2022/01/11

令和4年税制改正の住宅ローン控除

住宅ローン控除が改正される背景

低金利時代が続いている昨今において、現在の住宅ローンの利率は変動利率では1%未満です。
それにより、年末ローン残高の1%を控除するとした住宅ロ-ン控除による税額控除額のほうが、実際に支払っている利息よりも多いといういわゆる「逆ざや」の状況が生じています。
つまり国側としては、住宅取得者の実際の利息負担額よりも、多くの税金を優遇している結果となっています。
そうしたことが、住宅ローンを借りる必要のない人が借りることや、控除期間が終了するまで繰り上げ返済をしないことの動機付けになってしまいます。
また、大企業社員や公務員など収入が安定した立場の人ほど、低い優遇金利を活用しやすく、逆ざやによる恩恵が大きくなります。
こうした問題点を2019年11月に会計検査院(国のお金が正しく使われているかをチェックする国家機関)が指摘していました。
今回の改正案は、その指摘を受けてのものとなっております。

住宅ローン控除の改正案内容

改正案のポイントは次の通りです。

①期限
現 行:原則2021年12月末までの入居
改正案:原則2025年12月末までの入居

②控除期間
現 行:原則10年
改正案:新築は13年(省エネ住宅等以外は2024年以降は10年)中古は10年

③控除率
現 行:ローン残高の1.0%
改正案:ローン残高の0.7%

④所得制限
現 行:合計所得金額3000万円以下
改正案:合計所得金額2000万円以下

⑤ローン残高の上限
現 行:4000万円(長期優良住宅5000万円)
改正案:住宅の性能に応じて2000万円~5000万円
※住宅の省エネ性能に合わせて新たに新築で4段階、中古で2段階に区分され、脱炭素化社会に向けた政府の取り組みが反映された格好となっています。

住宅ローン控除に合わせたその他の改正案

住宅ローン控除の改正に伴い、次の改正もセットで行われる予定です。

①所得税で控除しきれない控除額の住民税からの控除額の上限
現 行:136,500円
改正案:97,500円

②直系尊属からの住宅取得等資金の贈与税の非課税
現 行:省エネ等住宅1,500万円、一般住宅1,000万円
改正案:省エネ等住宅1,000万円、一般住宅  500万円
※期限も2年延長で2023年12月末までとされます。

いずれの改正も令和4年1月1日以後の住宅取得に適用される予定です。

今回の改正案は、以前より細かく設定された住宅の省エネ性能の違いにより減税の恩恵が異なり、政府の提唱する「2050年カーボンニュートラル」
を強く意識した税制になっています。省エネ性能を高くすると、住宅価格は高くなるため、今後の住宅販売事情にも大きな影響を及ぼしそうです。

記.大阪事務所3課