2021/12/28

経営セーフティ共済

経営セーフティ共済とは

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、取引先事業者が倒産した時に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐために、無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れでき、掛金は損金または必要経費に算入できる税制優遇も受けられ、中小企業者や個人事業主(加入には一定の要件がある)に多く活用されている制度です。

経営セーフティ共済のメリット

・取引先の倒産によって受けられる「共済貸付金」共済金の借入れは、無担保・無保証人で受けられ、共済金貸付額の上限は「回収困難となった売掛金債権等の額」か「納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)」の、いずれか少ないほうの金額です。取引先の事業者が倒産し、売掛金などの回収が困難になったときは、その事業者との取引の確認が済み次第、すぐに借り入れることができます。

・取引先の倒産に関係なく受けられる「一時貸付金」一時貸付金の貸付限度額は、まず自社の掛け金総額が800万円に到達していれば限度額は760万円(800万円×95%)で、800万円に満たない場合は掛け金納付月数に応じた解約手当金で算出されます。仮に掛け金を毎月10万円ずつ、25カ月支払っている会社の場合、190万円(10万円×25カ月×80%×95%)が限度額となります。

・解約すれば解約手当金が受け取れる
共済契約を解約された場合は、解約手当金を受け取れます。自己都合の解約であっても、掛金を12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、40か月以上納めていれば、掛金全額が戻ります(12か月未満は掛け捨てとなり、12ヶ月以上49か月未満は掛金納付期間により支給率が異なります)。

・掛け金は全額損金算入で節税になる
掛金月額は5,000円から20万円まで自由に選べ、増額・減額できます。また確定申告の時、掛金を損金(法人の場合)、または必要経費(個人事業主の場合)に算入できるので、節税効果が期待できます。当期が予想以上に黒字となってしまって、何か節税策ないかなとの時に掛金の1年分の前払いで、最大月額20万円×12か月の240万円を当期の経費に計上できます。

経営セーフティ共済の注意点

・共済金貸付は貸付額の10%を失う
共済金貸付は無利子のため一見損がないように思うかもしれませんが、共済金貸付を利用すると10%の掛け金総額を失うことになります。取引先が倒産して資金が必要になると共済金貸付をあてにすることになりますが、もし8,000万円を貸付したと仮定した場合、その10%を失うということは、8,000万円を800万円の利息を払って借りたことと同じになってしまいます。他にあてがない場合以外は貸付金を請求することはしないほうが良いのではないでしょうか。なお、貸付を受けた後で返済を1度も滞納することなく、予定よりも12カ月以上早く完済することができた場合は、早期償還手当の支給対象になり、早期償還手当として、貸付金額の約0.1%から約4%に設定されています。これを考慮して、貸付を受けるかどうかの判断材料にして下さい。

・12カ月未満の解約は解約手当金なし
掛け金の納付月数が12カ月未満で解約した場合、解約手当金は0円になります。これは解約事由が任意解約やみなし解約、機構解約のどれであっても同じ扱いです。掛け金を12カ月以上納めていれば、掛金総額の8割以上が戻り、40カ月以上納めていれば掛金全額が戻ります掛け金の滞納などで中小機構側から解約される場合もあるため、解約手当金で損をしないよう、無理のないように掛け金設定を行うことが大切です。また起業1年目の方には使えません。
加入資格が継続して1年以上事業を行っていることという点です。

・「夜逃げ」は共済金の借入れが受けられない
取引先の倒産とは・法的整理・取引停止処分・私的整理・災害による不渡り・特定非常災害による支払不能といった事態が取引先に生じることをいいます。これらの状態に該当しない、例えば単に連絡がつかない状態や、いわゆる夜逃げの状態では、共済金の貸付は行われません。

・解約手当金は全額益金算入に
経営セーフティ共済の解約手当金は、全額益金に算入されます。掛金の節税効果に目がいき、例えば、掛け金を毎月10万円ずつ5年間支払った場合、トータルで600万円を損金に算入できるのですが、その後、任意解約によって100%の解約手当金600万円を受け取った場合、その600万円は会社の益金となって、受け取った事業年度の課税対象になります。600万円を経費にしたが、600万円の収入で損益のトータルが同額程度になります。つまり、「課税の繰り延べ」(税金の支払いの先延ばし)です。
このことから、節税対策として有効活用するには、益金を受け取るタイミングを考えることが重要になってきます。

・必要書類を提出しないと経費にならない
特に注意していただきたい点は、掛け金は全額損金算入で節税になるが、次の書類を添付しなければ経費にできません。
確定申告時に添付する書類個人事業主の場合
●令和3年分所得税確定申告書から、
「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」の提出令和2年分所得税確定申告書以前は、法人税と異なり、書式がなかったため、独立行政法人中小企業基盤整備機構が公表している「中小企業倒産防止共済掛金の必要経費算入に関する明細書」を所得税確定申告書へ添付提出していました。
法人の場合
●「別表10(7)社社会保険診療報酬に係る損金算入、農地所有適格法人の肉用牛の売却に係る所得又は連結所得の特別控除及び特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書」の提出
●「適用額明細書」の提出

経営セーフティ共済の掛金を経費に計上していたにも関わらず、上記の書類を提出していなかったことから、税務調査で掛金の損金算入を否認されたケースがあります。
今回周知が徹底されたことから、書類の不備は見逃さないでしょう。
絶対忘れないよう注意して下さい。

記.大阪事務所3課