2021/11/22

変わりゆく税務調査

いままでの税務調査

【1】税務調査とは
納税者が申告納税制度(注1)により毎年行われる確定申告に対して、申告内容が正しいかどうかを税務署が確認することです。申告納税制度に従って、納税者自ら税金を計算して納税する為、計算ミスや申告漏れ等の把握の為、またあってはいけない事ですが、意図的な改ざんや虚偽の申告を発見する為、税務調査が必要となります。

【2】税務調査の種類
税務調査と言っても実は種類があり、大きく分けて任意調査と強制調査があります。
(1)任意調査
税務署や国税局の調査部、資料調査課が通常行う調査です。
(2)強制調査
多額かつ悪質な不正、また脱税行為が有り、納税者に対して、捜査令状をもって強制的に行われる調査です。起訴をする事を前提に行われます。

【3】税務調査の流れ
(1)税務署から事前通知
原則として、納税者に調査の連絡が有ります。
 顧問税理士がいる場合は、税理士に連絡があります。
(2)日程調整
合理的な理由がある場合、税務調査の日程の変更を求めることができます。
(3)調査当日
①身分証明の提示
調査担当者は身分証明書と質問検査章を提示します。
②帳簿書類の提示と質問事項への回答
調査担当者の求めに応じ帳簿書類の提示又は提出、質問事項に対する回答を行います。
③調査結果の説明
調査担当者は調査結果の内容を説明し、必要な場合は修正申告や期限後申告を勧奨します。
⑤更正又は決定
修正申告等の勧奨に応じない場合、税務署長が更正又は決定の処分を行います。

(注1)納税者の一人一人が、税務署へ所得等の申告を行うことにより税額が確定し、この確定した税額を自ら納付すること

変わりつつある税務調査

大企業の実地調査はリモートツールを活用(臨場型)

国税庁は、コロナ禍で延期されていた新規の税務調査を、2020年10月以降から徐々に実施する方向に舵を切っており、法人のインターネット回線を利用しWEB会議システムを活用するなどして、できる限り非接触での税務調査を行っている様です。
資本金1億円以上の大法人への税務調査は、かなりの期間と調査官の人数が必要となることが非常に多く、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、調査を受ける大法人からできる限り、“調査官の人数を減らしてほしい”など、対面・接触を減らすことを要望されることがある様です。通常の勤務についても、リモートで行われている事を考えると要望は当然と考える所ですが、国税庁も,納税者の要望に即した対応をとる考えから、法人からWEB会議システムによる税務調査の要望が調査官にあれば、その法人が通常業務で利用しているセキュリティ保全がされた法人のインターネット回線で、WEB会議システムを利用した税務調査の対応をしているようです。利用するWEB会議システムは、その法人が独自に作成したようなものでなくとも、一般に利用されているネットワーク環境のものでも問題ないようです。
このような調査対応の場合でも、税務調査で確認する法人の資料の提供等は、紙ベースでコピー又はUSBメモリ等の媒体に電子データのコピーをとる等の方法が行われ、資料のやりとりをメール等で行うことはないようです。
調査官は法人に臨場し、資料の提供等を受け、その内容等の確認で法人担当者と質疑等のやりとりをする際は、別々の部屋から、WEB会議システムを利用するといった方法を取っているようです。

リモート調査の活用

中小法人も臨場型リモート調査を実施

新型コロナウイルス感染症の拡大防止などの観点から、大法人に対する税務調査では、調査官が法人に臨場したうえで法人のWEB会議システムを用いる“臨場型”のリモート調査が行われることを伝えましたが、国税庁は2021年7月から、中小規模の法人に対しても臨場型リモート調査を行っているようです。
これまでは,一定のネットワーク環境が整備されている大法人を対象に、臨場型リモート調査が行われてきたが、大法人よりも規模が小さい資本金1億円未満の中小規模の法人でも、ネットワーク環境が整えられていることも考えられる為,、セキュリティ保全がされたWEB会議システムであることなどを前提に、大法人と同様に中小規模の法人でも臨場型リモート調査の対応がとられる様になりました。一方、調査で必要な資料などを現場で直接確認する必要があるなどと判断された場合などは、法人が要望した場合であっても、臨場型リモート調査ではなく、通常の対面による調査手法がとられることがあるそうです。
しかしなかなか中小規模の法人全てが、ネットワーク環境が整えられている訳でもなく、リモート調査を行う事は難しいと思います。
それらを踏まえ税務調査を効率的に進めるため、予算の都合がつけば最短で2022年10月より、基本的に調査官が法人に臨場せず、国税局のネットワーク環境によるWEB会議システムを使った「リモート調査」が行われる方向であることが分かりました。

ここまで新しい税務調査について書きましたが、コロナの完全収束はなかなか難しそうなので、今後このような調査方法がますます増加するのではないかと思います。

記.大阪事務所2課