があります。

9. 中小企業者が機械等を取得した場合の税額控除等
中小企業者が令和5年3月31日までの期間内に、特定機械装置等を取得し指定事業の用に供した場合で、特別償却の適用を受けないときは、その取得価額(船舶は取得価額の75/100相当額)の100分の7相当額をその供用年の年分の所得税額から控除できます。(措法10の3)この場合にも「中小企業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除に関する明細書」の添付が必要です。

10. 債務処理計画に基づき評価減された減価償却資産等(措法28の2の2)
債務処理計画に基づき債務免除を受けた場合(債務免除益の総収入金額不算入の適用を受ける場合を除く)には、事業用減価償却資産等の評価減されたことによる損失の金額はその損失が発生した年の事業所得の金額(この規定の適用前の金額)を限度として必要経費に算入できます。

11. 個人版事業承継税制の適用
青色申告(正規の簿記の原則によるものに限ります。)に係る事業(不動産貸付事業等を除きます。)を行っていた事業者の後継者として円滑化法の認定を受けた者が、個人の事業用資産を贈与又は相続等により取得した場合に、その特定事業用資産に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもとで、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。

詳しくはこちら
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0021005-083_03.pdf

以上、青色申告の特典について記載しました。きっちり記帳等を行うことで税制面で優遇を受けられる制度です。事業を開始される際にはその他の税務上の注意点も多いのでまずは開始する前に専門家に相談されることをお勧めします。

記.名古屋業務2課