2021/11/16

マイニング取得した暗号資産の税金について

マイニングと取得した暗号資産の会計処理

暗号資産業界におけるマイニング(採掘)とは、ブロックチェーンに新たな取引記録を追加する際に、コンピューターを使ってその内容に不正や改ざんがないか検証・承認することで、その報酬として新たに発行される暗号資産を獲得する行為のことです。
簡単に言うと、手数料を暗号資産(仮想通貨)で受け取るということになります。

そのマイニングにより暗号資産を取得した場合の会計処理ですが、取得した時点の時価で取得日に資産計上することになります。それと同時に、同じ金額で収益計上します。また、取得に要した費用については費用発生時に費用計上します。

【1】マイニングに成功し1ビットコイン(BTC)(1BTC=100万円)取得した場合。
(借) 暗号資産 100万円 (貸)マイニング収益 100万円

【2】マイニングにかかる費用を現金で支払った場合
(借) 経費    50万円 (貸)現金       50万円

※マイニングにかかる経費には、人件費、地代家賃、機材に係る減価償却費などが挙げられるでしょう。

一般的な暗号資産の購入とは違い、マイニングで取得する暗号資産には、取得の際に支払う現金などの直接的な対価がないという点もマイニングの特徴と言えるでしょう。

マイニング取得時の所得税と法人税

暗号資産をマイニングにより取得した場合、その所得は所得税又は法人税の課税対象となります。

所得税については、マイニングにより暗号資産を取得した場合、その所得は原則として雑所得として課税対象となります。その取得した暗号資産の取得時点の価額(時価)については、所得の金額の計算上、総収入金額に算入され、マイニングに要した費用については、所得の金額の計算上、必要経費に算入されることになります。所得税の場合、マイニングで損失が出たとしても雑所得は他所得との損益通算ができません。その損失を翌年以降に繰り越すこともできないので、この点には注意が必要となります。

法人税については、マイニングにより暗号資産を取得した場合、その取得した暗号資産の取得時点の価格(時価)については、所得の金額の計算上、益金の額に算入(他の収入と合算)され、マイニングに要した費用については、所得の金額の計算上、損金の額に算入(他の経費と合算)されることになります。法人税の場合はマイニングで損失が出た場合でもその損失を翌期以降に繰り越すことができます。

その他に所得税と法人税の違いとして、期末時点で保有している暗号資産に対し、所得税では期末評価が不要、法人税では期末評価が必要ということになっています。このようにマイニングを行う場合には、それぞれの課税方法からメリット、デメリットを考える必要がありそうです。

なお、マイニングにより取得した暗号資産は、時価で計上することになっていますが、現在マイニングは非常に速い速度で行われ、数十分~数時間に一度の間隔で暗号資産の獲得ができるようです。そのため注意点として、暗号資産の獲得を正確に会計処理、税務処理するためにどの時点でマイニングによる暗号資産の獲得ができたのか、獲得時間を確認できるログ等、客観的資料を備えておくことが必要になってきます。

マイニングの消費税の取り扱い

マイニングによる暗号資産の獲得については、消費税の取り扱いとしては「対象外」となります。

暗号資産のマイニングの報酬に関しては、その行為がネットワークの維持・管理を目的として機械の計算能力を提供するものであることから、役務の提供ととらえることができます。この点については消費税の課税要件である「資産の譲渡等」を満たします。
しかし、別の課税要件である「対価を得て行う取引」を満たしていないと考えられます。マイニングの報酬が役務の提供による反対給付として対価性を有するかどうかについては、役務の提供を受ける者、反対給付をする者の個別・具体的な存在が特定されない(獲得者が不特定である)ことからすれば、対価性を認識することは困難であると言えます。よって、消費税の対象とならないと考えられるのです。

最後に、マイニングに要したコンピューターなどの設備や光熱費等の費用についてですが、これらは個別対応方式による仕入税額控除の計算を行う場合、対象外の取引に要するものとして共通対応課税仕入に区分するのではなく、非課税売上対応課税仕入に区分することとされていますので注意が必要です。

記.大阪事務所2課