2022/01/24

短期退職手当について

短期退職手当等とは

「短期退職手当等」とは、短期勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるものであって、特定役員退職手当等に該当しないものをいいます。

この短期勤続年数とは、役員等以外の者として勤務した期間により計算した勤続年数が5年以下であるものをいい、この勤続年数については、役員等として勤務した期間がある場合には、その期間を含めて計算します。なお、年数の計算において1年未満の端数は切り上げて計算します。(以下も同じです。)

併せて「特定役員退職手当等」について説明します。これは一足早く2013年(平成25年)1月1日以降に支払われる退職手当等から適用されています。 

「特定役員退職手当等」とは、役員等としての勤続年数(以下「役員等勤続年数」といいます。)が5年以下である人が、支払を受ける退職手当等のうち、その役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるものをいいます。
なお、「短期退職手当等」及び「特定役員退職手当等」のいずれにも該当しないものを「一般退職手当等」といいます。 

概ねのイメージとして、
短期退職手当等   → 勤続年数5年以下の役員等以外の者の退職手当等 
特定役員退職手当等 → 勤続年数5年以下の役員等の退職手当等
一般退職手当等   → いずれにも該当しない退職手当等
と捉えていただくと分かりやすいでしょう。

増税?減税?

短期退職手当等に該当し、退職所得控除後金額が300万円を超える部分は増税になります。
以下、課税退職所得金額の計算方法を通じて説明していきます。

(1)一般退職手当等の場合の課税退職所得金額
(退職手当等の収入金額-退職所得控除額)× 1/2
[補足:退職所得控除額]
勤続年数20年以下 : 40万円×勤続年数
勤続年数20年超  : 800万円+ 70万円×(勤続年数-20年)
※最低金額は80万円です。
※障害者になったことが直接の原因で退職した場合の退職所得控除額は、上記の方法により計算した額(80万円未満の場合は80万円)に、100万円を加えた金額となります。
収入金額から勤務年数に応じた退職所得控除額が控除され、さらに控除後の金額の2分の1が課税退職所得金額となります。
なお、課税退職所得金額に千円未満の端数があるときは、これを切り捨てます。

(2)短期退職手当等の場合の課税退職所得金額
① 退職手当等の収入金額-退職所得控除額 ≦ 300万円 の場合 
(退職手当等の収入金額-退職所得控除額)× 1/2 
一般退職手当等と同じ計算方法であり、今までと変更ありません。
つまり、控除後金額が300万円までは増税にはなりません。

② 退職手当等の収入金額-退職所得控除額 > 300万円 の場合 
150万円+{退職手当等の収入金額-(300万円+退職所得控除額)}
少し算式の形を変えてみると、
300万円×1/2 + {退職手当等の収入金額-(300万円+退職所得控除額)}
となります。

[例:短期退職手当等の金額が1,000万円、勤続年数が5年の場合]
150万円+{1,000万円-(300万円+200万円)}=650万円
※退職所得控除額:200万円=40万円×5年

控除後金額が300万円までは2分の1が課税退職所得金額ですが、控除後金額が300万円を超えると超えた部分すべてが課税対象となります。
つまり控除後金額が300万円を超える部分は増税になるという結論です。

(3)所得税等の源泉徴収税額は?
退職手当等については所得税等の源泉徴収が必要ですので、ここで説明しておきます。
①「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けている場合
(課税退職所得金額×累進税率-控除額)×102.1% 
[補足:退職所得の受給に関する申告書]
支払者名称等を記載する書面で国税庁HPから取得できます。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_37.htm
当該申告書は税務署へ提出する必要はなく、退職手当等の支払者が保管することになっています。
※税務署長から特に提出を求められた場合は除きます。    

②「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けていない場合
退職手当等の収入金額 × 20.42% 
※所得税等の源泉徴収とは別に住民税の特別徴収も必要となります。
詳細は退職手当等の受給者の納税地の市区町村にご確認下さい。

改正の趣旨は?

退職金は、一時にまとめて相当額が支払われ、長期間にわたる勤務の対価の一括後払いという性格を持っています。
このため、課税にあたっては、累進税率の適用を緩和し、税負担の平準化を図る観点から、退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の2分の1を課税対象とする、いわゆる「2分の1課税」の措置が講じられています。
しかし、この2分の1課税を前提に短期間のみ在職することが当初から予定されている法人役員等が、給与の受取りを繰り延べて高額な退職金を受け取ることにより税負担を回避する事例が指摘されていました。

そこで2013年(平成25年)1月1日以降から特定役員退職手当等の規定を設け、短期に退職する役員については2分の1課税が廃止されて控除後の金額の全額が課税退職所得金額となり、既に増税されています。
[補足:特定役員退職手当等の場合の課税退職所得金額]
退職手当等の収入金額-退職所得控除額

今回の改正の趣旨は、前回の改正の趣旨に沿ったものです。
改正により法人の役員等以外についても勤続年数が5年以下であれば2分の1課税の対象外となりましたが、これは現下の退職給付の実態を見ると、法人の役員等以外についても勤続年数5年以下の短期間で支払われる退職金について、平準化の趣旨にそぐわない、特に高額な支給実態も見られることに基づいています。
なお、近年の経団連による実態調査によると、勤続年数5年のモデル退職金の額は126.7万円(大卒・会社都合)ですので、当該増税の影響のある方は限定的と予測されています。

最後に

短期退職手当等について述べて参りましたが、退職手当等と同時に特定役員退職手当等の両方を受給することも考えられます。
例)2年間を使用人として、2年間を役員としてそれぞれ勤務した場合の退職金
当事例も含めて国税庁が短期退職手当等のQ&Aを公開しておりますので、詳しくはご確認いただければと存じます。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0021009-037_01.pdf

記.大阪事務所4課