2021/10/26

令和3年度の年末調整改正のポイント

押印の不要化

令和3年度税制改正に伴い、今年の年末調整より従業員の方から提出を受ける
下記の書類につき、押印が不要となります。

1.給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
2.給与所得者の保険料控除申告書
3.給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
4. 住宅借入金等特別控除証明書

この改正は、令和3年4月1日以後に提出する申告書について適用されます。

改正:基礎控除額の引き上げ

基礎控除額はこれまで収入・所得金額に関係なく一律38万円でしたが、令和2年度からは一律48万円に引き上げられました。

但し、合計所得金額が2,400万円超~2,500万円の場合は控除額が逓減し、2,500万円超の場合は控除額がゼロとなります。

改正:給与所得控除額の見直し

基礎控除額の引き上げに対応する形で、令和2年度より給与所得控除額が一律10万円引下げられる事になりました。

また、給与所得控除額は「高額給与所得者に対する控除額が過大である」という見解を受けて、令和元年では給与年収1,000万円が上限となっていましたが、令和2年度より上限が850万円に引き下げられています。
このため、給与年収が850万円超の方は下記の「所得金額調整控除」の適用を受ける方を除いて、実質的に増税となります。

(改正前)給与収入1,000万円(控除上限額=220万円)<平成29年度~>
(改正後)給与収入 850万円(控除上限額=195万円)<令和2年度~>

改正:所得金額調整控除

給与所得控除額の見直しに伴い、給与年収850万円超の場合は税負担が増加しますが、この年収帯の多くが子育て・介護世帯と見られる事に配慮し、一定の要件に該当する場合には給与所得控除額の増額調整が行われます。この場合には改正に伴う税額は改正前と同額になります。

1.要件
給与収入が850万円を超える居住者で下記のいずれかに該当する者
①自身が特別障害者
②年齢23歳未満の扶養親族を有する者
③特別障害者である同一生計配偶者若しくは扶養親族を有する者

2.所得金額調整控除額
下記の算式により計算した金額を給与所得の金額から控除する。
(給与収入(1,000万円上限)-850万円)×10%=所得金額調整控除額

改正:ひとり親控除

いわゆる「ひとり親」に対する税制上の措置として寡婦(寡夫)控除がありますが、最近は「未婚のひとり親」も増加している事に対応し、「ひとり親控除」が創設されました。
従前の寡婦(寡夫)控除は、死別、離婚、生死不明の状態が要件となっており、未婚の場合は適用対象外となっていた事から、全てのひとり親家庭に対して公平な税制を実現する観点から、ひとり親控除が設けられました。

1.対象者
現に婚姻をしていない者又は配偶者の生死の明らかでない者で、下記の要件に該当する者

①総所得金額等の合計額が48万円以下の同一生計の子を有すること
②本人の合計所得金額が500万円以下であること
③住民票に事実婚である旨の記載がされた者がいないこと

2.控除額
ひとり親控除の対象者・・・35万円控除

また、「ひとり親控除」の創設に伴い、寡婦(寡夫)控除については下記のとおり見直しが行われました。

①寡夫控除は廃止する(「ひとり親控除」に吸収)
②寡婦控除については、「ひとり親控除」の適用要件に該当せず、かつ下記の要件を満たす女性に対して適用する
(イ)夫と死別、離婚、夫が生死不明の状態であること(離婚の場合は、扶養親族を有すること)
(ロ)本人の合計所得金額が500万円以下であること
(ハ)住民票に事実婚である旨の記載がされた者がいないこと

寡婦控除額・・・27万円控除

記.大阪事務所1課