2022/03/01

上場株式等に係る配当所得等の申告不要制度

住民税の申告とは

皆さん住民税の申告についてご存じでしょうか。
所得税の確定申告はご自身でされている方も多いかと思いますが、住民税の申告をされている方は少ないのではないでしょうか。
それもそのはずで、多くの方が住民税の申告が必要ではないからだと思われます。

例として
・会社で年末調整をされた方
・公的年金の所得のみで住民税の特別な控除が適用されない方
・所得税の確定申告書を提出した方
は基本的には住民税の申告書を提出する必要がなく、
年末調整や確定申告で計算された所得をもとに住民税の税額を計算されているからです。

しかし所得税と住民税では計算方法・税率・所得控除・税額控除など異なる部分もあり、所得の種類によっては所得税と住民税で違う方法を選択することが可能です。

今回はそのうち上場株式等に係る株式配当金の所得税と住民税の計算方法について取り上げていきたいと思います。

上場株式等に係る配当所得等の所得税・住民税の課税方式

上場株式の配当金などの「配当所得」への所得税・住民税の課税方式は、
①申告不要
②申告分離
③総合課税
の3つの方法があり、どれを選択するかは自由に選ぶことができます。

①申告不要とは、特定口座において入金時に源泉徴収され、所得税15.315%と住民税5%がすでに納税又は還付されており、確定申告では申告を行わない方法です。
②申告分離課税は、上場株式等の配当所得と譲渡損失を損益通算する場合や過去に生じた上場株式等の譲渡損失を繰越控除する際に選択します。税率は①と同様、所得税15.315%・住民税5%となります。
③総合課税は、配当所得について配当控除の適用を受けたい場合に選択することになります。税率は所得税については所得が高くなるほど税率が高くなる超過累進税率(5%~45%)となり、住民税10%となります。

証券会社で「源泉徴収ありの特定口座」を選択されている方が多いでしょう。「源泉徴収ありの特定口座」の方は確定申告前の段階で既に納付又は還付となっているため、①申告不要を選択し確定申告をしなくても問題ありません。しかし、税金対策などによりあえて②申告分離課税や③総合課税を選びたい場合は確定申告をする必要があります。
制度上、所得税の確定申告書を税務署に提出すると、自動的に住民税の申告書を市役所などに提出したものとみなされてしまいます。住民税において②申告分離課税や③総合課税を選択した場合、その所得金額が総所得金額に含まれてしまうため住民税や国民健康保険料等へ影響してしまい、余分に課税されてしまう場合があります。
令和2年分まではそれを避けるため、住民税では①申告不要を選択し、申告書や一定の書類を確定申告とは別に市役所などに提出する必要がありました。
しかし令和3年分の所得税確定申告から市役所等への申告書提出を簡素化するため、住民税の申告不要記入欄が新設され、住民税申告書を別途提出する必要がなくなりました。

所得税確定申告書第2表に住民税の申告不要記載欄が新設

令和3年分の確定申告からは、所得税確定申告書の第2表に以下の欄が新設され、所得税の確定申告書上で、住民税は①申告不要を選択する意思表示ができるようになりました。
確定申告書Aの方は、
確定申告書第2表「○住民税に関する事項」の「特定配当等の全部の申告不要」欄に○を記入し、
確定申告書Bを使う方は、
確定申告書第2表「〇住民税・事業税に関する事項」の「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄に〇を記入します。
こちらに〇をすることにより住民税には①申告不要が適用されることになり、市役所などへの書類提出が不要になりました。

税制改正で所得税と住民税で別々の課税選択が不可能に

住民税申告書の提出がなくなり、簡便化された上場株式等に係る配当所得等の所得税と住民税の課税選択ですが、令和4年度の税制改正により、2024年度分(令和6年度分)以後の住民税(=令和5年分の所得税)からは、所得税と住民税の課税方式を別々の方法で
選ぶことができなくなってしまいました。そのため、おそらくこの住民税に関する記載欄も、2年後にはなくなってしまうと思われます。
以上、所得税の確定申告書に配当所得の住民税申告不要欄が新設されたことについての記載でした。

配当所得等の所得税と住民税の課税方法を別々の方法で申告する場合、所得によっては住民税や国民健康保険料等を多く支払わなければならなくなるため、内容を十分に理解した上で申告を行うことをお勧めします。

記.名古屋業務2課