2022/03/04

離婚時の財産分与にかかる税金と節税対策

財産分与に税金はかかるの?

まずは財産分与について簡単に説明させて頂きます。財産分与とは、離婚のときに、夫婦がそれまでにともに築いてきた財産を双方で分けることです。その根拠は民法768条で、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と明記されています。
条文の文言からは、協議離婚の場合にだけ適用されるかのように見えますが調停離婚や裁判離婚など、どんな形式の離婚でも財産分与を請求することが可能です。

また、分与の対象となる夫婦共有の財産とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産をいいます。夫婦ふたりで協力して築いた財産に限られるので、婚姻前からそれぞれが所有していた財産や遺産相続によって得た財産などは、夫婦共有財産に含まれません。

なお、分与の割合は、基本的に二分の一ずつとされています。たとえ妻が専業主婦だった場合でも、夫が働いて財産を貯めることができたのは妻の内助の功のおかげだと考えられるからです。

そのため財産分与は、夫婦それぞれの収入額に関わらず、原則としては半分ずつに分けることになります。ただし、財産形成の貢献度に著しい偏りがある場合は、分割の割合が異なるケースもあるため、注意が必要です。

財産分与とは、本来夫婦の共有財産であったものを離婚のときに分ける手続きです。言い換えれば、もともと自分の財産だったものを本来の名義に変更するだけとも言えます。
したがって、原則として、離婚時の財産分与には税金はかかりません。ただし、例外的に離婚時の財産分与の際に税金がかかるものもあります。

以降、財産を渡す側と受け取る側に分けて、詳しく解説していきます。

財産分与で財産を渡す側が知っておきたい税金

まずは、財産を渡す側の立場から説明致します。財産を渡すときには、譲渡所得税がかかる可能性があります。
譲渡所得の課税対象は、土地や建物などの不動産、株式やゴルフの会員権などに限られます。現金は譲渡所得の対象外です。
譲渡所得を課せられる可能性があるのは、土地や建物など譲渡対象物を分与譲渡したときの価格が、購入した時の価格よりも高い場合、譲渡所得税を課せられます。
譲渡所得には、長期譲渡所得(譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの)と短期譲渡所得(譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のもの)の2種類がございます。

譲渡所得の計算方法について下記サイトをご確認ください。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1440.htm
また所得税のほかに復興特別所得税と住民税が課税されます。

財産分与で財産を受け取る側が知っておきたい税金

財産を受け取る側がかかる税金には、贈与税と不動産取得税の2種類があります。

まずは、贈与税について説明致します。基本的に財産分与を受けても贈与税を支払う必要はありません。財産分与はあくまで夫婦の共有財産の清算で、自分たちの財産を分割するだけだからです。
財産分与は原則として夫婦で財産を折半することを指します。しかし一方が譲り受ける財産が多すぎると、財産分与の範囲を超えた贈与だと判断される可能性があります。また偽装離婚など、財産分与の形をとった贈与は、法的には認められずもらったすべての財産に贈与税が課せられます。
暦年贈与税の計算方法については、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。
不動産取得税についても贈与税と同じく財産を取得したのではなく、自分の財産を分割しただけだあり、新たに財産を取得したわけではないので基本的には、課税されません。
ただし、譲り受ける財産が財産分与の相場からして多すぎる場合には、例外的に不動産取得税がかかる場合があります。
不動産取得税の計算方法は、固定資産台帳に登録されている固定資産税評価額の3%です。なお3%は住宅として利用される土地や建物で、住宅以外の建物の場合は4%となります。
また不動産の登録免許税や不動産を取得した後には毎年固定資産税は発生するため注意が必要です。

考えられる節税対策

では、財産分与に関わる税金を節税するためにはどうしたらよいのでしょうか。
主な方法としては以下の4つが考えられます。

①金銭で財産分与を行う。金銭での財産分与には税金はかかりません。

②離婚後に居住用財産を譲渡する。(租税特別措置法35条)
マイホームを売ったときの特例のサイトをご確認ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
注意としては、上記サイト(6)売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこととありますので離婚後に居住用財産を譲渡する必要があります。
また譲渡所得が3,000万円を超えない限り譲渡所得は、課税されません。ただし申告要件があります。
追加 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm
 

③夫婦間での居住用の不動産を贈与する配偶者控除(贈与税)
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。
居住用不動産が2,110万円以下であれば節税対策として有効です。

原則として離婚時の財産分与には税金がかかりませんが、税金がかかってしまう例外があります。その上、税金は計算方法などが非常に複雑で、専門家の目を通して検討したほうが安全です。

記.名古屋業務2課